パソナが淡路島に新拠点 坂茂氏設計の巨大木質空間で「未病」に向き合う長期滞在施設が開業
人材サービス大手パソナグループが、兵庫県・淡路島に新たな長期滞在型施設を開業しました。
建築を手がけたのは、世界的建築家として知られる坂茂(ばん・しげる)氏。海辺に広がる大規模な木質空間と、医療・ウェルネス機能を併せ持つ複合施設として注目を集めています。
この施設は、病院に行くほどではないけれど「なんとなく体調がすぐれない」「疲れが取れにくい」といった、いわゆる「未病」状態の改善を目指すことを大きな目的としています。
滞在者は、海辺の穏やかな環境のなかで、食事・運動・睡眠といった生活習慣を見直しながら、心と体のバランスを整えていきます。
海と木に抱かれる「巨大木質空間」 ― 坂茂氏による新たなランドマーク
今回の施設でまず目を引くのが、世界的建築家・坂茂氏が設計した海辺の巨大木質空間です。
淡路島の海岸線に寄り添うように配置された建物は、広い開口部から光と風をたっぷり取り込み、屋内にいながら自然の気配を身近に感じられるつくりになっています。
構造材にはふんだんに木材が使われており、大きな柱や梁、天井面まで、あたたかみのある木質が視界いっぱいに広がります。
無機質なコンクリートや金属とは異なり、木が持つ独特のぬくもりや香りは、人の緊張をほぐし、心を落ち着かせる効果が期待されます。
坂氏はこれまでも、紙管や木材を活用した環境配慮型の建築や、災害時の仮設住宅などで国際的に高く評価されてきました。
今回のプロジェクトでも、環境への負荷を抑えつつ、人が心地よく長く滞在できる空間づくりが意識されています。
海に向かって大きく開かれたテラスやラウンジスペースでは、波の音や潮風を感じながら過ごすことができ、朝夕の光の変化や、季節ごとの景色の移ろいも楽しめます。
「ただ泊まる場所」ではなく、自然と一体になって過ごすための器として設計されていることが、この施設の大きな特徴です。
クリニック併設の「長期滞在型別荘」スタイル
この施設のもうひとつの大きな特徴が、医療機関(クリニック)が併設された長期滞在型別荘というスタイルです。
「旅館でもなく、病院でもない」その中間に位置する、これまでにあまり例のないタイプの滞在拠点といえます。
客室は、別荘のように長期滞在を前提としたつくりになっており、リビングスペースやキッチンを備えたタイプ、ゆったりとしたベッドルームを中心に構成されたタイプなど、さまざまなニーズに合わせた間取りが用意されているとされています。
家族やパートナーとともに宿泊しながら、日常生活に近いスタイルで滞在できる点も魅力です。
併設されているクリニックでは、医師や看護師、専門スタッフによる健康チェックやカウンセリングを受けることができ、体調や生活習慣に関する相談にも対応します。
必要に応じて血液検査や各種測定などを行い、滞在者一人ひとりの状態に合わせたアドバイスやプログラムが提案されます。
これにより、「体調が気になるけれど、いきなり大きな病院にかかるほどではない」「忙しくて検査や相談を先延ばしにしてきた」といった人でも、リラックスした環境で、自分の体とゆっくり向き合う時間を持てるようになっています。
キーワードは「未病」 ― 病気になる前に整える新しい健康観
この施設が掲げる中心的なコンセプトが、「未病」の改善です。
未病とは、はっきりとした病名がつくほどではないものの、どこか体や心の状態がすぐれない、健康と病気のあいだのグラデーションのような状態を指します。
例えば、次のような感覚を持つ方は少なくありません。
- 慢性的な疲労感があり、週末もぐったりしてしまう
- なかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚める
- 肩こりや頭痛、胃腸の不調が続いている
- 検査では「異常なし」と言われるが、明らかに調子が悪いと感じる
こうした状態を放置すると、数年単位でじわじわと悪化し、将来的に生活習慣病やメンタル不調など、本格的な病気につながる可能性も否定できません。
そのため、「病気になる前の段階で、暮らし方や体の使い方を見直す」という考え方が、近年「未病ケア」として広がりつつあります。
パソナの新施設は、この未病に注目し、「予防」と「癒やし」、「学び」と「滞在」を組み合わせた場として設計されています。
ただゆっくり休むだけではなく、自分の生活習慣を振り返り、今後の暮らしに活かせる気づきを持ち帰ることを目指しています。
食事・運動・睡眠を見直すための多彩なプログラム
未病の改善にとって重要な柱となるのが、食事・運動・睡眠の三つです。
この施設では、それぞれの分野において、専門家の知見を取り入れたプログラムやサービスが用意されています。
からだをいたわる「食事」 ― 淡路島の恵みを活かしたメニュー
淡路島は、玉ねぎをはじめとする野菜、海産物、畜産物など、食材に恵まれた土地として知られています。
施設内のダイニングやレストランでは、こうした地元食材を活かしたメニューが提供され、栄養バランスに配慮しつつ、味わいも楽しめるよう工夫されているとされています。
管理栄養士やシェフが連携し、「食べて元気になる」ことを意識した献立づくりを行うことで、過度なガマンや極端な制限ではなく、「心も満足する健康的な食事」を目指します。
希望者には、食事内容や食習慣に関するカウンセリング、食べ方のアドバイスなども行われます。
無理なく続けられる「運動」 ― 一人ひとりに合った体の動かし方
運動の分野では、年齢や体力、体調に合わせたプログラムが展開されます。
ジムエリアやスタジオのほか、海辺の遊歩道や庭園スペースを活かし、ウォーキングや軽いランニング、ストレッチ、ヨガなど、さまざまな運動を取り入れることが想定されています。
専門のトレーナーやインストラクターが、姿勢や歩き方、筋力のバランスなどをチェックし、負担をかけすぎない運動方法を提案します。
「激しいトレーニングで鍛える」というよりも、「日常生活の中で無理なく続けられる体の動かし方」を身につけることが重視されます。
眠りを整える「睡眠」 ― 環境と習慣の両面からアプローチ
現代人に多い悩みのひとつが、睡眠の質の低下です。
夜遅くまでの仕事やスマートフォンの使用、ストレスなどが影響し、「時間は寝ているはずなのに疲れが取れない」という声もよく聞かれます。
施設では、客室環境にも配慮がなされ、照明や寝具、防音性などを整えることで、ぐっすりと眠りやすい空間づくりが行われています。
また、就寝前の過ごし方や、起床時間のリズム、カフェインやアルコールとの付き合い方など、生活習慣全体を見直すためのアドバイスも提供されるとされています。
必要に応じて、睡眠に関する専門的なチェックや相談を行うことで、「眠れない原因」を探り、個々に合った改善方法を一緒に考えていくことも、この施設ならではの取り組みです。
淡路島だからこそできる「働き方」と「暮らし方」のリセット
パソナグループは、これまでも淡路島で本社機能の一部移転や、さまざまな観光・文化施設の運営など、地域活性化に取り組んできました。
今回の長期滞在型施設は、そうした活動の中で新たに生まれた、「健康」と「働き方・暮らし方」を結びつける試みといえます。
淡路島は、都市部からアクセスしやすい一方で、海と緑に囲まれた落ち着いた環境が広がるエリアです。
この立地を活かし、リモートワークやワーケーションの拠点として利用することも視野に入れられています。
例えば、
- 仕事の合間に海辺を散歩して気分転換する
- 昼間はオンライン会議に参加し、夕方以降はプログラムで体を動かす
- 週末は家族に合流してもらい、観光も兼ねて過ごす
といった使い方も可能です。
単なるリフレッシュに留まらず、「働きすぎ」や「休み方の下手さ」そのものを見直すきっかけとして、この施設を活用することが期待されています。
パソナが描く「人材」と「健康」のこれから
人材ビジネスを中心に展開してきたパソナグループが、今回このような長期滞在型の未病改善施設をオープンした背景には、「人を支える」という事業の軸が、働く場だけでなく、暮らしや健康の分野にも広がっていることがうかがえます。
働く人を取り巻く環境は、この数年で大きく変化しました。
リモートワークの普及、オンライン化の加速、不安定な社会情勢などが重なり、多くの人が心身のバランスを崩しやすい時代になっているとも言えます。
こうしたなかで、企業に求められているのは、給与やキャリアパスの整備だけでなく、従業員や社会全体の「健康」と「幸せ」をどう支えるかという視点です。
パソナの淡路島での取り組みは、そのひとつの回答として位置づけられるかもしれません。
また、地方創生の観点から見ても、都市部の人々が淡路島に長期滞在し、地元の食や文化に触れながら過ごすことは、地域経済の活性化にもつながります。
建築、医療、観光、ウェルネス、リモートワークといった複数の要素が交わる今回の施設は、これからの「地方と都市の新しい関係」を示すモデルケースとなる可能性もあります。
「なんとなく不調」を抱える人に開かれた、新しい選択肢
病院へ行くほどではないけれど、どこかスッキリしない。
日々の忙しさに追われ、「いつかちゃんと休もう」「そのうち生活を整えよう」と先延ばしにしている。
そんな「グレーゾーンの体調不良」を抱える人は、決して少なくありません。
淡路島に誕生したパソナの長期滞在型施設は、そうした人たちに向けて、
- 海と木に包まれた、心身をゆるめる空間
- クリニックによる専門的な視点からのサポート
- 食事・運動・睡眠を整えるための具体的なヒントと体験
を提供する、新しい選択肢と言えるでしょう。
一度じっくり立ち止まり、自分の体と心の声に耳を澄ませる。
そのための場所が、淡路島の海辺に生まれたことは、「健康」や「働き方」を見つめ直したいと考えている多くの人にとって、大きな意味を持つのかもしれません。



