大東建託が「グループ会社転籍制度」を導入──“キャリア自律”と地域の「住みここち」をつなぐ動きとは
大東建託グループが、全社員約9,000人を対象とした新たな人事制度「グループ会社転籍制度」を導入しました。これは、グループ内の人材を柔軟に行き来できるようにすることで、一人ひとりのキャリア自律を促しつつ、組織の活性化も図る取り組みです。同時期に発表された「住みここちランキング」では、茨城県ひたちなか市が県内上位に入り、甲信越エリアでは長野県原村が首位に返り咲きました。こうした「働き方」と「住みここち」の動きをあわせて見ることで、これからの暮らしと仕事のスタイルが、少し立体的に見えてきます。
大東建託の「グループ会社転籍制度」とは
大東建託は、賃貸住宅の建設・管理や不動産関連事業を全国で展開する大手企業です。そのグループには、建設、管理、仲介、シニア向け住宅、プロパティマネジメントなど、多様な事業会社が含まれています。今回導入された「グループ会社転籍制度」は、このグループ内企業間を対象に、社員が転籍という形で異動できる仕組みを整えたものです。
従来も出向や異動という形でグループ内の人事交流はありましたが、「転籍制度」はより自律的なキャリア形成の色合いが強い制度といえます。転籍は、所属会社そのものを移るため、給与体系や評価制度、担当業務も含めて、より大きな環境変化を伴います。その分、新しい経験を積んだり、専門性を高めたりするチャンスも広がります。
制度導入のねらい:キャリア自律と組織活性化
今回の制度には、大きく分けて次の2つのねらいがあると考えられます。
- キャリア自律の支援
- 組織の活性化とグループシナジーの強化
キャリア自律とは、会社任せではなく、社員自身が自分のキャリアを主体的に考え、選択していくことを指します。賃貸住宅業界は、人口減少やライフスタイルの多様化、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の加速など、大きな変化の中にあります。その中で、社員が自ら学び、新しい分野に挑戦し、専門性を高めていくことが、企業の競争力の源泉になりつつあります。
一方で、企業側から見れば、グループ各社に散らばるノウハウや人材を、より柔軟に動かせるようにすることで、シナジー(相乗効果)を高められる可能性があります。例えば、賃貸管理の現場で培ったノウハウを、シニア向け住宅の企画に生かしたり、建設部門での経験を不動産コンサルティングに活かしたりといった、横断的な人材活用がしやすくなります。
全社員9,000名が対象となるインパクト
今回の制度は、グループ全社員約9,000名を対象としています。対象者が限定的な制度ではなく、原則として全社員に門戸が開かれていることで、次のような影響が期待されます。
- 若手社員にとって、早い段階から複数のキャリアパスをイメージしやすくなる
- 中堅・ベテラン社員にとって、これまでの経験を活かしながら新しい領域に挑戦できる
- 地方拠点や地域密着型のグループ会社にも、多様な人材が集まりやすくなる
特に不動産・建設業界では、地域ごとの需要や行政との関係など、ローカルな知見が重要になります。グループ内で人材が循環することで、各地域へのノウハウの還流も進み、地域密着型のサービスがより磨かれていくことも期待できます。
「住みここちランキング」とは何か
こうした人材の動きと並行して、「住みここちランキング」の話題も注目されています。「住みここちランキング」は、民間調査会社などが実施する、居住者へのアンケートに基づく地域評価指標です。「治安」「交通の利便性」「買い物環境」「自然・環境」「子育てのしやすさ」「地価・家賃の水準」など、複数の項目から総合的に「住みやすさ」を数値化し、ランキング形式で公表するものが代表例です。
ランキングの結果は、自治体の都市ブランドや移住・定住施策、企業の立地判断などにも活用されることが増えています。また、住宅購入や賃貸物件選びをする個人にとっても、一つの判断材料として定着しつつあります。
茨城県の「住みここちランキング」:ひたちなか市が8位に
茨城県内を対象とした「住みここちランキング」で、ひたちなか市が8位にランクインしたとのニュースも伝えられています。ひたちなか市は、ひたちなか海浜鉄道湊線や常磐線・勝田駅周辺など、交通の利便性を持ちながら、海岸線や公園など自然環境も身近にあるエリアです。商業施設や飲食店も集積しており、生活インフラがバランスよく整っていることが評価につながっていると考えられます。
茨城県は首都圏からのアクセスも良く、東京圏への通勤圏としても注目される一方、「車社会」のイメージも強い地域です。その中でひたちなか市が上位に入ったことは、日常生活のしやすさや、子育て・教育環境などにおいて、県内外の居住検討者にとって魅力ある選択肢になっていることを示唆します。
大東建託のような賃貸住宅関連企業にとっても、こうしたランキングは、需要が高まりやすいエリアや、住まいに対するニーズの傾向を読み解くヒントになります。今後、ひたちなか市を含む茨城県内で、どのような間取りや設備、賃料帯の物件が求められていくのかを考える上で、住民の評価は貴重な情報源です。
甲信越版「住みここちランキング」:原村が首位に返り咲き
一方、甲信越版(山梨・長野・新潟)の「住みここちランキング」では、長野県原村が首位に返り咲いたと報じられています。原村は、八ヶ岳山麓に位置し、標高の高い涼しい気候、雄大な自然、星空の美しさなどで知られる村です。移住者や二拠点居住者にも人気があり、「のんびり、豊かな暮らし」を志向する層から支持を集めています。
今回のランキングで注目すべき点は、トップ10のうち7自治体が長野県で占められたことです。長野県は以前から「移住希望地ランキング」などでも上位の常連ですが、具体的な自治体レベルでも評価が高いことが改めて示された形になります。
長野県の自治体が高評価を得る背景としては、次のような要素が挙げられます。
- 豊かな自然環境と四季の変化
- 夏の涼しさなど、比較的過ごしやすい気候
- 移住促進や子育て支援など、行政の取り組み
- 在宅勤務・テレワークの浸透による、地方居住のしやすさ向上
人口集中が続く大都市圏とは別に、「自然に囲まれて、ゆるやかに暮らせる地域」への関心は今後も続くと見られます。原村の首位返り咲きは、そうした流れを象徴する出来事の一つといえるでしょう。
働き方と「住みここち」がどうつながるのか
ここまで見てきたように、大東建託の「グループ会社転籍制度」は、社員が自らのキャリアを選び取りやすくする仕組みです。そして、「住みここちランキング」は、人々がどの地域で、どのように暮らしたいかという意識の変化を映し出す指標です。この二つは、別々のニュースに見えますが、実は「働き方」と「暮らし方」が一体となって変化していることを示しています。
社員が転籍制度を活用して、例えば地方のグループ会社で働く道を選べば、住む地域も変わります。その際に、「どの地域が住みやすいのか」「子育てや教育環境はどうか」「自然との距離感はどうか」といった観点が、より重視されるようになります。企業側も、優秀な人材を呼び込むために、勤務地の魅力をきちんと伝える必要に迫られます。
大東建託のような住宅・不動産関連企業は、まさに「住まい」と「暮らし」を事業の中心に据えています。その企業が人材の流動性を高める制度を打ち出すことは、単なる人事施策にとどまらず、地域と人をつなぐ仕組みづくりの一環としても意味を持ちます。例えば、原村やひたちなか市のように「住みここち」が高く評価される地域で、どのような賃貸住宅やコミュニティづくりを進めていくのかは、今後の大きなテーマになっていくでしょう。
これからのキャリアと暮らしの選び方
働き方改革やテレワークの定着、人口減少・高齢化、そして価値観の多様化。こうした要因が重なり合い、「どこで、どう働き、どこで、どう暮らすか」をあらためて考え直す人が増えています。今回取り上げたニュースからは、次のようなメッセージが読み取れます。
- 企業側は、社員が自律的にキャリアを選べる仕組みづくりを進めている
- 地域側は、「住みここち」の向上を通じて人を惹きつけようとしている
- 個人は、その両方を見ながら、自分に合った働き方・暮らし方を柔軟に選べる時代になりつつある
大東建託の「グループ会社転籍制度」のような取り組みが広がれば、今後は「会社に入ったら勤務地も仕事も一生固定」という考え方は、ますます少数派になっていくかもしれません。そして、ひたちなか市や原村のように「住みここち」が高く評価される地域は、単なる観光地や別荘地としてではなく、日常の暮らしの場として選ばれていくことが期待されます。
「自分はどんな環境だと、心地よく働けるだろう」「どんな街で、家族と暮らしたいだろう」。こうした問いを持つ人にとって、企業の人事制度の変化と、住みここちランキングのようなデータは、これからの選択のヒントになっていきそうです。


