13年ぶりの大幅下落――「安全資産」金価格に何が起きているのか

長年「安全資産」として世界中の投資家に選ばれてきた金(ゴールド)の価格が、いま大きく下落しています。四半期ベースでは2013年以来・約13年ぶりとなる大幅な下げが観測され、「金価格は本当に安全なのか?」という声も聞かれ始めました。

この記事では、金価格の最新動向と、その背景にある米FRB(連邦準備制度理事会)の利上げ見通し中東情勢原油安など、複数の要因を、できるだけやさしい言葉で解説します。投資をしている方はもちろん、ニュースを見て「なぜ金が下がるの?」と疑問に思った方の参考になるよう、順を追って整理していきます。

四半期ベースで13年ぶりの大幅下落

ウォール・ストリート・ジャーナルなどの報道によると、金先物価格は直近の第2四半期に約13.4%下落し、これは2013年以来となる大幅な下落率とされています。 米CNBCも「金価格が2024年以降初めて四半期ベースで下落に転じ、2013年第2四半期以降で最も大きな下落幅になった」と伝えています。

現物の国際金価格も軟調に推移しており、ある時点では1オンス当たり約3983ドルまで下落、年初来では11%以上の下げ幅を記録したとされています。 一時は史上最高値・1オンス当たり約5595ドルまで上昇していたことを考えると、かなり大きな調整局面に入っていると言えます。

また、テクニカルな指標としても、金価格は200日移動平均線近辺を下値の目安としつつも、そこを割り込むかどうかが市場参加者に注目されています。中東情勢の悪化や米金利の上昇、ドル高が重なり、下落圧力が高まっていると分析されています。

「安全資産」のはずの金が、なぜここまで下がっているのか

一般に、金は「株式市場が不安定なとき」「世界で紛争や危機が起きたとき」に買われやすい資産として知られています。ところが、今回の局面では中東危機7カ月ぶりの安値圏

その背景には、次のような複数の要因が重なっています。

  • 米FRBによる利上げ見通しと、それを先取りした市場の動き
  • 世界的なインフレ懸念と、それに対応する金融引き締め
  • 中東情勢をめぐる不透明感と原油価格の変動
  • 長期にわたる上昇相場の後に出た利益確定売りの増加
  • ドル高と米長期金利上昇による、金の相対的な魅力低下

ひとつひとつ、順番に見ていきましょう。

最大の要因――FRBの利上げ観測と金利上昇

金価格下落の「核心的な背景」として、多くの専門家が挙げているのが米FRBによる利上げ見通し

英国の投資銀行パンミュア・リベルムのアナリスト、トム・プライス氏は、「ケビン・ウォッシュFRB議長が物価安定を最優先課題と掲げたことで、市場が金利引き上げの可能性を先取りして織り込んだ

ここで、金利と金価格の関係をやさしく整理してみます。

  • 金には利息がつかない
    金を保有していても、株の配当や債券の利息のような収入はありません。そのため、金利が低いときは「利息がなくても安全な金を持とう」という動きが強くなります。
  • 金利が上がると、金は相対的に不利になる
    一方で、金利が上昇すると「利息のつく資産(債券など)にお金を移した方が有利だ」と考える投資家が増えます。つまり、金利上昇は金にとって逆風

現在は、インフレを抑えるために利上げ・引き締め方向

インフレ懸念と中東情勢――「安全資産買い」一巡後の反動

2026年にかけては、米・イスラエルによるイラン攻撃の長期化インフレ懸念

インフレ懸念が高まる局面では、一般に「物価上昇に強い資産」とされる金が買われやすく、実際に金価格は史上最高値金利上昇

さらに、金価格が長期にわたって上昇したことで、投資家の間では利益確定売り

「中東危機なのに金が下がる」理由とは

多くの人が疑問に感じているのが、「中東で危機が続いているのに、なぜ金価格は下がっているのか?」という点です。安全資産であるはずの金が、地政学リスクの高まりと逆行するように下落するのは、一見すると不思議に思えるかもしれません。

ここには、いくつかのポイントがあります。

  • すでに危機がある程度織り込まれていた可能性
    中東情勢の悪化は、2026年初頭から続いており、市場参加者は早い段階でそのリスクを金価格に織り込んでいました。 その結果、「追加の悪材料」で金がさらに上がるという余地が小さくなり、むしろ金融引き締めやドル高といった別の要因が前面に出てきたと考えられます。
  • 原油高から原油安への転換
    中東危機による原油高はインフレ懸念を強め、当初は金価格の支えになりました。 しかし、その後、世界的な景気減速懸念や供給面の変化などから、原油価格が落ち着き始めると、インフレ期待もやや後退し、金の「インフレヘッジ」としての魅力も相対的に薄れていきました。
  • FRBのスタンスがより重要視されている
    近年の市場では、地政学的なニュース以上にFRBの政策方針

このように、今回の局面では「中東危機」よりも「FRBの利上げ見通し」や「ドル高・金利上昇」

ドル高と米長期金利上昇――金にとっての二重の逆風

金は世界中で取引されるコモディティですが、その価格表示は基本的に米ドル建て

2026年にかけては、米長期金利の上昇ドル高

つまり、金価格は現在、利上げ観測ドル高・金利上昇

歴史的な視点――2013年の「金暴落」との共通点

今回の下落が「13年ぶり」という表現で語られる背景には、2013年の金価格暴落

2013年当時も、米国の量的緩和縮小(テーパリング)観測28%下落

今回も、「大規模な金融緩和から引き締めへ」という方向性が共通しており、金融政策の転換局面で金価格が大きく調整する

個人投資家への影響――「安全資産」の捉え方を見直すタイミング

金は日本の個人投資家にとっても身近な存在で、現物の金地金(ゴールドバー)や、純金積立、金ETFなどを通じて投資している方が少なくありません。2024年頃から金価格は堅調に上昇してきましたが、2026年に入ってからは乱高下と下落

この局面で重要なのは、「金だから絶対に安全」という思い込みをいったん横に置き、金も価格が大きく変動する金融商品である

投資を考えるうえでは、次のような点に注意するとよいでしょう。

  • 金は短期的には大きく上下する可能性がある
  • インフレヘッジや分散投資の一環として、資産全体の一部に組み入れる
  • FRBの政策方針・金利動向ドルの動き
  • 中東情勢や原油価格など、地政学要因

金は長期的には価値を保ちやすい資産とされますが、それでも短期的には大きな調整局面

今後の注目ポイント――ウォーシュFRBと原油価格の行方

金価格の「上値の鍵」として、複数の専門家が注目しているのが、ケビン・ウォッシュFRB議長のスタンス原油価格の動向

ウォーシュ議長が今後も物価安定を最優先とし、利上げ方向への姿勢を崩さない場合、市場は引き続き金利上昇・ドル高

一方で、原油価格が再び大きく上昇し、世界的なインフレ懸念が再燃するような展開になれば、金のインフレヘッジ需要

今後しばらくは、FRBの会合や議長・理事の発言米国の物価指標(CPIなど)

まとめ――「安全資産」だからこそ、冷静な情報整理を

金価格は現在、13年ぶりの大幅下落7カ月ぶり安値圏利上げ見通しドル高・金利上昇利益確定売り

金は長期的な資産防衛の手段として有力な選択肢のひとつであることは確かですが、「安全資産=値動きしない」というわけではありません。今回の局面は、金という資産の性質を改めて確認し、情報とリスクを理解したうえで付き合うことの大切さ

参考元