「国旗損壊罪」法案が衆院を通過――共同提出の野党も欠席する異例の展開

日本国旗を傷つける行為を処罰する「国旗損壊罪」創設法案が、衆議院本会議で可決されました。与党と一部野党の賛成多数で衆院を通過した一方で、法案を共同提出した国民民主党と参政党を含む野党側が本会議を欠席するという、極めて異例の形での採決となりました。

このニュースは、国旗をめぐる新たな刑罰規定の是非だけでなく、国会運営をめぐる与野党の激しい対立、さらには「中傷動画」をきっかけとした関係悪化など、いくつもの論点を含んでいます。本記事では、法案の内容、採決の経緯、各党の主張や懸念点を、できるだけわかりやすく丁寧に解説していきます。

「国旗損壊罪」とはどんな法律なのか

今回衆議院を通過したのは、刑法の一部を改正し、新たに「国旗損壊の罪」を設ける法案です。
衆議院の法案本文によれば、条文の骨格は次のような内容です。

  • 「日本国に対して侮辱を加える目的」で
  • 国旗を損壊(破る・燃やすなど)、除去(掲揚をやめさせるなど)、汚損(汚すなど)した者を
  • 2年以下の懲役または20万円以下の罰金に処する

つまり、この罪が成立するには、単に国旗を傷つけるだけではなく、「日本国に侮辱を加える目的」があることが条件とされています。
日本国旗そのものを物理的に守るというだけでなく、「国家への侮辱的な行為」を法律上明確に処罰対象とする狙いがあるとされています。

これまで日本の刑法には、国旗を傷つける行為を直接対象とした犯罪規定はありませんでした。今回の法案は、「国家の尊厳を傷つける行為」に対する新しい罰則を創設するものとして、与党などが必要性を強調してきました。

誰が法案を出したのか――自民・維新・国民民主・参政の4党共同提出

この「国旗損壊罪」創設法案は、自民党日本維新の会と、野党の国民民主党参政党4党による共同提出という形で出されました。
与党に近い立場の野党や一部会派が連携する、いわゆる「与野党協調型」の法案としてスタートした点が特徴的です。

国会審議では、自民党や維新の会が、国旗は国家の象徴であり、故意に損壊する行為は国の尊厳を傷つけるものだとして、法制化の意義を訴えました。
国民民主党や参政党も当初は、この趣旨に賛同し、共同提出に加わっています。

衆院本会議で何が起きたのか――野党側が相次いで欠席

ところが、法案が採決される衆議院本会議の場では、事態は一転します。日本国旗の損壊などを処罰するこの法案は、与党の賛成多数で可決・衆院通過したものの、野党側は本会議を欠席しました。

欠席したのは、法案に反対してきた野党だけではありません。なんと、法案を共同提出した国民民主党と参政党も本会議を欠席し、採決に加わらないという異例の対応を取りました。
TBSなどの報道では、「法案提出者が採決を欠席するのは極めて異例」とされています。

また、法案に一貫して反対してきた自民党の岩屋毅・前外相も、採決を棄権しました。
与党の中にも慎重な意見が存在していることをうかがわせる動きです。

なぜ野党は欠席したのか――背景に「与党の国会運営への反発」

野党側が一斉に本会議を欠席した理由として、複数の報道は「与党の国会対応への反発」を挙げています。

報道によれば、野党は、同日に審議入りした「副首都構想」の実現法案や、衆院議員の定数削減法案などを巡り、与党が数の力で議事を進めているとして、「横暴だ」と強く批判しています。
こうした国会運営への不満から、野党側はすべての法案審議を拒否する構えとなり、その一環として「国旗損壊罪」法案の採決が行われる本会議も欠席した、という流れです。

東京新聞なども、「国旗損壊罪」法案の衆院通過は、共同提出した2党を含め野党側が欠席する中で行われた採決だったと報じています。
ここには、法案そのものへの賛否というよりも、与党の議事運営全体への抗議という意味合いが強く含まれていると見られます。

対立の発端となった「中傷動画」とは

今回の緊張した状況の背景には、報道で「中傷動画」と呼ばれる問題も指摘されています。ニュースでは、「国旗損壊罪」創設法案を巡る与野党の対立の発端として、「中傷動画」が取り上げられています。
具体的な動画の内容やどの政党・議員に関するものかについては、各報道で詳細が分かれており、ここでは確認できる範囲に限って述べます。

複数の野党は、特定の政治家や政党を強く批判する動画が、国会審議や政治的な対立を煽る形で拡散していることを問題視しており、こうした「中傷動画」が、与野党間の信頼関係を大きく損なう要因になっていると主張しています。
国会での冷静な議論の前提となる「相互の信頼」が揺らいだ結果、今回の一斉欠席という強硬な手段につながった、という見方が示されています。

「国旗損壊罪」法案そのものは、国旗に対する行為を対象としていますが、その審議の場では、ネット上の中傷や誹謗をめぐる問題が、別の形で影響を及ぼしていることも、今回のニュースの重要な一面だと言えるでしょう。

法案への賛成・反対の主な論点

「国旗損壊罪」法案をめぐっては、賛成派と反対派で、いくつかの論点が対立しています。報道や法案の条文から整理できる主なポイントを、わかりやすくまとめます。

賛成派の主張:国家の象徴を守るために必要な規定

  • 国旗は国家の象徴であり、故意に損壊する行為は日本国全体への侮辱だとする考え方から、「国旗損壊罪」を新設し、一定の抑止力を持たせる必要があるとされます。
  • 既存の刑法では、国旗損壊を直接対象とした罰則がないため、国家の尊厳を守る観点で、法整備の空白を埋める意味があると説明されています。
  • 条文上、「日本国に対して侮辱を加える目的」という要件が付されているため、単なる事故や善意の行為は処罰の対象にならず、目的の限定によって乱用を防げるとしています。

反対・懸念する側の主張:表現の自由への影響や運用の難しさ

  • 国旗を使った政治的な抗議行動表現の自由に影響を与えるのではないか、という懸念が示されています。
  • 「日本国に対して侮辱を加える目的」があったかどうかを、実際の事件ごとにどのように判断するのかが難しく、恣意的な運用につながるおそれがある、という指摘もあります。
  • また、国旗損壊に限らず、政治的な対立が生じるテーマについて刑罰を拡大していくことが、「数の力による横暴」と批判されており、今回の法案はその一例と位置づけられています。

こうした賛否の議論は、今後法案が参議院で審議される過程でも、改めて焦点となる可能性があります。

今後の流れ――参議院での審議へ

「国旗損壊罪」法案は、衆議院本会議で可決され、衆院を通過しました。
今後は、参議院に送付され、そこで審議が行われることになります。法案が成立するためには、参議院でも可決される必要があります。

法案本文では、この改正刑法は「公布の日から起算して20日を経過した日から施行」されると規定されています。
つまり、参院で可決され、公布が行われれば、その20日後から新たな「国旗損壊の罪」が実際に適用されることになります。

一方、野党側は国会運営全体に対する批判を強めており、副首都構想法案や衆院定数削減法案など、他の重要法案をめぐっても審議拒否の姿勢を続ける構えを見せています。
参議院での「国旗損壊罪」法案審議が、落ち着いた議論の場となるのか、それとも衆院同様に与野党の対立が激化するのかは、今後の国会情勢に大きく左右されるでしょう。

国旗と私たちの暮らし――身近なところから考える

国旗をめぐる法律は、一見すると政治的で難しいテーマに感じられるかもしれません。しかし、国旗は運動会の校庭や祝日の玄関先など、私たちの身近な場所にも掲げられているものです。

「国旗損壊罪」法案が議論される背景には、「国の象徴を大切にしたい」という思いと、「市民の自由な表現を守りたい」という思いが、どちらも存在しています。今回のニュースは、どちらか一方を否定するというよりも、両方の価値をどうバランスよく尊重していくかを考えるきっかけと言えるかもしれません。

今後の国会での議論や、メディアの報道、専門家のコメントなどを通じて、この法案が社会にどのような影響を与えるのかを、落ち着いて見つめていくことが大切です。賛成・反対どちらの立場であっても、感情的に決めつけるのではなく、法案の内容や運用のあり方を丁寧に理解しようとする姿勢が求められています。

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