マダニ媒介感染症「SFTS」患者が過去最多ペース 今あらためて知っておきたいマダニ対策
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)など、マダニが媒介する感染症の患者数が、過去最多だった昨年を上回るペースで増えています。厚生労働省の集計では、今年報告されたSFTS患者はすでに72人に達し、同じ時期としては過去最多だった去年を上回っています。各地で感染報告が相次ぐなか、屋外活動が増える季節を迎え、改めてマダニ対策の徹底が呼びかけられています。
全国でSFTS患者が急増 昨年の同時期をすでに上回る
SFTSは、マダニが媒介するウイルス感染症で、主に西日本を中心に毎年患者が報告されています。厚生労働省の最新のまとめによると、今年報告されたSFTS患者は72人となり、すでに昨年同じ時期の報告数を上回るペースで増加しています。
SFTSの年間患者数はこれまで増加傾向にあり、昨年は年間の報告数が過去最多となりました。その「過去最多ペース」を、今年はさらに上回っていることになり、専門家や行政は警戒を強めています。地域によって報告数の差はあるものの、「マダニが生息しうる環境」に出入りする人であれば、誰もが感染リスクを抱えていると言えます。
感染の多くは、山あい、草地、やぶ、畑仕事、庭しごと、キャンプ、ハイキングなど、屋外でマダニにかまれることで起こります。特に気温が上がり、人もマダニも活動的になる春から秋にかけては、例年患者数が増える傾向があり、今がちょうど注意を強めるべき時期です。
茨城県でも60代男性のマダニ感染症報告 「自分は関係ない」とは言えない状況に
これまでSFTSは西日本が中心とされてきましたが、茨城県で60代男性がマダニ感染症を発症したと報じられるなど、東日本でもマダニ関連の感染症例が注目されています。報道では、この男性は屋外での活動歴があり、マダニにかまれたことが感染のきっかけとなったとみられています。
SFTSそのものは、現在のところ主に西日本で報告が多い感染症ですが、マダニは全国の草地や山林などに生息しており、「自分の住んでいる地域なら安心」とは言い切れません。茨城県のような例が報じられることで、「マダニはどこにでもいる」「地域に関わらず注意が必要だ」という意識が、少しずつ広がりつつあります。
また、マダニが媒介する感染症はSFTSだけではありません。日本紅斑熱やライム病など、さまざまな感染症が知られており、地域によって流行する病原体は異なりますが、共通して言えることは「マダニにかまれないことが最も重要な予防策」という点です。
SFTSとはどんな病気?症状や重症度をやさしく解説
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、SFTSウイルスを保有するマダニにかまれることで感染する病気です。潜伏期間はかまれてから数日から2週間ほどとされ、その後、急に次のような症状が出ることがあります。
- 高熱(38度以上の発熱)
- 強いだるさ(倦怠感)
- 食欲不振
- 吐き気やおう吐、下痢などの消化器症状
- 頭痛、筋肉痛
さらに検査をすると、血小板や白血球の数が減少していることが特徴です。病状が進行すると、意識障害や出血傾向、多臓器不全などを起こすことがあり、命にかかわる重い病気とされています。
SFTSには、現時点で有効性が確立された特効薬やワクチンがなく、治療は主に点滴や対症療法が中心となります。そのため、早期に気づいて入院など適切な医療を受けることがとても重要です。高齢の方や基礎疾患のある方では、重症化しやすいとされており、特に注意が必要です。
マダニはどこにいる?身近な環境にも潜むリスク
「マダニ」と聞くと山奥にだけいるイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際にはもっと身近な場所にも生息しています。マダニが多いとされる場所は次のようなところです。
- 山林ややぶ、落ち葉の多い場所
- 河川敷や草むら、公園の植え込み
- 農地や畑、放棄された空き地
- 庭の草が生い茂った場所
マダニは、人や動物が通りかかるのをじっと待ち構え、体に取りついてから皮膚にかみつき、数日間かけて吸血します。一般的な家庭に出るイエダニとは異なり、屋外に生息する比較的大きなダニで、かみつかれると皮膚にしっかり食い込むのが特徴です。
また、犬や猫などのペットが屋外でマダニを付けて帰ってくることもあります。直接ペットから人に感染するわけではありませんが、ペットを介して人の生活空間にマダニが持ち込まれる可能性があるため、ペットのケアも重要です。
今日からできるマダニ対策 服装・虫よけ・帰宅後のチェック
マダニ媒介感染症の最も有効な予防策は、マダニにかまれないようにすることです。特別な道具がなくても、次のような基本的な対策を徹底することで、リスクを大きく減らせます。
1. 屋外活動時の「服装」を工夫する
- 長袖・長ズボンを着用する
- 首元を覆うシャツやタオル、帽子を身につける
- ズボンの裾を靴下の中に入れるなど、肌の露出をできるだけ減らす
- 色の薄い服を選ぶと、マダニが付着したときに見つけやすい
少し暑く感じるかもしれませんが、草むらや山に入るときには、肌を守る服装を優先することが大切です。
2. 虫よけ剤を正しく使う
- ディートやイカリジンを有効成分とする虫よけ剤を、説明書に従って肌や衣服に噴霧する
- 汗をかいたり時間がたったりしたら、適宜塗り直す
- 小さな子どもに使用する際は、対象年齢や使用上の注意をよく確認する
マダニに対して完全に防げるわけではありませんが、適切に使うことで、体に取りつくマダニの数を減らせるとされています。
3. 帰宅後の「全身チェック」を習慣に
- 入浴前や着替えのタイミングで、全身の皮膚を目で見て確認する
- 特に、わきの下、太ももの付け根、ひざの裏、腰まわり、首のまわり、頭皮などを念入りに確認する
- 子どもや高齢の家族には、家族同士で確認し合う
- 衣服はすぐに洗濯し、屋内でパンパンとはたかない
マダニはかみついてから一定時間がたつと、しっかりと皮膚に食い込みます。早めに見つけて対処することが、とても大切です。
万が一マダニにかまれたら…してはいけないこと・するべきこと
もしマダニが皮膚に食いついているのを見つけた場合、自分で無理に引き抜かないことが重要です。
- ピンセットでつまんで強く引っ張る
- 指で押しつぶす
- アルコールやオイルをかけて「自然に離れる」のを待つ
こうした行為は、マダニの口の一部が皮膚の中に残ったり、体液が体内に押し込まれたりする可能性があり、感染リスクを高めるおそれがあります。
最も望ましいのは、できるだけ早く医療機関を受診して、医師に取り除いてもらうことです。可能であれば、マダニが付着している状態のまま、あるいは取り除いたマダニをビニール袋などに入れて持参すると、診断の参考になります。
マダニにかまれたあと、次のような症状が出た場合は、SFTSなどの可能性も考えられるため、速やかに受診しましょう。
- 数日から2週間以内に、発熱や強いだるさが出た
- 吐き気やおう吐、下痢などの消化器症状がある
- 意識がぼんやりする、ぐったりしている
受診の際には、「いつ」「どこで」「どのような活動中に」マダニにかまれたかを、できるだけ詳しく医師に伝えるようにしましょう。
高齢者・持病のある人・屋外で働く人は特に要注意
SFTSで重症化しやすいとされるのは、高齢者や基礎疾患のある人です。農作業や庭しごと、山菜採りや釣り、林業など、屋外での活動が日常的な人は、特に注意が必要です。
- 農作業や草刈りの前に、必ず長袖・長ズボン・帽子を着用する
- 真夏でも、できる限り肌の露出を避ける
- 一人で山に入らず、体調不良時は無理をしない
- 具合が悪くなったら、「疲れのせい」と決めつけず、早めに医療機関を受診する
また、家族や周囲の人が、こうしたリスクを理解して声をかけることも大切です。「このくらい大丈夫だろう」と思ってしまいがちな方に、ニュースや自治体からの注意喚起を共有し、対策の必要性を一緒に確認することが、命を守ることにつながります。
自治体と国の呼びかけ 身近な情報もこまめにチェックを
厚生労働省は、SFTS患者数が過去最多ペースで増えていることを受け、改めてマダニ対策の徹底を呼びかけています。都道府県や市町村でも、ホームページや広報誌、学校や保育所などを通じて、マダニやSFTSに関する情報を発信しています。
地域によっては、次のような取り組みが行われています。
- 保健所による啓発チラシの配布
- 地域の集まりや農業関係者向けの講習会
- 公園や山の登山口での注意喚起ポスター掲示
- 学校での安全指導や保護者向けのお知らせ
特に今回のように、茨城県の60代男性のような地域ニュースとしてマダニ感染症が報じられた場合、「自分たちの身近な問題」として捉えるきっかけになります。住んでいる地域の自治体ホームページや広報紙を、時々チェックしてみるとよいでしょう。
「知ること」と「備えること」でマダニ感染症から身を守る
SFTSをはじめとするマダニ媒介感染症は、重症化すると命にかかわる怖い病気です。しかし、マダニの特徴や生息場所を知り、日頃から基本的な対策を習慣にすることで、リスクを大きく減らすことができます。
ポイントを改めて整理すると、次の4つが大切です。
- 草むらや山に入るときは、長袖・長ズボン・帽子などで肌の露出をできるだけ少なくする
- 虫よけ剤を正しく使い、帰宅後は全身をよくチェックする
- マダニにかまれたら自分で無理に取らず、できるだけ早く医療機関に相談する
- 発熱や強いだるさ、吐き気などの症状が出たら、早めに受診し、マダニにかまれた可能性を伝える
今季は、SFTS患者が過去最多を上回るペースで増えているという、見過ごせない状況です。屋外レジャーや農作業などを楽しむ一方で、マダニ対策だけは「やりすぎ」くらいでちょうどよいと言えます。自分自身と、大切な家族や地域の人々の命を守るために、今日からできる対策を一つずつ実践していきましょう。



