アジアのナフサ価格が急落、ADNOCのオマーン経由輸出再開が市場心理を冷やす
アジアのナフサ価格が、3月上旬以来の安値水準まで急落しました。背景には、アラブ首長国連邦(UAE)の国営石油会社ADNOCが、5月にオマーンのソハール港経由でナフサの輸出を再開したことがあり、需給の見方に影響を与えています。
ナフサは石油化学の基礎原料で、エチレンやプロピレンの製造に使われます。今回の下落は、石化業界にとって原料調達コストの変化を意味する一方、足元では原料安がそのまま需要増につながる局面ではなく、市場全体の余剰感も意識されています。
ナフサ相場は直近で大きく下落
価格指標を見ると、ナフサは2026年5月29日に728.28米ドル/トンまで下落し、前日比0.94%安となりました。過去1か月では19.20%下落しており、短期間での値動きの大きさが目立ちます。
ただし、前年同月比では依然として33.70%高い水準にあり、急落したとはいえ、長期的にはなお高値圏にあることが分かります。
ADNOCのオマーン経由輸出再開が注目された理由
ロイターによると、ADNOCは5月にオマーンのソハール港を経由してナフサ輸出を再開しました。 この動きは、供給の流れが戻ることで市場の見通しに影響を与え、アジアのナフサ価格を押し下げる材料として受け止められています。
トレーダーらがこの再開を把握したことで、アジア市場では供給増への警戒感が強まりました。 ナフサは国際的に流通する原料であるため、特定地域での供給変化でも、取引参加者のセンチメントに素早く波及します。
石化業界ではエチレンも続落、余剰感が重し
同じ週の石油化学市場では、エチレン価格も大幅に続落しました。市場では余剰感の強さが意識されており、ナフサ安だけでは相場を支えにくい状況がうかがえます。
エチレンはナフサを原料とする代表的な基礎化学品です。したがって、ナフサ価格の下落は原料コスト面ではプラスに働く一方、エチレン自身の値下がりが続くと、石化メーカーの採算環境はかえって厳しくなります。
アジア石化会議で強まった「連携」の必要性
アジア石化会議では、中東情勢の影響を受けるなかで、「国・企業を超えた連携」が一段と必要だという見方が出ました。原料供給や物流の変化が短期間で相場を揺らすため、個別企業だけでは対応しきれない局面が増えているためです。
ナフサのような基礎原料は、供給ルート、地域の需給、下流製品の需要動向が複雑に絡み合います。今回のようにADNOCの輸出再開が一つの引き金となって価格が急落すると、石化各社は調達、販売、在庫の見直しを迫られます。
日本の石化市場にも影響が及ぶ可能性
アジアのナフサ相場は、日本の石油化学製品のコストにも影響します。ナフサが安くなれば、エチレンやその誘導品の原料負担は軽くなりますが、同時に製品価格も下押しされやすく、単純に利益改善につながるとは限りません。
今回のようにナフサとエチレンがそろって弱含む局面では、原料安よりも需要の弱さや供給過剰が市場の焦点になります。石化メーカーにとっては、原料調達だけでなく、在庫管理や販売先との価格交渉も重要性を増します。
市場が注目するポイント
- ADNOCの輸出動向が今後も続くかどうか。
- アジアのナフサ価格が安値圏で下げ止まるかどうか。
- エチレン相場の余剰感がいつまで続くか。
- 中東の供給環境が石化原料の流れにどう影響するか。
足元のアジア市場では、ナフサの急落が単なる原料安ではなく、供給再開と需給緩和の両面を映す材料として受け止められています。 石油化学業界では、原料・製品の両方で価格が弱い状態が続いており、当面は慎重な市況判断が求められそうです。



