夏場所を休場した力士たちが名古屋で再起へ――「休場」の先に見据えるそれぞれの土俵

夏場所(五月場所)をけがで休場した幕内力士たちが、次の本場所となる名古屋場所に向けて徐々に動き出しています。
中でも注目されているのが、左足甲のけがで夏場所を休場した元大関・朝乃山と、右膝の負傷で夏場所を休場した幕内・朝紅龍です。
2人はともに「休場」を経験しながらも、次の場所への出場に強い意欲を見せており、その姿勢がファンの関心を集めています。

元大関・朝乃山、左足甲のけがからの復帰を目指す

まず話題の中心となっているのが、元大関の朝乃山です。
朝乃山は、夏場所前から痛めていた左足甲(足の甲の部分)のけがが悪化し、やむなく夏場所を休場しました。
大相撲において足甲のけがは、立ち合いの踏み込みや、土俵際での粘りに大きく影響するため、決して軽視できない部位です。

報道によると、朝乃山は現在も本格的な相撲が取れない状況が続いているものの、次の名古屋場所については「なんとかなる」と前向きな言葉を口にしています。
これは、完全に不安が消えたというよりも、「状態は万全ではないが、できる限り土俵に上がる方向で調整を進めたい」という心境の表れだと考えられます。

「相撲が取れない」中でも、土俵への強い執念

現在の朝乃山は、十分な稽古相手と四つに組んで激しい稽古をするような段階には、まだ至っていないとされています。
それでも、「相撲を取れる状態ではない」中で、名古屋場所の出場をあきらめていないという点に、朝乃山の強い執念が感じられます。

大相撲の世界では、休場が長引くと番付の降下は避けられません。
特に、元大関という実績を持つ力士にとって、下位で相撲を取り続けることは、悔しさと同時に「再び上を目指す」という強い動機にもなります。
朝乃山も例外ではなく、一度は大関の地位から陥落した身として、再び上位陣に加わることを大きな目標にしていると考えられます。

左足甲のけがは、踏み込みの瞬間に大きな負荷がかかるため、復帰のタイミングを誤ると再発の危険性があります。
それでもなお「なんとかなる」と口にできるのは、医師の見立てや周囲のサポートに加え、自らの回復力や稽古で積み重ねてきた自信が背景にあるからでしょう。

ファンの期待と不安が交錯する朝乃山の名古屋場所

朝乃山は、力強い押し相撲と四つ相撲を併せ持つ、バランスの取れた相撲内容で知られています。
土俵に上がれば、常に優勝争いへの期待がかかる存在であり、その復帰を待ち望んでいるファンは少なくありません。

一方で、けがが十分に癒えていない状態での強行出場となれば、再び休場を余儀なくされるリスクもあります。
ファンの中には、「無理だけはしてほしくない」という思いと、「早く元気な姿を見たい」という思いの両方を抱いている人も多いでしょう。

朝乃山が名古屋場所でどのような選択をするのか、そして実際に土俵に立った場合、どこまで従来の力強さを取り戻しているのか。
その一挙手一投足に、今後も大きな注目が集まりそうです。

幕内・朝紅龍も夏場所を休場、パリ公演から帰国直後に始動

もう一人、夏場所を休場しながら名古屋場所への出場に向けて歩みを進めているのが、幕内力士の朝紅龍です。
朝紅龍は夏場所中に右膝を痛め、途中休場となりました。膝のけがは、立ち合いの踏ん張りや土俵際での反応に直結するため、相撲内容を大きく左右します。

夏場所後、朝紅龍は海外で行われたパリ公演に参加し、そこで相撲の魅力を世界に発信しました。
そのパリ公演から日本へ帰国した翌日、朝紅龍はすでに稽古を再開したと報じられています。
本人は「目が覚めてしまった」と、その早すぎる“再始動”の理由を語っており、土俵に戻りたいという強い思いがうかがえます。

「目が覚めてしまった」――休場明けとは思えない行動力

朝紅龍の「目が覚めてしまった」という言葉には、単に時差ぼけという意味だけではなく、「じっとしていられない」「とにかく体を動かしたい」という心理も感じられます。
夏場所を右膝のけがで休場したばかりでありながら、海外公演から戻ってすぐ稽古に向かう姿は、相撲に対する真摯な姿勢の表れといえるでしょう。

もちろん、けがを抱えた状態での稽古再開には慎重さも求められます。
膝への負担を考えれば、いきなり激しい申し合いを行うのではなく、まずは体を慣らす段階から始め、状態を見ながら強度を上げていくことが重要となります。
それでも、早期に体を動かし始めているという事実は、名古屋場所を出場の目標としているからこそでしょう。

パリ公演がもたらしたもの――相撲への新たなモチベーション

朝紅龍が参加したパリ公演は、相撲の魅力を海外に伝える貴重な機会であり、土俵とはまた違った緊張感や喜びがあったと考えられます。
海外の観客からの熱い視線や歓声を浴びたことで、「もう一度、本場所の土俵でいい相撲を取りたい」という気持ちが、いっそう強まった可能性もあります。

このように、公演からの帰国翌日に稽古を開始したという行動には、休場を経ても相撲への情熱がまったく衰えていないことが表れています。
同時に、「休んでいた分を早く取り戻さなければならない」という危機感もあったことでしょう。

休場という決断の重さ――力士にとっての「土俵に上がらない」時間

大相撲の力士にとって、「休場」という決断は非常に重いものです。
土俵に上がれなければ、番付は下がり、出場手当などの収入にも影響が出ます。
何より、相撲取りとしての「存在感」を示す場を失うことになりかねません。

一方で、無理をして出場し続ければ、けがが悪化し、より長期の休場を招くこともあります。
朝乃山も朝紅龍も、結果的に夏場所を休場という形で過ごしましたが、それは単なる「欠場」ではなく、将来に向けて相撲人生を長く続けるための選択という側面があります。

休場中の力士は、表に出る土俵ではなく、稽古場や治療の場で自分自身と向き合います。
痛みと不安、焦りや悔しさといったさまざまな感情を抱えながら、「次こそは土俵に立つ」という目標を胸に、地道なトレーニングやリハビリを続けていきます。

名古屋場所に向けたそれぞれの道――問われる調整力

朝乃山は左足甲、朝紅龍は右膝と、それぞれ負傷箇所は異なりますが、2人に共通しているのは「名古屋場所では土俵に立ちたい」という強い意欲です。

  • 朝乃山:本格的な相撲がまだ取れない中でも、「名古屋場所はなんとかなる」と前向きな発言
  • 朝紅龍:パリ公演から帰国した翌日に稽古を開始し、早期の実戦復帰を目指す姿勢

名古屋場所は夏の暑さが厳しい中で行われることもあり、体力的にもコンディション的にも難しい場所として知られています。
そのため、けが明けの力士にとっては調整の難易度が高い場所ともいえます。

どこまで稽古量を増やすのか、どのタイミングで強い相手との申し合いを再開するのか、そして直前の稽古内容をどう整えるのか。
朝乃山と朝紅龍は、それぞれの状態に合わせた慎重かつ大胆な調整が求められることになります。

ファンが見守る「復帰の一番」への期待

夏場所での休場を経験した力士が、次の場所で土俵に戻る際の「復帰の一番」は、ファンにとっても特別な瞬間です。
立ち合いの構え、最初のぶつかり、押し込まれた時の粘り、そして勝敗――そのすべてが、「けがは大丈夫なのか」「本来の力をどこまで発揮できているのか」を判断する材料になります。

朝乃山にしても、朝紅龍にしても、名古屋場所での初日、あるいは出場初日は多くの相撲ファンがテレビや会場で注目することでしょう。
勝っても負けても、その一番には、休場を乗り越えてきた時間や、地道な稽古の日々が凝縮されています。

また、2人の復帰は、同じくけがに苦しむ他の力士たちや、応援するファンにとっても大きな励みになります。
「休場しても、また土俵に戻ってこられる」「再び上を目指せる」という姿を見せることは、大相撲という競技全体にとっても、前向きなメッセージとなるはずです。

「休場」の先にあるもの――土俵に戻るための時間

今回取り上げた朝乃山と朝紅龍の動向は、「休場とは何か」を改めて考えさせてくれます。
休場は、単に土俵に上がらない期間ではなく、もう一度強くなるために、自分を見つめ直す時間とも言えます。

土俵の上で華やかな勝負を繰り広げる姿の裏には、けがに悩まされ、悔しさを飲み込みながらも、前を向いて歩みを進める力士たちの日々があります。
その姿を知ることで、私たちが見る一番一番の重みも、また違って感じられるのではないでしょうか。

名古屋場所で、朝乃山と朝紅龍がどのような相撲を見せてくれるのか。
休場を経て再び土俵に立とうとする2人の挑戦を、温かく見守りたいところです。

参考元