東芝が販売予測AIを開発 食品・日用品メーカーの「売れ行き予測」が大きく進化へ

東芝が、食品・日用品メーカーなどの企業向けに、より精度の高い「販売予測」を行うためのAI(人工知能)システムを開発したことが明らかになりました。報道によると、この販売予測AIは電子レシートのデータを活用することが大きな特徴で、2027年度に本格的な実用化を目指しているとされています。

本記事では、この販売予測AIがどのような技術なのか、なぜ今注目されているのか、メーカーや消費者にどのようなメリットがあるのかを、できるだけやさしい言葉で解説していきます。

東芝が開発した「販売予測AI」とは?

まず、今回話題になっている「販売予測AI」とは、簡単に言うと「商品がいつ・どれくらい売れるかを予測するためのAIシステム」です。対象となるのは、スーパーやドラッグストアなどで販売される食品や日用品が中心です。

これまでも、売上データや過去の実績をもとにした販売予測は行われてきましたが、今回の東芝の取り組みが注目されているのは、電子レシートの情報を活用する点にあります。紙のレシートではなく、デジタルデータとして取得されたレシート情報をAIが分析することで、よりきめ細かい予測が可能になると期待されています。

電子レシートを活用する意味とは

ここでポイントとなるのが電子レシートです。電子レシートとは、従来の紙のレシートの内容をデジタルデータとして記録したもので、スマートフォンアプリや会員システムなどを通じて提供されることが多くなっています。

電子レシートのデータには、次のような情報が細かく含まれています。

  • どの店舗で購入されたか
  • いつ購入されたか(日時)
  • どの商品が何個買われたか
  • 価格や割引の有無
  • ポイントの利用状況 など

これらの情報を大量に集めてAIが分析することで、従来のように「店舗ごとの売上」だけを見るのではなく、より細かな単位での購買行動の傾向をつかむことができるようになります。

食品・日用品メーカー向けに開発する理由

今回の販売予測AIは、主に食品メーカーや日用品メーカーなどを対象に想定して開発されています。これにはいくつか理由があります。

  • 日々の需要変動が大きい:食品や日用品は、天候、曜日、キャンペーン、季節行事など、さまざまな要因で売れ行きが変わりやすい商品です。
  • 賞味期限・在庫の問題がある:食品には賞味期限があり、作り過ぎ・仕入れ過ぎは廃棄につながります。一方で在庫が足りないと、機会損失が発生してしまいます。
  • 多品種・大量販売:同じカテゴリーでも多くのブランドやサイズが存在し、どの商品をどれだけ生産・出荷すべきかの判断が難しくなっています。

こうした課題を解決するために、東芝は電子レシートなどの実際の購買データを活用し、メーカー側がより正確に需要を見通せる仕組みを提供しようとしていると考えられます。

販売予測AIで何ができるようになるのか

東芝の販売予測AIが本格的に導入されると、メーカーや小売店には次のような効果が期待されます。

  • 需要予測の精度向上
    過去の売上だけでなく、電子レシートから得られる細かな購買行動データを分析することで、特定の商品が「いつ」「どこで」「どれくらい」売れやすいかを、これまで以上に正確に予測できる可能性があります。
  • 在庫の適正化
    需要予測が正確になれば、作り過ぎや仕入れ過ぎによる在庫の過剰を減らし、逆に在庫不足による売り逃しも防ぐことができます。これは、メーカー・小売店のコスト削減収益向上につながります。
  • フードロス削減への貢献
    特に食品では、需要予測の精度が上がることで、賞味期限切れなどによる食品ロスの削減が期待できます。これは企業にとってだけでなく、社会的にも重要なテーマです。
  • 販売戦略の高度化
    「どの地域で」「どの時間帯に」「どんな商品」が売れやすいかが分かれば、キャンペーンのタイミング新商品の投入計画なども、より戦略的に立てることができます。

AIはどのように学習するのか

販売予測AIの中身は専門的な技術が使われていますが、イメージしやすいように簡単に説明します。

AIは、過去に蓄積された大量のデータをもとに「パターン」を学習します。販売予測AIの場合、次のようなデータが学習の材料になります。

  • 電子レシートの購買履歴
  • 店舗ごとの売上データ
  • カレンダー情報(曜日、祝日、季節行事など)
  • 天候や気温、イベント情報など

AIはこれらのデータを組み合わせて、「ある条件のときには、特定の商品がどの程度売れる傾向があるか」を統計的に導き出します。その結果をもとに、未来の売れ行きを予測していきます。

東芝は、電子レシートというより詳細な購買データを利用することで、従来よりも細かいレベルでの予測を実現しようとしているとみられます。

2027年度に本格実用化へ

報道によれば、この販売予測AIはすでに開発が進んでおり、2027年度に本格的な実用化を予定しているとされています。つまり、すぐに全国で一斉に使われるというよりも、

  • まずは実証実験や試験導入を行い
  • 精度や使い勝手を検証し
  • その結果をふまえて、広く実用化していく

といった段階を踏むことが想定されます。

2027年度という目標を設定していることからも、単なる構想段階ではなく、ある程度技術的なめどが立っており、実際の商用利用を見据えた開発が行われていると考えられます。

メーカー・小売店・消費者それぞれのメリット

販売予測AIの導入によって、さまざまな立場の人にメリットが生まれる可能性があります。

  • メーカーのメリット
    生産計画や出荷計画をより正確に立てられるようになり、在庫コストや廃棄ロスの削減が期待できます。また、新商品の売れ行き予測にも役立ち、商品開発やマーケティング戦略の精度向上にもつながります。
  • 小売店のメリット
    店舗ごとの需要に合わせた発注がしやすくなり、品切れの防止売り場の最適化に役立ちます。結果として、売上機会を逃しにくくなり、顧客満足度の向上も期待できます。
  • 消費者のメリット
    店頭で欲しい商品が売り切れている、という場面が減る可能性があります。また、フードロス削減や物流の効率化は、長期的には価格の安定環境負荷の低減にもつながると考えられます。

プライバシーへの配慮も重要なポイント

一方で、電子レシートなどの購買データを活用する際には、個人情報やプライバシーへの配慮が欠かせません。電子レシートには、購入内容だけでなく、会員情報などが紐づいている場合もあります。

そのため、実際にAIを運用する際には、

  • 個人が特定されない形でデータを集計・分析すること
  • 利用目的を明確にし、適切なルールのもとでデータを扱うこと
  • 利用者に対して分かりやすく説明すること

などが求められます。東芝の販売予測AIが社会に広く受け入れられるためには、こうした点への丁寧な配慮も重要になってくるでしょう。

東芝がAI分野で果たす役割

東芝はこれまでも、社会インフラやエネルギー、流通システムなど、さまざまな分野でデジタル技術・AI技術を活用してきた企業です。今回の販売予測AIの開発は、そうした取り組みの一環として位置づけられると考えられます。

特に、流通・小売分野では、近年、

  • 少子高齢化による人手不足
  • 消費行動の多様化
  • ネット通販との競争激化

など、多くの課題が指摘されています。販売予測AIは、こうした課題の一部をデータとAIの力で補うための重要なツールとなる可能性があります。

今後の注目ポイント

今後、この販売予測AIに関して注目したいポイントとしては、次のような点が挙げられます。

  • どのメーカー・小売チェーンが導入するのか
    食品・日用品メーカーに加えて、大手小売チェーンやドラッグストアなどとの連携が進めば、より大規模なデータが集まり、AIの精度も高まると考えられます。
  • どのくらい予測精度が向上するのか
    従来モデルと比べてどの程度の改善が見込めるのか、実証結果や導入事例が公表されれば、社会的な関心はさらに高まるでしょう。
  • フードロス・環境負荷への具体的な効果
    販売予測AIが、どのくらい食品ロスや廃棄物削減に貢献できるのかは、企業だけでなく社会全体にとって大きな関心事です。

東芝が手がける今回の販売予測AIは、単なる企業の業務効率化にとどまらず、「必要なものを、必要なときに、必要な分だけ届ける」社会を実現するための一歩として捉えることもできます。

2027年度の本格実用化に向けて、今後の動きや具体的な導入事例などが報じられていくことが期待されます。

参考元