町民がつくるスーパーが地域の輪を広げる――滝上町「たきのうえ市場」とNHK ONE配信

北海道・滝上町で、町民自らが運営に関わる新しいかたちのスーパー「たきのうえ市場」が注目を集めています。

この取り組みは、地域の買い物拠点であるだけでなく、人と人とがつながる「交流の場」としても大きな役割を果たしており、NHKの地域番組「ほっとニュース北海道」でも特集され、NHKの配信サービス「NHK ONE」で配信されています。

この記事では、「町民がつくるスーパー」とはどういうものなのか、その背景や思い、そして滝上町の未来につながる可能性について、分かりやすくお伝えします。

NHK ONEで配信中の「ほっとニュース北海道」滝上町特集とは

NHK北海道が制作する地域情報番組「ほっとニュース北海道」では、道内の暮らしや地域の挑戦を丁寧に取り上げています。

その中で今、滝上町の「町民がつくるスーパー」をテーマにした企画が放送され、NHKの配信サービス「NHK ONE」でも視聴できるようになっています。配信は6月18日までとされており、期間中であればスマートフォンやパソコンなどからいつでも見られる形になっています。

この特集では、滝上町に新たに誕生したスーパー「たきのうえ市場」が、単なる買い物の場にとどまらず、地域のつながりを生み出す場所として機能している姿が紹介されています。また、運営会社の代表を務める飯尾裕光さん(50)の思いや、町民と一緒に作り上げてきた過程にも焦点が当てられています。

「町民がつくるスーパー」ってどんなスーパー?

「町民がつくるスーパー」と聞くと、少し不思議に思う方もいるかもしれません。ここでいう「町民がつくる」とは、単に地元の人が利用するスーパーという意味ではなく、

  • 開店までの準備やアイデア出しに町民が関わっていること
  • 品ぞろえやサービスなどに住民の意見が反映されていること
  • 買い物だけでなく、集まりやイベントの場としても活用されていること

といった、地域の人たちが主体となって形づくってきたスーパーだという点が大きな特徴です。

滝上町の「たきのうえ市場」は、まさにその代表的な例として注目されています。高齢化や人口減少が進む中で、地域にとって欠かせない「日々の買い物の場」を守り、さらに地域の活力を取り戻す拠点として、町民の思いが込められた場所になっています。

滝上町ってどんなところ? 背景にある「買い物」の課題

「たきのうえ市場」が生まれた滝上町は、北海道のオホーツク地方に位置する自然豊かな町です。春から初夏にかけて咲き誇る芝ざくらで知られ、観光シーズンには多くの人が訪れます。一方で、冬は雪が多く、人口減少や高齢化も進んでいます。

地方の小さな町では、かつては商店街や個人商店が支えてきた日々の買い物環境が、時代の変化とともに大きく変わってきました。後継者不足や経営環境の悪化から店を畳むケースも増え、

  • 徒歩圏内にお店がない
  • 車を運転できない高齢者は遠くまで行けない
  • 選べる商品が少なくなってしまう

など、「買い物弱者」と呼ばれる人たちが増えてしまう状況が全国各地で問題になっています。

滝上町も例外ではなく、「この町で安心して暮らし続けるためには、日常の買い物ができる場所をどう守っていくか」が大きな課題になっていました。そんな中で生まれたのが、「町民がつくるスーパー」という新しい挑戦でした。

「たきのうえ市場」運営会社代表・飯尾裕光さん(50)の思い

「たきのうえ市場」を運営する会社の代表を務めるのが、飯尾裕光さん(50)です。

飯尾さんは、地域の買い物環境を守るだけでなく、「スーパーを、地域の人が自然と集まってくる場所にしたい」という思いを強く持って取り組んできました。スーパーというと、商品を買ってすぐに帰るイメージが強いですが、飯尾さんが目指すのはそれだけではありません。

たとえば、

  • 地元で採れた農産物や加工品を並べることで、町民が互いの顔を思い浮かべながら買い物できる場にする
  • 店内にちょっと腰を掛けられるスペースや、掲示板などを設けて、情報交換やおしゃべりが生まれるようにする
  • 季節の行事や小さなイベントを開いて、世代を超えた交流が自然に生まれるようにする

といった工夫を重ね、「人の輪が広がる拠点」としての役割を意識してきました。

飯尾さんにとって、「たきのうえ市場」は単なる事業ではなく、滝上町で暮らす人たちが安心して笑顔で暮らし続けるための「インフラ」であり、未来へバトンを渡していくための大切な土台となる場所でもあります。

スーパーが「人の輪」を生む3つの理由

なぜスーパーが「人の輪」を生む拠点になりうるのでしょうか。滝上町の取り組みから見えてくるポイントを、3つに分けて整理してみます。

1. 日常的に必ず足を運ぶ場所だから

スーパーは、日々の食卓を支える場所です。多くの人が、週に何度も足を運びます。そのため、町民同士が自然に顔を合わせやすく、

  • 「久しぶり、元気だった?」といった何気ないあいさつ
  • 「この野菜どうやって料理してる?」といった会話
  • 「今度の町の行事、行く?」という情報交換

など、小さなコミュニケーションが積み重なっていきます。

こうした日常のやりとりは、一見ささいに見えて、実は「孤立を防ぐ」「困ったときに助け合える関係を育てる」といった意味で、とても大きな力を持っています。

2. 地元の人・物・情報が集まる「ハブ」になれるから

「たきのうえ市場」には、地元の生産者による野菜や加工品などが並び、町内の事業者や団体が関わる商品も置かれています。これは単に品ぞろえの工夫というだけでなく、

  • 地元の生産者にとっての販路
  • 住民にとっての「地元を知る窓口」
  • 地域の取り組みやイベント情報を知るきっかけ

にもなります。

商品を通じて「この野菜は○○さんの畑のもの」「このお菓子はあそこの工房で作られている」といったように、人と人が間接的につながることも多くなります。その積み重ねが、「この町にはこんなに頑張っている人がいる」という誇りにもつながっていきます。

3. 工夫次第で「交流スペース」にもなるから

近年、全国的にも「コミュニティスペースを備えたスーパー」や「カフェ併設の商店」など、買い物と交流を組み合わせた場づくりが増えてきました。

滝上町の「たきのうえ市場」も、スーパーの機能にとどまらず、

  • 小さなイベントやワークショップ
  • 地域のサークルやボランティア団体の活動紹介
  • 子どもから高齢者まで集まれる企画

などを通じて、世代や立場を越えたつながりが生まれる場所になることを目指しています。

スーパーに少し立ち寄る感覚で参加できるからこそ、「特別な場」ではなく「日常の延長」のように地域の輪が広がっていくのが大きな特徴です。

NHK ONE配信で広がる「地域の挑戦」の共有

今回、NHKの配信サービス「NHK ONE」で「たきのうえ市場」の取り組みが紹介されていることで、滝上町の外にいる人たちも、この挑戦の様子を知ることができるようになりました。配信は6月18日までとされており、期間中であれば、北海道の外に住む人でも視聴することができます。

こうした配信の意義は、単に「良い話を紹介する」ことだけではありません。

  • 同じような課題を抱える全国の自治体や地域の人たちにとってのヒントになる
  • 地方で暮らす人たちの工夫や知恵が共有され、新たな連携が生まれるきっかけになる
  • 都市部に住む人たちが、地方のリアルな暮らしや課題を知る手がかりになる

といった広がりも期待されています。

特に、「買い物の場をどう守るか」「地域のつながりをどう再生するか」といったテーマは、多くの地域に共通する大きな課題です。滝上町の「町民がつくるスーパー」の挑戦は、その一つの具体的な答えとして、多くの人にとって参考になる事例といえます。

町民参加が生む「続けられる仕組み」の大切さ

地方での新しい取り組みは、「始めること」以上に「続けていくこと」が大きなハードルになります。人口が少ない中での人手や資金の確保、運営の負担、世代交代など、さまざまな課題がつきまといます。

だからこそ、滝上町の「たきのうえ市場」のように、最初から「町民が関わり、支え合うこと」を前提にした仕組みをつくることが大切になってきます。

たとえば、

  • 町民の声を丁寧に聞きながら品ぞろえやサービスを調整していく
  • ボランティアやサポーターとして関わる人を増やしていく
  • 地元の事業者や生産者と連携し、互いに支え合う関係をつくる

といった形で、「このスーパーはみんなで守るもの」という意識が広がるほど、持続可能性は高まっていきます。

運営会社の代表である飯尾裕光さんの存在はもちろん重要ですが、それを支える多くの町民の関わりこそが、「町民がつくるスーパー」の土台だといえます。

滝上町から見える、地域と暮らしの未来

滝上町の「たきのうえ市場」と、その取り組みを伝えるNHKの「ほっとニュース北海道」、そして「NHK ONE」での配信。この一連の流れは、地方の小さな町で生まれた挑戦が、メディアを通じて広く共有され、全国の人たちに届いていくプロセスでもあります。

私たちが暮らす地域の未来は、行政や一部の企業だけに委ねられるものではなく、

  • 日々その地域で暮らす住民
  • 地域の中小事業者や生産者
  • 外から応援してくれる人たち

といった多様な人たちが、少しずつ力を出し合うことで形づくられていきます。

「町民がつくるスーパー」は、そのことを分かりやすく示す象徴的な存在です。

毎日の食卓を支える買い物の場が、同時に、人と人が支え合う関係を育てる場にもなっている——滝上町の「たきのうえ市場」は、そんな新しい地域のかたちを教えてくれます。

NHKの配信を通じて、この取り組みを知った人の中から、「自分の地域でも何かできないか」と考えはじめる人が出てくるかもしれません。その小さな一歩が、また別の町の未来を少しずつ変えていくきっかけになるでしょう。

滝上町のスーパーを拠点に広がる「人の輪」は、これからも続いていきます。その行方を、引き続き見守っていきたいところです。

参考元