欧州の新車市場で何が起きている?EV急増と中国ブランド躍進が示す大きな変化
欧州の自動車市場で、新車を取り巻く状況が大きく変わりつつあります。電気自動車(EV)の販売が「目覚ましい」勢いで伸びる一方、従来強かったハイブリッド車(HEV)の存在感には変化の兆しが見られます。また、欧州で販売される新車の約10台に1台が中国ブランド車となるなど、中国メーカーの台頭も鮮明になっています。この動きは、欧州が掲げてきた「内燃機関車の新車販売禁止」方針をめぐる議論にも影響を与えています。
欧州主要5カ国でEVが大幅増加:新車市場の中心へ
欧州では、主要国を中心にEVの新車販売が大幅に増加しています。欧州自動車工業会(ACEA)のデータによると、EU・英国・EFTAを合わせた新車登録台数は、2026年春時点で前年同月比2桁増となっており、その成長を牽引しているのがEVです。
特に、ドイツやフランス、イタリアなど欧州主要5カ国では、バッテリー式電気自動車(BEV)の登録台数が前年を大きく上回り、「大幅増」と言える伸びを示しています。
2026年4月の欧州全体の新車販売では、パワートレイン別の販売台数をみると、BEVが前年同月比約38%増、プラグインハイブリッド(PHEV)も約20%増と、いずれも高い伸びを記録しました。
これは、2025年の時点でヨーロッパ全体におけるEV(BEV)の普及率が約19.5%に達していた流れを、さらに加速させる形となっています。
また、2026年3月のデータでは、1月と2月に15%増加していたBEVの登録台数が一気に42%急伸し、内燃機関車(ガソリン・ディーゼル車)の販売が減少するなかで、EVが新車市場の中心的存在になりつつあることが明らかになりました。
燃料価格の上昇や環境意識の高まりにより、消費者が内燃機関車を敬遠し、EVへの乗り換えを進めている可能性が指摘されています。
ハイブリッド車(HEV)の動き:高水準維持から変化の兆しへ
これまで欧州では、EVだけでなくハイブリッド車(HEV)も新車市場の中核として高い販売比率を維持してきました。
政策面でも、EVへの急速な一本化ではなく、HEVやプラグインハイブリッドを含む「マルチパスウェイ」と呼ばれる多様な選択肢を重視する動きが見られていました。
ところが、最新の販売データでは、EVやPHEVが大幅に伸びる一方で、HEVの増加ペースにはやや変化も見られます。2026年4月時点では、HEV(マイルドハイブリッドを含む)の販売台数も前年同月比約12%増とプラス成長ではあるものの、EVやPHEVと比べると伸び率はやや控えめです。
一部の報道では、「欧州主要5カ国でEVが大幅増、HEVが減少」とされており、これまで高水準を維持してきたHEVの比率が、EVの急増によって相対的に低下している可能性も指摘されています。
つまり、新車市場全体ではまだHEVも重要な選択肢であり続けているものの、その主役の座が徐々にEVへと移りつつある、という構図が見えてきます。これが今後の政策やメーカーの戦略にどう影響するかが注目されています。
欧州で中国ブランド車が好調:新車の10台に1台が中国車
欧州の新車市場のもうひとつの大きな変化が、中国ブランド車の躍進です。
最新の統計や報道によれば、欧州で販売される新車の約10台に1台が中国ブランド車となっており、中国メーカーの存在感が急速に高まっています。中国メディアは、この数字を「欧州市場での中国車の売れ行き好調の証」として取り上げています。
中国メーカーは、電気自動車(EV)分野で強い競争力を持っており、価格競争力の高いEV新車を欧州市場に投入することで、EVシフトが進む欧州の需要を取り込んでいます。
たとえば、世界的EVメーカーとなった中国のBYDは、複数のEVモデルを欧州に展開しており、テスラと並んで「売れているEV」として名前が挙がるほどです。
こうした中国ブランド車の伸長は、欧州の自動車産業にとって大きなプレッシャーとなっています。
欧州メーカーは、既存のガソリン車やディーゼル車、HEVに加え、競争力の高いEVラインナップの強化を迫られており、新車開発や価格戦略を再構築する必要に直面しています。
同時に、貿易面や安全基準の観点から、中国車の急増をどう位置づけるかは、各国政府やEU全体の重要な課題になっています。
欧州委員会が語る「EV販売の目覚ましい伸び」と内燃機関車禁止見直しへの影響
欧州連合(EU)は、2035年までに内燃機関車の新車販売を原則禁止する方針を掲げてきました。これは、気候変動対策としての脱炭素化を加速させるための象徴的な政策であり、世界の自動車産業にも大きなインパクトを与えていました。
しかし、2024年から2025年初めにかけて、世界のEV市場や政策環境は大きな転換期を迎えました。
一部の国や地域では、EVの販売鈍化やインフラ整備の遅れ、価格の高さなどが課題となり、「内燃機関車の新車販売禁止」方針の見直しを求める声が強まっていたのです。
そうしたなかで、欧州委員会の関係者は、欧州におけるEV販売が「目覚ましい」伸びを示していることを強調し、この勢いを踏まえると、2035年の内燃機関車新車販売禁止に対する見直し圧力は弱まりつつある、との認識を示しました。
つまり、EVの普及が想定以上のペースで進んでいることで、「本当にEVに置き換えられるのか」という懸念が相対的に小さくなっているという見方です。
EUは現在、従来方針を維持しつつも、EV市場をさらに活性化させる新たな制度設計を模索しています。
たとえば、充電インフラの拡充やバッテリーのリサイクル制度、再生可能エネルギーとの連携強化など、EVを単なる「新車」ではなく、持続可能なモビリティの柱として位置づけるための政策が検討されています。
新車市場から見える「二極化」と今後の課題
世界全体でみると、EV市場は2026年も拡大傾向を維持していますが、その伸び方には地域による二極化が見られます。
中国やASEAN諸国、欧州ではEV普及率が伸びる一方、米国や日本では普及が停滞気味という構図です。
欧州に限っていえば、EVが新車市場で急成長し、中国ブランドEVも存在感を増すなど、競争が激化しています。
一方で、インフラ整備、電力需給、バッテリー製造といった周辺分野での課題は依然として大きく、これをどう乗り越えるかが今後の焦点になります。
また、HEVやPHEVなど多様なパワートレインをどう位置づけるかも重要な論点です。
EVが伸びるからといって、すべてを一気にEVに置き換えるのではなく、各国のエネルギー事情やインフラ状況に合わせて、段階的な移行を行う必要があるとの見方も根強くあります。
欧州の「内燃機関車新車販売禁止」方針も、こうした現実とのバランスを取りながら具体化していくことが求められています。
欧州の新車市場が示すもの:消費者とメーカーの選択肢の変化
欧州の新車市場の最新動向から見えてくるのは、消費者の選択肢が大きく変化しているという事実です。
かつては「ガソリン車かディーゼル車か」という選択が中心でしたが、現在では、EV、PHEV、HEV、さらには中国ブランド車や欧州伝統メーカーの新型EVなど、選択肢が一気に広がっています。
この変化は、単に車種が増えただけではありません。
環境負荷、燃料コスト、充電インフラ、将来の規制、ブランドイメージなど、新車購入の際に考慮すべき要素が増えていることを意味します。
欧州委員会や各国政府の政策は、こうした多様な要素を踏まえながら、市場が持続可能な形で成長するよう誘導していくことが求められています。
一方で、自動車メーカーにとっても、この状況は大きな挑戦です。
EVシフト、中国メーカーとの競争、政策変更への対応など、複数の課題に同時に向き合いながら、新車ラインナップを再構築しなければなりません。
欧州主要5カ国でのEV大幅増加や中国ブランド車の台頭は、そうした変化の「現在地」を示す象徴的な出来事だと言えるでしょう。
今後も、欧州の新車市場は環境政策、エネルギー状況、技術革新、国際競争などさまざまな要因によって揺れ動き続けると考えられます。
現時点で明らかなのは、EVが新車市場の中心的存在となりつつあり、中国ブランド車がその中で重要なプレーヤーとして存在感を増しているということです。
そして、この流れが、2035年以降の「内燃機関車なき新車市場」を現実のものにできるかどうかを左右することになるでしょう。



