「LDLコレステロールは高いと危険」は本当? 和田秀樹氏が語る“コレステロール新常識”

LDLコレステロール(いわゆる「悪玉コレステロール」)は、健康診断の結果票で多くの人が気にする項目です。
これまでは「LDLコレステロールは低いほどよい」「高いと心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がる」と信じられてきました。

しかし近年、「少々高めのコレステロール値の人のほうが長生きしている」という研究結果や、「薬でLDLコレステロールを下げても、必ずしも動脈硬化が改善するとは限らない」という専門家の指摘が注目を集めています。
精神科医で高齢者医療にも長く携わってきた和田秀樹さんも、その一人です。

この記事では、

  • LDLコレステロールの基準値と、値が高くなる・低くなる主な原因
  • 「少々高い人ほど長生き」という研究が示す意味
  • 和田秀樹さんが語る「コレステロールと健康・薬との付き合い方」

について、やさしい言葉で整理していきます。健康診断の数値に一喜一憂する前に、「コレステロールをどう考えればいいのか」を落ち着いて見直すきっかけになれば幸いです。

LDLコレステロールの基準値とは?

一般的に使われているLDLコレステロールの基準

健康診断や人間ドックの結果に書かれている「LDLコレステロール」は、血液1デシリットルあたりの値(mg/dL)で示されます。
日本の多くのガイドラインでは、おおむね次のような目安が用いられています(年齢や病気の有無によって細かい基準は異なります)。

  • 正常~境界域の目安:およそ 70~139 mg/dL 前後
  • 高いとされる目安:140 mg/dL 以上
  • 非常に高い:160 mg/dL 以上など、より厳しく区分されることもある

ただし、これはあくまで「心血管病(心筋梗塞や狭心症など)のリスク管理」のために決められた目安であり、「この値を超えたら必ず病気になる」という線引きではありません。
さらに、糖尿病やすでに心筋梗塞を起こしたことがある人などは、LDLの目標値がより低めに設定されます。一方で、基礎疾患がなく、年齢も高めの人では、同じ値でもリスクの受け止め方が変わってきます。

「悪玉」「善玉」という名前の誤解

LDLコレステロールは「悪玉」、HDLコレステロールは「善玉」と呼ばれることがあります。
しかし、コレステロールそのものは、ホルモンの材料になったり、細胞膜を作る材料になったりと、人間の生命維持に欠かせない物質です。

「悪玉」「善玉」はあくまで運び役の違いを説明するための、分かりやすい呼び方にすぎません。

  • LDL:肝臓から全身にコレステロールを運ぶ役目
  • HDL:余ったコレステロールを回収して肝臓へ戻す役目

このバランスが崩れ、LDLが極端に多すぎる・HDLが少なすぎるなどの状態が長く続くと、動脈硬化のリスクが上がると考えられてきました。
しかし後述するように、「LDLが少し高い程度の人」がむしろ長生きしているというデータもあり、単純に「低いほどよい」とは言えない状況が見えてきています。

LDLコレステロールが高くなる原因・低くなる原因

LDLコレステロールが高くなりやすい主な要因

LDLコレステロールが高めになる背景には、いくつかの生活習慣や体質が関わります。

  • 食生活の影響
    揚げ物・脂身の多い肉・バター・生クリーム・市販の洋菓子など、飽和脂肪酸を多く含む食品をとり過ぎると、LDLが上がりやすくなります。また、トランス脂肪酸を多く含むスナック菓子やマーガリンも影響すると言われています。
  • 運動不足
    運動不足は、LDLを高めるだけでなく、HDL(善玉)を下げてしまう要因にもなります。軽い有酸素運動や筋力トレーニングは、HDLを増やし、脂質のバランスを整えるうえでプラスにはたらきます。
  • 肥満、とくに内臓脂肪型肥満
    お腹まわりに脂肪がつく「内臓脂肪型肥満」は、LDLを上げ、中性脂肪も増やしやすいとされています。いわゆる「メタボリックシンドローム」と深く関係しています。
  • 喫煙・多量飲酒
    喫煙はHDLを下げ、血管にダメージを与えます。アルコールも量が多過ぎると中性脂肪を増やし、脂質バランスを崩しやすくなります。
  • 遺伝的要因(家族性高コレステロール血症など)
    親や兄弟姉妹にもコレステロールが高い人が多い場合、遺伝的にLDLが上がりやすい「家族性高コレステロール血症」などの可能性もあります。若い頃から非常に高い値(たとえば 180~200mg/dL を大きく超えるなど)が続く場合は、専門医の診察が重要になります。

LDLコレステロールが低くなりすぎる要因

一方で、LDLコレステロールが低いと「よいことだけ」のように思われがちですが、極端に低すぎる状態は、別のリスクにつながる可能性も指摘されています。

  • 過度なダイエットや栄養不足
    食事量を極端に減らしたり、脂質を徹底的に避けるようなダイエットを続けると、コレステロール全体が低くなり過ぎることがあります。ホルモンの材料が不足すると、体調不良やメンタル面の不調につながるおそれもあります。
  • 肝機能障害などの病気
    コレステロールは主に肝臓で作られます。肝硬変など、重い肝臓病ではむしろコレステロールが低く出ることがあり、「低ければ安心」とは言い切れません。
  • コレステロールを下げる薬の飲み過ぎ
    スタチンなどの脂質異常症治療薬は、LDLをしっかり下げる一方で、必要以上に厳しく目標を設定すると、かえって身体に負担になるのではないかという議論もあります。とくに高齢者では、「どこまで下げるか」を慎重に考える必要があるとされています。

ここからは、「少々高めのコレステロール」や「薬で下げること」の是非について、研究や専門家の意見を見ていきます。

「少々高いコレステロールの人ほど長生き」という研究

東大名誉教授が紹介する「死亡率が最も低いコレステロール値」

ニュース内容では、東京大学名誉教授が「コレステロール値が少々高い人のほうが長生きしている」と紹介しています。これは、国内外で行われてきた疫学研究(大勢の人の健康データを長期間追跡する研究)にもとづく話です。

多くの研究では、

  • 総コレステロールやLDLコレステロールが極端に低い
  • 逆に非常に高い

で死亡率が高く、中間からやや高めのゾーンにいる人たちの死亡率が最も低い、という「Jカーブ」や「Uカーブ」と呼ばれる結果が報告されています。

つまり、「低ければ低いほどいい」という一直線の関係ではなく、

  • 低すぎると、がん・感染症・うつ状態など、別の病気や不調のリスクが上がる可能性
  • 高すぎると、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが上がる可能性

があり、その中間~やや高めのゾーンが、総合的な死亡率としては低くなる傾向がある、という見方です。

東大名誉教授が紹介した「死亡率が最も低い数値」も、従来の基準よりやや高めの範囲にあることが多く、特に高齢者では「少々高め」くらいを過度に心配しないほうがよいのではないか、という議論につながっています。

「嫌われ者」のコレステロールは本当に悪者なのか

コレステロールは長らく「動脈硬化の元凶」のように扱われてきましたが、本来は体に不可欠な脂質であり、免疫機能やホルモンバランス、脳の働きなどにも関係しています。

先の研究結果からも、「コレステロールは低いほどよい」という単純な考え方は、少なくとも年代や体質によって見直す必要がありそうです。
特に70代、80代と高齢になるほど、

  • 痩せすぎや栄養不足のほうが、むしろ死亡リスクを高める
  • 少々コレステロールが高い人のほうが、体力・免疫力が保たれている

といったデータも背景にあります。

和田秀樹さんが語る「コレステロールと薬」の関係

「薬で値を下げても、動脈硬化が改善するとは限らない」

婦人公論.jp の記事で和田秀樹さんは、「嫌われ者の〈コレステロール〉値が高い人のほうが健康って本当?」というテーマで、コレステロールと薬の付き合い方について語っています。

和田さんが強調するポイントのひとつは、

「薬で数値をきれいに下げても、必ずしも動脈硬化(血管の老化)が改善するとは限らない」

という点です。

つまり、

  • 血液検査の「LDLコレステロール」の数字だけを見て、一律に「低いほど良い」と考えるのは危険
  • 実際には、血圧・血糖値・喫煙習慣・肥満・家族歴など、全体のリスクの中でコレステロール値を位置づける必要がある

と指摘しています。

もちろん、すでに心筋梗塞を起こしたことがある人や、糖尿病をはじめとしたハイリスクの患者さんでは、LDLをしっかり下げることのメリットが大きいというデータもあり、薬が不要だという話ではありません。
和田さんが問題にしているのは、

  • 軽度の高コレステロールで、他にリスクがあまりない人
  • とくに高齢者で、「年齢なり」の少々高めの数値で安定している人

まで、一律に「基準を少しオーバーしているから薬で下げましょう」とする風潮です。

数値だけを追いかける医療への疑問

和田秀樹さんは、長年高齢者医療に携わる中で、「数値を正常範囲に押し込むことだけを目的とした医療」への疑問を繰り返し発信してきました。

  • 血圧は年齢とともにある程度上がるのが自然であり、無理に若い人と同じレベルまで下げると、かえって転倒や脳への血流低下を招くことがある
  • 同様に、コレステロールも高齢者では「少々高め」くらいがむしろ元気な人に多く見られる

といった考え方です。

婦人公論.jp の記事の中でも、

  • 「薬で数字だけを合わせても、その人が本当に健康になっているとは限らない」
  • 「食事・運動・睡眠など、生活習慣全体を見直しつつ、その人に合った“ちょうどいい”コレステロールの範囲を考えることが大事」

といった趣旨のメッセージが語られています。

「少々高め」のコレステロールとどう付き合うか

すぐに薬に頼る前に見直したいポイント

健康診断で「LDLコレステロールが少し高め」と言われると、不安から「とにかく薬で下げたい」と考えてしまいがちです。
しかし、東大名誉教授や和田秀樹さんが指摘するように、「少々高め」ゾーンの人たちが、必ずしも短命なわけではありません。

薬の前に、次のポイントを落ち着いて振り返ってみることも大切です。

  • 他のリスク要因はどうか
    高血圧、糖尿病、喫煙歴、肥満、家族歴(親族に早く心筋梗塞になった人がいるか)などを総合的に見て、自分の心血管リスクがどの程度かを医師と確認しましょう。
  • ライフスタイルの改善余地はあるか
    ちょっとした工夫でも、LDLが下がったり、HDLが上がったりすることがあります。例えば、揚げ物の頻度を減らす、バターやラードをオリーブオイルに変える、週2~3回の軽い運動を続ける、禁煙するなどです。
  • 年齢と体力を踏まえた「ちょうどよさ」
    70代以降の高齢者では、「食事を楽しみつつ、やせ過ぎない」「適度な脂質も取りつつ、筋力と体重を維持する」ことのほうが、総合的な健康にとって重要な場合もあります。

こうした点を踏まえた上で、医師と相談しながら、「薬を使うか、使うとしてどの程度まで下げるのか」をじっくり話し合うのが望ましいといえます。

コレステロールを「敵」と見なさない考え方

コレステロールに関する報道は、どうしても「高コレステロール=悪」「薬で下げれば安心」といった単純なメッセージになりがちです。
しかし、今回紹介したニュースや和田秀樹さんの発言から見えてくるのは、次のような視点です。

  • コレステロールは本来、体に必要な物質である
  • 健康にとって重要なのは、『数値を低くすること』よりも、『全体のバランスを整えること』
  • 特に高齢者では、「少々高め」のコレステロールがむしろ体力維持に役立っている可能性もある

LDLコレステロールの基準値は、あくまで「病気のリスクを予測するための目安」であり、「それを1mg/dLでも下回れば下回るほど素晴らしい」という競争のようなものではありません。

自分の年齢、家族歴、生活習慣、もともとの体質などをふまえながら、「自分にとっての適正なゾーン」を見つけていくことが、これからのコレステロールとの上手な付き合い方だと言えるでしょう。

まとめ:数字より「自分の体」と対話する姿勢を

今回取り上げたニュースでは、

  • LDLコレステロールの基準値と、その値が上下する原因
  • 「少々高い人ほど長生きしている」という研究データ
  • 「薬で値を下げても、動脈硬化が必ずしも改善するとは限らない」という和田秀樹さんの指摘

が紹介されていました。

健康診断の結果は、あくまで「自分の体と向き合うきっかけ」をくれるものです。
大切なのは、数字だけを見て一喜一憂するのではなく、

  • 生活全体を振り返る
  • 医師とよく相談して、自分にとってのリスクとメリットを整理する
  • 年齢や体力に合った「ちょうどいい」目標を一緒に考えてもらう

という姿勢です。

和田秀樹さんが発する「数値主義への疑問」は、コレステロールだけでなく、血圧や血糖値を含めた現代医療全体への問いかけでもあります。
数字に振り回されず、自分の心と体の声にも耳を傾けながら、長く元気に過ごすためのバランスを探っていきたいものです。

参考元