米国の住宅事情に変化の兆し?BofA調査で分かった「買う vs 借りる」のいま
アメリカの住宅市場で、「家は買うべきか、それとも借りるべきか」という長年のテーマに、少し変化の兆しが見え始めています。ここ数年、高金利や物件価格の高止まりから「買いたいけれど買えない」という声が強くなっていましたが、最新の調査では、再び「持ち家志向」がじわりと回復していることが分かりました。一方で、現実には高いコストが理由で賃貸を選ぶ人も依然として多い状況です。
本記事では、米銀バンク・オブ・アメリカ(Bank of America=BofA)の調査結果などをもとに、「アメリカ人の住まいの意識がどう変化しているのか」を、やさしい言葉で整理してお伝えします。
バンク・オブ・アメリカの調査とは?「買いたい派」が3年ぶりに優勢に
ニュースによると、BofAが実施した最近の消費者調査で、「買うほうがいい」と考える人が、「借りるほうがいい」と考える人を上回る状況になったと報じられています。これは2023年以来、約3年ぶりの変化とされています。つまり、ここ数年、「賃貸のほうが合理的」と感じる人が多かった流れが、少しずつ揺り戻されているということです。
この背景には、次のような意識があると考えられます。
- 長期的な資産形成:ローン返済は負担でも、完済後は「自分の資産」になるという安心感
- 家賃の上昇リスク:インフレなどで家賃が上がり続ける不安から、「固定金利の住宅ローンで支出を長期的に安定させたい」というニーズ
- 家族構成の変化:結婚・出産などライフステージの変化に合わせて、落ち着いた持ち家を求める動き
これらは日本でもよく聞かれる理由であり、「持ち家への憧れ」自体は、アメリカでも根強く残っていることがうかがえます。
それでも「買えない」人が多い現実:高コストが大きな壁に
一方で、別のニュースでは「高いコストが原因で、多くのアメリカ人が購入ではなく賃貸を選ばざるを得ない」という現実も報じられています。ここでいう「コスト」とは、単に物件価格だけではありません。
- 住宅ローン金利(モーゲージ金利)の上昇
- 物件価格そのものの高止まり
- 固定資産税や保険料、修繕費など、所有に伴う継続的な支出
- 頭金を貯めることの難しさ(生活費や教育費の増加など)
これらが重なり、「買いたい気持ちはあるけれど、いまの収入や貯蓄では厳しい」と感じる人が多いのです。その結果、心理的には「持ち家がいい」と思いつつ、実際の行動としては賃貸を選ぶというギャップが生まれています。
つまり、BofAの調査結果が示しているのは、「みんなが急に買い始めた」という話ではなく、意識のうえで『買うほうが有利だ』と考える人が再び増えつつある、という点です。行動に移せるかどうかは、また別の問題として残っています。
なぜ今、「買いたい」という意識が戻ってきたのか
では、なぜここに来て「買いたい派」が増えているのでしょうか。ニュースや各種データから読み取れる要因を、分かりやすく整理してみます。
1. インフレと家賃上昇への不安
アメリカではここ数年、物価上昇が大きなテーマになっており、家賃も上昇傾向が続いてきました。賃貸は、契約更新のたびに家賃が見直されるケースも少なくありません。そのため、
- 「毎年のように家賃が上がるかもしれない」
- 「将来の生活費の見通しが立てにくい」
と感じる人が増えました。これに対して、固定金利の住宅ローンで家を購入すると、返済額を長期的に読みやすいというメリットがあります。この「将来の安心感」が、持ち家志向を押し上げていると考えられます。
2. 資産としての住宅への評価
長期的に見れば、多くの地域で住宅価格は一定の上昇を続けてきました。そのため、「家賃を払い続けるより、住宅ローンを払って資産にしたい」という考え方が根強く存在します。
特に、将来の老後資金や退職後の生活を意識する世代にとっては、「ローン完済後も住み続けられる持ち家」は、大きな安心材料です。この点は、日本の持ち家志向とも似通っています。
3. 住宅市場の「慣れ」と期待
高金利や高価格の状態が一定期間続くと、人々は次第にその水準に「慣れて」きます。
- 「金利が下がるまで待っても、いつになるか分からない」
- 「この先も価格が大きく下がらないなら、早めに買ったほうがいいのでは」
と考える人も出てきます。こうした心理が、「いずれ買うなら、そろそろ本気で検討しよう」という動きにつながっている可能性があります。
「買いたい人」と「買えない人」が同時に増えている、いびつな状況
今回のニュースを総合すると、アメリカの住宅市場では次のような、ややいびつな構図が見えてきます。
- 意識としては持ち家志向が回復し、「買うほうがいい」と考える人が増えている
- しかし、実際には高コストのため賃貸を選ぶ人も多い
- 結果として、「買いたいが買えない人」が一定数存在する
このギャップは、主に所得格差や地域差として現れる可能性があります。収入が高く、頭金を用意できる層は、高金利・高価格の中でも購入に踏み切れる一方、収入が伸び悩む層は、意欲だけではどうにもならず、賃貸に留まらざるを得ません。
このような構造は、日本を含む他の先進国でも共通する課題となりつつあり、「買える人」と「買えない人」の差が、将来の資産形成の差にもつながっていくことが懸念されています。
日本とアメリカの違いと共通点
日本の読者にとって気になるのは、「この動きは日本の住宅市場とも関係があるのか?」という点かもしれません。もちろん、金利水準や住宅ローンの仕組み、人口動態などが違うため、単純な比較はできません。ただし、いくつかの共通点と相違点は見て取れます。
共通点
- 持ち家志向の根強さ:日本でも「いずれは持ち家を」という意識は依然として強いと言われます。
- 住宅コストの負担感:物件価格やリフォーム費用、税金など、住まいにかかるコストの重さは日米共通の課題です。
- 家賃 vs ローンの葛藤:「家賃を払い続けるのはもったいない」という感覚と、「ローンは怖い」という感覚がせめぎ合っている状況もよく似ています。
相違点
- 金利水準:アメリカは近年高金利が続き、住宅ローン負担が重くなっています。一方、日本は長らく超低金利が続いており、ローン金利の負担感は相対的に小さいと言えます。
- 人口動態と需要:日本は人口減少・空き家問題が進行しており、地域によっては住宅価格が伸び悩むケースもあります。アメリカは地域差が大きいものの、成長エリアでは需要が強く、価格が上昇しやすい傾向があります。
こうした違いを踏まえると、「アメリカで持ち家志向が回復したから、日本も同じになる」といった単純な読み替えはできません。ただ、「インフレや家賃上昇への不安から、住まいを通じて将来の生活を安定させたい」という感覚は、国を問わず共通していると言えるでしょう。
これから住まいを考える人へのヒント
今回の米国のニュースは、日本でこれから住まいを考える方にとっても、いくつかのヒントを与えてくれます。
- 「買うか借りるか」は、損得だけでは決められない
短期のコスト比較だけでなく、「どの地域に、どれくらいの期間住むか」「将来の家族構成」など、ライフプランも含めて考える必要があります。 - 金利や物件価格の「先行き」は誰にも読めない
「もっと条件がよくなるまで待とう」と思い続けると、いつまでも決断できないこともあります。情報を集めつつ、「自分たちが無理なく払える範囲か」を軸に考える姿勢が大切です。 - 賃貸にもメリットはある
「買うほうが得」という雰囲気に流されがちですが、賃貸には住み替えの柔軟性や、修繕リスクを負わなくてよいなどの利点もあります。どちらが良い・悪いではなく、「自分のライフスタイルに合っているか」で考えることが重要です。
BofA調査が映し出す、アメリカ人の本音
BofAの調査結果は、アメリカ人の「本音」が少し見えてくる内容でした。
- 本当は家を買いたい
- でも、現実的にはお金の問題が大きい
- それでも、「将来の安定」や「資産形成」を考えると、やはり持ち家に魅力を感じる
こうした揺れる気持ちは、日本で住まいを考える人の多くにも共通するものかもしれません。ニュースを通じて海外の住宅市場を知ることは、自分自身や家族の将来について考える良いきっかけにもなります。
住まいについて悩んでいる方は、「アメリカでは今こんな変化が起きているんだな」と参考にしつつ、自分たちの収入や仕事、家族、暮らしたい地域などを冷静に見つめ直して、「我が家にとっての最適解」を探す時間を持ってみるのも良いかもしれません。



