「外国人庁」創設を訴える福岡市長 増え続ける日本語指導が必要な子どもたちと、国に求められる役割

福岡市の高島宗一郎市長が、外国にルーツを持つ子どもたちの増加を受けて、外国人政策を一元的に担う新たな組織「外国人庁」の創設を国に強く求めています。背景には、日本語指導が必要な児童生徒の数が全国的に急増し、地方自治体だけでは対応が追いつかなくなっているという、深刻な現状があります。

福岡市で増え続ける「日本語サポート」が必要な子どもたち

福岡市では、外国にルーツを持ち、日本語の基礎的な学習に個別の支援が必要な児童・生徒が年々増えています。市が行っている「子ども日本語サポートプロジェクト」では、日本語の基礎や日常生活で使う言葉を教員などが個別指導する取り組みを続けてきましたが、この支援を受けた子どもの数は、わずか10年あまりで大きく膨らんでいます。

市教育委員会の報告によると、2025年度に日本語サポートを受けた児童・生徒は792人で、これは2015年度の約2.8倍にあたる人数です。この数字は、福岡市における外国ルーツの子どもたちの増加と、日本語支援ニーズの高まりを端的に示しています。

福岡市長は定例記者会見で、この状況について「外国にルーツを持ち、基礎的な日本語の個別指導が必要な福岡市内の児童・生徒数が増えている」と述べるとともに、「全国的にこの問題は大きくなっていく」と、先行きへの強い危機感を示しました。

全国でも15年で2.5倍 日本語指導が必要な子どもは8万人超

福岡市だけでなく、日本全国でも、日本語指導が必要な児童生徒の増加が顕著です。文部科学省の調査によれば、日本語による学習に十分な能力がなく、特別な指導が必要とされる児童生徒の数は、この15年ほどで約2.5倍に増えており、その数は8万4,759人に達しています(公立学校ベース)。この子どもたちは全国の公立学校の約4割に在籍しているとされ、都市部だけでなく地方の学校にも広がっているのが特徴です。

こうした子どもたちの中には、日本語がほとんどわからないまま日本の学校に通い始めるケースも少なくありません。教室での授業内容が理解できないだけでなく、友だちとのコミュニケーションや学校生活のルールがわからず、孤立してしまうリスクも大きくなります。

学校現場では、教員が通常の授業に加えて、日本語の個別指導や通訳的な役割を担うこともあり、負担が重くなっています。教育委員会や自治体が非常勤講師や支援員を配置して対応している地域もありますが、専門的な人材は不足しており、地域ごとの支援の「ばらつき」も課題になっています。

福岡市長が提案する「外国人庁」とは何か

こうした状況を踏まえ、高島福岡市長は、外国人に関する政策が現在は複数の省庁に分かれていることを問題視しています。出入国管理は法務省、労働関係は厚生労働省、教育は文部科学省、地域での生活支援や医療、福祉は自治体と、それぞれ所管が分かれているため、現場からは「どこに相談すればよいかわからない」「施策が縦割りでつながっていない」といった声が上がっています。

高島市長は23日の会見で、「外国人に対する政策は国の管轄がばらばらで、現場の地方自治体任せになっている」と述べ、国全体としての戦略や責任の所在が不明確になっていると指摘しました。そのうえで、「総量としてどれくらいの人が入ってくることに耐えられるのか、教育や自治体サービスはどうするのかを、統括する省庁が必要ではないのか」と提案し、外国人政策を一元的に担う「外国人庁」の創設を求めています。

福岡市をはじめとする自治体の提言書でも、外国人材の受け入れと共生に関する施策を所管する組織として「外国人庁」の新設が盛り込まれており、国に対して制度づくりや財政支援を強く要望しています。高島市長は、外国人との共生施策が「地方に丸投げ」になっている現状をたびたび批判しており、国レベルでの抜本的な体制整備を訴え続けています。

なぜ今、「プレクラス」が注目されているのか

日本語指導が必要な子どもたちの増加を受けて、国主導での整備が求められているのが「プレクラス」と呼ばれる仕組みです。「プレクラス」は、通常の学級に本格的に参加する前に、日本語や学校生活の基本ルールを集中的に学ぶための特別なクラスやプログラムを指す言葉として使われています。

現在、多くの自治体で日本語教室や取り出し授業などが行われていますが、その内容や時間数、指導者の専門性は地域ごとに大きく異なります。「どの地域に住んでも、一定水準以上の日本語教育が受けられるようにしたい」という思いから、教育の質を全国的に底上げするために、国が主導して「プレクラス」の整備と充実を進めるべきだという議論が高まっています。

プレクラスでは、子どもたちが安心して日本語を学べるように、少人数での丁寧な指導や、母語を活かしながら日本語を伸ばす指導法などが求められます。また、日本語だけでなく、学校生活で必要な基本的ルールや習慣、日本の文化についても学ぶことで、通常学級へのスムーズな移行を目指します。

地方自治体だけでは限界 国に求められる役割

福岡市長が「外国人庁」の必要性を訴えている背景には、地方自治体が行っている努力だけでは、今後予想される外国ルーツの子どもたちの増加に十分対応できないという危機感があります。すでに福岡市では、独自の日本語サポート事業や共生施策を積極的に展開していますが、専門人材の確保や財源の面で、今後も安定して高いレベルの支援を続けるには限界が見え始めています。

高島市長は、外国人材の受け入れと共生は、単に「地方の努力」に任せるのではなく、国が全体の方針を示し、責任を持って支えるべき問題だとしています。とくに教育の分野では、以下のような点で国の関与が重要だとされています。

  • 日本語指導が必要な児童生徒数の実態把握と、将来の見通しに基づく計画づくり
  • プレクラスや日本語教室の全国展開と、指導内容の標準化・質の保証
  • 日本語教育に携わる教員・支援員の養成と処遇改善
  • 自治体や学校への安定的な財政支援
  • 保護者や地域を含めた多言語での情報提供と相談体制の整備

「外国人庁」のような統括機関ができれば、これらの政策を一体的に進めやすくなり、教育、福祉、労働、地域づくりなど、さまざまな分野にまたがる外国人政策を総合的に設計しやすくなるという期待があります。

子どもたちの学ぶ権利をどう守るか

日本語が十分にわからないまま学校に通うことは、子どもにとって大きなストレスになります。授業内容が理解できないと、学習の遅れだけでなく、自己肯定感の低下や不登校などにつながる心配もあります。また、友だちとのコミュニケーションがうまくいかないことで、孤立やいじめのリスクが高まる可能性も指摘されています。

一方で、多くの現場の教員や支援者は、限られた時間や人員の中で、一人ひとりの子どもに寄り添おうと懸命に取り組んでいます。福岡市の「子ども日本語サポートプロジェクト」のように、個別指導を通して子どもたちの成長を支える事例も増えています。しかし、こうした取り組みを全国的に広げ、安定して続けていくためには、制度としての裏付けと、国からの支援が不可欠です。

「日本語指導が必要な子どもがいるのは一部の地域の特別な問題ではなく、いまや全国的な課題であり、これからさらに大きくなっていく」。福岡市長のこの指摘は、日本社会全体が向き合うべき現実を示しています。外国ルーツの子どもたちが、出身や言語にかかわらず、安心して学び成長できる環境を整えることは、日本の将来にとっても大切な投資だと言えます。

外国人政策を統括する「外国人庁」の創設や、国主導によるプレクラスの推進は、そのための大きな一歩となる可能性があります。今後、国会や政府の場で、福岡市長をはじめとする地方からの声をどう受け止め、具体的な制度設計につなげていくのかが注目されています。

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