島津製作所の2製品が「Red Dot Design Award 2026」を受賞 世界が認めた日本のものづくりの力

島津製作所の2つの製品が、世界的に権威のあるデザイン賞「Red Dot Design Award 2026」を受賞しました。精密な材料試験を行う精密万能試験機と、超高速で動きを記録できる高速度ビデオカメラが、そのデザイン性と機能性の高さを評価された形です。

さらに同じく日本企業である日立ハイテク線形加速器システム「OXRAY」や、音楽制作のためのコントローラー「SLAB」も、Red Dotの中でも特に評価の高い「Best of the Best」を受賞しています。工業製品から医療・分析機器、そして音楽制作ツールまで、日本発の多様なプロダクトが世界で認められたニュースです。

Red Dot Design Awardとは?世界が注目するプロダクトデザイン賞

まず、今回の受賞の意味を理解するために、「Red Dot Design Award(レッド・ドット・デザイン賞)」について簡単に整理しておきましょう。

  • ドイツを拠点とする、世界的に権威あるデザイン賞のひとつ
  • プロダクト(製品)デザイン、ブランド&コミュニケーションデザイン、デザインコンセプトなど複数の部門がある
  • 世界中の企業やデザイナーが応募し、国際的な専門家の審査によって受賞作が決まる
  • 機能性・革新性・使いやすさ・美しさなど、総合的な観点で評価される

なかでも「Red Dot: Best of the Best」は、受賞作の中からさらに選び抜かれた、わずかな製品にしか与えられない最高位の賞です。「Red Dotを取るだけでも難しい」とされる中、「Best of the Best」を獲得することは、その分野で世界トップクラスのデザインと認められたことを意味します。

島津製作所とは?分析・計測機器の老舗メーカー

島津製作所は、京都に本社を置く老舗の総合計測機器メーカーです。一般には医療用のCT内視鏡関連装置、理化学研究で用いられる質量分析計クロマトグラフなどの名前で知られています。

  • 創業は19世紀にさかのぼる長い歴史を持つ企業
  • 「科学技術で社会に貢献する」ことを掲げ、医療・環境・産業の分野で多くの機器を提供
  • ノーベル賞受賞者を輩出したことでも知られ、分析技術や計測技術に強みを持つ

実験室の中で使われる機器は、一般の人の目に触れる機会はあまり多くありません。しかし、素材開発や自動車産業、航空宇宙、医療など、さまざまな分野の「裏側」を支えている存在です。今回、そのような産業・研究の現場用機器が世界的なデザイン賞を受賞したという点に、大きな意義があります。

受賞製品1:精密万能試験機 見えない「素材の強さ」を可視化する装置

1つ目の受賞製品は精密万能試験機です。名称だけではイメージしにくいかもしれませんが、これは材料や製品の「強さ」「しなやかさ」「壊れ方」などを調べるための機械です。

たとえば次のような用途があります。

  • 自動車の部品や建築材料が、どれくらいの力で壊れるかを調べる
  • 新しいプラスチックや金属素材の耐久性を評価する
  • 医療用の針やカテーテルなど、精密な部品の強度を確認する

この試験機では、素材やサンプルを挟んで引っ張る・押しつぶす・折り曲げるなどの力を加え、そのときにどの程度変形し、いつ壊れるのかを細かく測定します。それにより、より安全で高品質な製品を設計するための基礎データが得られます。

精密万能試験機が評価されたポイント

研究や産業の現場で使用される装置は、「見た目より性能が大事」と思われがちです。しかし、近年は使いやすさや安全性、設置性、作業者の負担軽減などが強く求められています。今回の精密万能試験機も、以下のような点が評価されたと考えられます。

  • 操作性の高いインターフェース:大型ディスプレイや直感的なメニュー構成により、複雑な試験条件の設定を分かりやすく支援
  • 安全性に配慮したデザイン:試験中の誤操作や思わぬ接触を防ぐカバーやレイアウト
  • 省スペース性:研究室の限られたスペースでも設置しやすいコンパクトな筐体
  • データの見える化:試験結果グラフやレポートの表示が分かりやすく、教育現場でも使いやすい仕様

つまり、単に「測れる」だけではなく、現場で長く、快適・安全に使える機器としてデザインされている点が、国際的に評価されたと言えるでしょう。

受賞製品2:高速度ビデオカメラ 肉眼では見えない世界をとらえる

2つ目の受賞製品である高速度ビデオカメラは、通常のカメラよりもはるかに高速で撮影できる特殊なカメラです。一般的な動画が1秒間に30〜60コマ程度なのに対し、高速度カメラは1秒間に数千〜数万コマというレベルで記録できるのが特徴です。

このようなカメラは、次のような場面で活躍します。

  • 部品が破壊される瞬間や、材料が変形する様子の解析
  • 機械が高速で動くときの振動やぶれの観察
  • スポーツ科学分野でのフォーム解析やボールの回転・変化の研究
  • 医療や生物分野での、瞬間的な生体反応や流体の挙動観察

肉眼では「一瞬」で終わってしまう現象も、高速度ビデオカメラで撮影するとスローモーションで再生でき、細かな動きまで確認できます。つまり、時間を拡大して観察するための道具と言えます。

高速度ビデオカメラのデザイン上の工夫

高性能な高速度カメラは、従来は大型で扱いが難しいものも少なくありませんでした。島津製作所の受賞製品は、そうした従来のイメージを変えるユーザーフレンドリーなデザインが評価されたと見られます。

  • 持ち運びしやすい筐体:撮影現場へ移動しやすいサイズと重量バランス
  • シンプルな操作系:撮影条件の設定や再生が直感的に行えるインターフェース
  • 一体的なシステム構成:レンズ・電源・記録装置などを効率的に配置し、ケーブルの煩雑さを低減
  • 現場での視認性:外観や表示部が見やすく、撮影状況をひと目で把握できるデザイン

高速度カメラは、多数のパラメータ設定や光学条件の調整が必要なため、操作者の負担が大きくなりがちです。そこで、専門性の高い機能と、分かりやすい操作性を両立させたデザインが、国際的な審査員から高く評価されたと考えられます。

日立ハイテク「OXRAY」がRed Dot: Best of the Bestを受賞

今回のニュースでは、同じ日本企業である日立ハイテクの受賞も注目されています。日立ハイテクの線形加速器システム「OXRAY」が、Red Dotの最高位である「Red Dot: Best of the Best」を受賞しました。

「線形加速器システム」という名前から分かるように、OXRAYは粒子を加速して放射線を発生させる装置に関係したシステムです。線形加速器は、医療分野ではがん治療や高度な画像診断、産業分野では材料解析や検査などに利用されます。

この種の機器は非常に高度な技術を必要とし、ユーザーも医師や研究者、専門技術者など限られた人々です。しかし、だからこそ安全性や操作性、保守のしやすさが重要になります。OXRAYが「Best of the Best」を受賞したということは、

  • 専門機器でありながら、操作系・表示・レイアウトが非常に優れている
  • ユーザーの負担を軽減し、誤操作のリスクを抑える人間中心設計が徹底されている
  • 産業機器として求められる堅牢性・信頼性と、洗練された外観デザインを両立している

といった点が高く評価された結果だと考えられます。同じく高度な分析・計測・医療の領域で事業を展開する島津製作所にとっても、この受賞は大きな刺激となるでしょう。

音楽制作コントローラー「SLAB」もBest of the Bestを獲得

さらに、音楽制作の分野からは音楽制作コントローラー「SLAB」が、Red Dotの最高賞「Best of the Best」を受賞しています。こちらは島津製作所や日立ハイテクとは異なり、クリエイターやミュージシャン向けのプロダクトです。

音楽制作コントローラーとは、パソコンや音楽制作ソフトウェアと連携して、直感的に音を操るためのハードウェアです。パッドやノブ、フェーダー、タッチパネルなどを備え、指先の操作でビートを打ち込んだり、エフェクトをかけたり、ミキシングをしたりできます。

「SLAB」が最高賞を受賞した背景として、次のような点が考えられます。

  • シンプルで美しい造形:スタジオだけでなく、リビングやカフェにもなじむミニマルなデザイン
  • 直感的な操作性:複雑な機能を、少ない操作子で分かりやすく扱えるインターフェース
  • 触感と光の演出:指先の感覚に配慮した素材や、状態が分かりやすいLED表示

工業・医療系機器とは異なる分野からの受賞ですが、「高度な機能を、やさしい操作で引き出せるようにする」という点では、島津製作所の機器とも通じるものがあります。

今回の受賞が示すもの:日本発プロダクトの「デザイン力」

今回のニュースで特に興味深いのは、異なる業界の日本企業の製品が、同じ国際デザイン賞で高く評価されたという点です。分析・計測機器、放射線関連システム、音楽制作コントローラーという、一見バラバラな分野の製品に共通するキーワードは、次のようなものです。

  • 高度な技術の「見える化」:複雑な機能を、分かりやすい形や操作に落とし込む工夫
  • 人間中心設計:安全・快適・効率的に使えるよう、ユーザーの行動や心理を細かく考慮
  • 長く使える製品づくり:耐久性や信頼性と、美しいデザインを両立

日本のものづくりは、これまで精度の高さや品質の良さが評価されることが多くありました。そこに近年は、デザインやユーザー体験の観点がより強く加わっていることを、今回の受賞が示していると言えるでしょう。

島津製作所にとっての意味と、今後の展開

島津製作所にとって、世界的デザイン賞の受賞は単なる「見栄えの良さ」の証明ではありません。精密万能試験機高速度ビデオカメラのような装置は、導入後に長年にわたって使用されることが多い製品です。そのため、

  • 長期にわたる安定した運用を支える堅牢さ
  • 担当者が代わっても使い続けやすい分かりやすいUI
  • 保守・メンテナンスの作業性を考えた内部構造や外観設計

などが非常に重要になります。それらを含めた総合的な「デザイン」が国際的に評価されたことは、技術力とデザイン力の両立を目指す同社の方向性が、正しいと認められた形とも言えます。

また、Red Dot受賞製品は、カタログや展示会などでも「世界的デザイン賞受賞」として紹介されることが多く、海外でのブランド認知信頼感の向上にもつながります。分析・計測機器市場はグローバル競争が激しい分野ですが、こうした受賞をきっかけに、島津製作所の機器が世界の研究室や開発拠点にさらに広く採用される可能性も高まります。

ユーザーにとってのメリット:現場が変わる「デザイン」の力

最後に、このニュースが実際にユーザーにどのようなメリットをもたらすのかについても触れておきます。精密万能試験機や高速度ビデオカメラ、線形加速器システムOXRAY、そして音楽制作コントローラーSLABなどの製品が優れたデザインを持つことは、次のような変化を意味します。

  • 作業効率の向上:直感的で分かりやすいデザインにより、操作ミスが減り、作業時間の短縮につながる
  • 安全性の向上:危険な操作や誤設定を避けるための構造・表示・インターフェースにより、事故のリスクが低下
  • 学習コストの低減:新しい担当者でも短期間で使いこなしやすくなり、教育・引き継ぎがスムーズになる
  • 創造性の向上:音楽ツールのように、使っていて楽しいデザインは、クリエイターの発想を刺激する

このように、「デザイン」は見た目を美しくするだけでなく、現場の働き方や創造のプロセスを変える力を持っています。島津製作所をはじめとする日本企業の受賞は、その可能性を改めて示すものだと言えるでしょう。

参考元