スリランカで「スタッフ全員女性」のホテル誕生 観光立国を支える新しい一歩

スリランカ中部の豊かな自然に囲まれたカンダラマ湖のほとりに、スタッフが全員女性というユニークなホテル「アンバ・ヤール(Amba Yala)ホテル」が登場しました。
「女性は夜の勤務に向かない」「家族を優先するから責任あるポストは任せにくい」といった、ホテル業界に根強く残る偏見を打ち破ろうとする試みとして、国内外で注目を集めています。

豊かな自然に囲まれたカンダラマ湖畔のホテル

アンバ・ヤール・ホテルが建つのは、スリランカ中部の緑豊かな丘陵地帯・カンダラマ湖のほとりです。
湖面に光が揺れる静かなロケーションは、スリランカが誇る自然の美しさを味わえる観光地の一つで、近年はエコツーリズムの観点からも注目されています。

ホテルは2025年1月にオープンし、規模としては中型ながら、客室やレストラン、フロント、清掃、管理部門に至るまで、従業員はすべて女性という構成になっています。
スリランカ国内では、「スタッフ全員が女性」というホテルは非常に珍しく、事実上国内初の試みとして紹介されています。

なぜ「女性だけ」のホテルなのか ― 背景にある業界の偏見

スリランカのホテル業界では、これまで男性中心の職場文化が当たり前とされてきました。
特に、フロントの夜勤やバー業務、管理職などは男性が担うものと見なされることが多く、女性が応募しても採用されにくかったり、昇進の機会が限られたりするケースが指摘されてきました。

また、地方では「女性は家事と育児を優先すべき」「夜遅くまで働く女性は好ましくない」といった社会的な偏見も根強く残っており、ホテルや観光業に興味があっても一歩を踏み出せない女性が少なくありません。
こうした状況の中で、アンバ・ヤール・ホテルは、あえて「全員女性」というコンセプトを掲げることで、業界と社会に対し明確なメッセージを打ち出しました。

雇用の場だけでなく「学びの場」を目指して

アンバ・ヤール・ホテルは単に女性を雇用するだけでなく、トレーニングの機会を提供することにも力を入れています。
ホテル業務の基本である接客マナーや清掃、予約管理に加え、語学、ITスキル、ホスピタリティ全般についての研修を行い、「ホテルで働いた経験を通じて、女性たちが将来のキャリアを広げていけるようにする」ことを目標に掲げています。

なかには、これまで家族の事情などで就業経験がなかった女性も多く、ホテルは彼女たちにとって初めての職場となっています。
「夫の収入だけに頼らず、自分の力で家計を支えたい」「子どもに勉強を続けてほしいから、学費を自分で稼ぎたい」といった理由で応募してきたスタッフも少なくないと報じられています。

現場で働く女性たちの声

報道によると、スタッフたちは「女性だけの職場で安心して働ける」「悩みや家庭の事情も理解してもらいやすい」といった安心感を口にしています。
また、これまで家事や育児に専念していた女性が、ホテルで働き始めたことで、自信を取り戻したというエピソードも伝えられています。

一方で、「女性だけの職場だからこそのプレッシャー」もあります。
「男性がいなくても、私たちだけでホテルを切り盛りできるところを見せたい」「お客さまの期待を裏切らないサービスを提供したい」という思いは強く、その分、責任感も大きいといいます。
それでもスタッフたちは、互いに助け合いながら業務を分担し、難しい場面でも話し合って解決しようと努めているそうです。

スリランカ経済と観光業にとっての意味

スリランカは、観光業が重要な外貨獲得手段となっている国です。
内戦終結後、リゾート開発や観光インフラ整備が進みましたが、経済危機や政情不安、パンデミックの影響などで観光業は大きな打撃を受けてきました。
その再建にあたり、多様な人材の活躍が鍵になるとされています。

特に女性は、教育水準が比較的高い一方で、労働参加率はまだ十分とは言えない状況にあります。
観光・ホテル分野で女性の雇用を増やし、スキルアップを支援することは、スリランカ全体の経済にとっても大きな意味を持ちます。
アンバ・ヤール・ホテルのような試みは、地方部での女性の雇用創出にもつながり、地域経済の活性化にも寄与すると期待されています。

国内外で広がる「女性×ホスピタリティ」の動き

女性がホスピタリティ産業で活躍する流れは、スリランカだけでなく、世界各地で少しずつ広がっています。
日本でも、ビジネスホテルのレストランなどで働いた経験を生かして、起業や海外でのビジネスに挑戦しようとするスリランカ出身女性が紹介されるなど、国境を越えた動きが見られます。

こうした事例は、「ホテルで働くこと」が、単にサービスを提供するだけでなく、自分の人生を切り開く手段になり得ることを示しています。
スリランカの女性たちにとっても、アンバ・ヤール・ホテルでの経験が、新たなチャレンジへの一歩になる可能性があります。

「Sri Luck(スリラック)」に見る、身近な多様性の楽しみ方

一方、日本国内でも、スリランカにちなんだ名前を持つお店が話題になることがあります。
新潟市西区黒埼にある「Sri Luck(スリラック)」は、その一つです。
こちらは、さまざまな味を自分好みに混ぜ合わせて楽しめるスタイルが特徴のお店として紹介されています。

スリランカと直接の関係がどこまであるかは報道からは限定的ですが、「Sri」という言葉が持つスリランカや南アジアのイメージと、「Luck(運)」を掛け合わせた店名は、訪れる人にワクワク感を与えてくれます。
自分好みに味を組み合わせるスタイルは、「多様な選択肢を尊重する」という意味でも、どこか女性活躍や多様性の尊重と通じるものがあります。

スリランカの女性がホテル業界で新たな一歩を踏み出す動きと、日本でスリランカを感じさせるお店が生まれる流れは、一見別のニュースに見えますが、どちらも「異なる文化や価値観を尊重し、楽しむ」という点でつながっているようにも思えます。

偏見を超えて ― これからのホスピタリティのかたち

アンバ・ヤール・ホテルの取り組みは、まだ始まったばかりです。
成功すれば、「女性だけのホテル」というコンセプトが、スリランカ国内の他の地域や、アジア各国にも広がっていく可能性があります。
同時に、もし課題や批判が生まれたとしても、それは業界がより公平で開かれた姿を目指すための貴重な材料となるでしょう。

重要なのは、「女性だけだから特別」「男性だけだから特別」という発想にとどまるのではなく、性別に関わらず、能力と意欲が正当に評価される環境をつくることです。
アンバ・ヤール・ホテルは、その方向に向かうための、象徴的な一歩と言えます。

スリランカのカンダラマ湖畔で、女性たちが笑顔でゲストを迎え、ホテルを運営している姿は、観光業の未来だけでなく、社会全体のあり方を考えるヒントを私たちに与えてくれます。
そして、遠く離れた日本の「Sri Luck(スリラック)」のように、日常の中でスリランカの名前を見つけ、自分なりの楽しみ方を見つけることも、国や文化を超えたつながりを感じるきっかけになるのではないでしょうか。

参考元