大分県で広がる「民泊」問題 ごみ・駐車トラブルと無許可営業の実態、官民連携で対策へ

大分県内で、観光客の増加とともに利用が広がってきた民泊が、いま新たな課題に直面しています。
ごみ出しのマナー違反や近隣の駐車トラブル、さらに無許可民泊の存在など、地域住民からの苦情が増えていることを受け、県や市町村、観光・宿泊業界、民泊事業者などが連携した官民会議が立ち上がりました。
また、大分県は2027年度に導入予定の「宿泊税」を見据え、県内の民泊の実態調査に乗り出す方針です。

なぜ今、大分県で「民泊」が問題になっているのか

ここ数年、インターネットを通じて簡単に部屋を貸し出したり、予約できたりする民泊が全国的に広がりました。大分県も例外ではなく、温泉地や観光地を中心に、多くの民泊施設が生まれています。
観光客にとっては、ホテルよりも安く、生活感のある滞在が楽しめるなどのメリットがあります。一方で、地域社会では次のような問題が指摘されるようになりました。

  • 民泊利用者が出すごみの分別ルールが守られない
  • 民泊利用者の無断路上駐車や、近隣駐車場の占有
  • 深夜の騒音や、出入りが多いことによる不安感
  • 許可を得ずに営業する無許可民泊の存在

こうした問題は、地域の暮らしに直接影響するため、住民から自治体や事業者への苦情が増えています。民泊そのものは観光振興や地域活性化に役立つ一方で、ルールが徹底されないまま広がってしまうと、地域社会との摩擦が大きくなってしまうのです。

県内に1235施設 大分県の民泊の現状

大分県内には、把握されているだけで1235施設もの民泊があるとされています。
これは、旅館業法に基づく簡易宿所や、いわゆる「住宅宿泊事業」(いわゆる民泊新法による届出施設)などを含めた数であり、今や旅館・ホテルに並ぶ規模の受け皿となっています。

しかし、この1235施設という数字は、あくまで行政が把握している数です。実際には、インターネット上の仲介サイトなどを通じて、正式な許可・届出をしていない無許可民泊が存在している可能性も指摘されています。
こうした施設は、防災面や衛生面の基準を満たしていないおそれがあり、利用者の安全や地域の安心にとって大きなリスクとなります。

ごみ処理・駐車トラブル…現場で起きている具体的な問題

ニュースでも取り上げられているように、大分県内の民泊をめぐる代表的なトラブルには次のようなものがあります。

ごみ出しのルール違反

日本の多くの自治体では、ごみの分別が細かく決められており、燃えるごみ・資源ごみ・プラスチック・瓶・缶など、出す曜日も種類ごとに異なる場合がほとんどです。
しかし、外国人観光客や初めてその地域を訪れた人にとっては、これらのルールを理解するのは簡単ではありません。案内が日本語だけだったり、説明が十分でなかったりすると、

  • 分別をせずにごみを出してしまう
  • 収集日以外にごみを出してしまう
  • 指定袋を使わずに出してしまう

といった問題が起こります。その結果、収集されないごみが長時間放置されたり、カラスや猫が袋を破ってごみが散乱したりして、近隣住民の衛生面・景観面のストレスにつながっています。

駐車場をめぐるトラブル

民泊施設の中には、専用駐車場が十分に確保されていない物件もあります。その場合、利用者が近くの月極駐車場や他人の敷地前、路上などに無断駐車してしまうケースが問題になっています。

とくに地方部では、日常生活に車が欠かせないため、一台分の駐車スペースが塞がれてしまうだけでも大きな支障となります。
住民側からは、

  • 車が出せず、通勤や通学に遅れてしまう
  • 自宅前の道がふさがれて、緊急車両が通れないのではという不安
  • 何度注意しても改善されない

といった切実な声も上がっています。

「災害時どう対応?」防災面の不安も

大分県は、地震や豪雨などの災害リスクもある地域です。その中で、民泊利用者が災害時にどのように避難すればよいのか、防災情報の伝達が十分でないという課題も浮かび上がっています。

ホテルや旅館では、避難経路や非常口、非常時の連絡先などがきちんと表示されていますが、小規模な民泊施設では、

  • 避難経路や非常口の案内がない
  • 非常用持ち出し品や備蓄が不十分
  • 災害情報をどこから得ればいいのか利用者が分からない

といった状況があり得ます。
とくに海外からの旅行者にとって、日本語の防災情報は理解が難しく、多言語での案内や事前の説明が重要になります。「災害時どう対応するのか」という問いは、民泊の安心・安全を考える上で避けて通れないテーマになっています。

官民連携会議が発足 行政と事業者が一緒にルールづくり

こうした問題を踏まえ、大分県内では、県・市町村・観光業界・民泊事業者・関係団体などが参加する官民連携会議が立ち上がりました。
この会議の目的は、一部の施設や利用者のマナー違反によって、地域全体のイメージが悪くならないようにすることです。

官民連携会議では、例えば次のような点について話し合い、取り組みを進めていくことが期待されています。

  • ごみ出しルールや駐車マナーを、宿泊者に分かりやすく伝える方法
  • 災害時の避難情報を、多言語で案内する仕組み
  • 民泊事業者への研修や、地域とのコミュニケーション支援
  • トラブルが起きたときの相談窓口・連絡体制の整備

行政だけでも、事業者だけでも解決が難しい問題を、「顔の見える関係」の中で話し合い、共通のルールやマナーを作り上げていくことが重要になります。

無許可民泊の実態調査へ 2027年度「宿泊税」導入を前に

大分県は、2027年度に「宿泊税」を導入する方針を示しています。
宿泊税とは、ホテル・旅館・民泊などの宿泊料金に応じて課税されるもので、観光地の整備や受け入れ環境の改善に使われる税金です。東京都や福岡県など、すでに導入している自治体もあります。

宿泊税を公平に徴収するためには、県内で営業している宿泊施設の全体像を正確に把握する必要があります。そのため、大分県は、

  • 旅館業法に基づく許可施設
  • 住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出施設
  • インターネット上で集客している民泊施設

などを対象に、無許可民泊を含めた実態調査を行う方針です。

この調査により、

  • どの地域にどれくらいの民泊が集中しているのか
  • 消防・防災・衛生面の基準を満たしているか
  • 税負担の公平性が保たれているか

といった点を確認し、必要であれば指導や改善要請を行うことが考えられます。
正規に許可・届出をしている事業者からは、「無許可民泊があると価格競争で不利になる」「安全対策をきちんとしている施設が報われない」といった不満もあり、公正な競争環境を整える意味でも実態把握は欠かせません。

地域に愛される民泊へ 今後の課題と期待

民泊は、本来であれば、地域の暮らしぶりを感じられる魅力的な宿泊形態です。
大分県のように、温泉や自然、食文化など多くの観光資源を持つ地域では、民泊を通じて、旅館やホテルとはまた違った体験を提供することができます。

そのためにも、今後は次のような取り組みがより一層求められます。

  • ルールの徹底:ごみ出しや駐車、騒音、防災などに関するルールを、多言語・イラストなどで分かりやすく伝える
  • 地域との対話:民泊事業者が、事前に自治会や近隣住民と話し合い、トラブルが起きたときの連絡先や対応方針を共有する
  • 行政のサポート:官民連携会議などを通じて、相談窓口やガイドライン、研修などを整備する
  • 無許可対策:実態調査に基づき、無許可施設には指導や是正を求め、公平な環境を作る

民泊を「迷惑な存在」にするのか、「地域の新しい魅力」として育てていくのかは、行政だけでなく、事業者、住民、そして利用者一人ひとりの意識と行動にかかっています。
大分県で始まった官民連携の取り組みや、無許可民泊の実態調査は、その第一歩と言えるでしょう。

観光客にとっても、地域の暮らしを尊重し、ルールを守ることが、結果として自分たちの旅をより豊かなものにしてくれます。
今後、大分県がどのように民泊と向き合い、「住んでよし、訪れてよし」の地域づくりを進めていくのか、注目が集まっています。

参考元