フェラーリ初の量産EV「Ferrari Luce」発表 “光”が照らす新しいフェラーリの章
イタリアの名門スポーツカーメーカー、フェラーリは、ブランド初となる量産フル電気自動車「Ferrari Luce(フェラーリ・ルーチェ)」を正式発表しました。「Luce」とはイタリア語で「光」を意味し、その名の通り、電動化時代におけるフェラーリの新たな方向性と希望を象徴するモデルです。
このルーチェは、単なる新型車ではなく、「フェラーリの歴史における新しい章の幕開け」として位置づけられています。 CEOのベネデット・ヴィーニャ(Benedetto Vigna)氏は、「デザインがテクノロジーを支える」と語り、最新の電動パワートレインとインターフェースを、フェラーリらしい官能性と感性で包み込むことに強いこだわりを示しています。
「Luce」が意味するもの――フェラーリにとっての“光”
ルーチェという車名は、フェラーリが新たに導入した命名戦略の一環であり、ブランドの未来志向を明確に示すものです。
- イタリア語で「光」「照らすこと」を意味するLuce。
- 電動化時代への希望や、次世代へ向けたフェラーリの姿勢を象徴。
- 開発コードネームは「Elettrica(エレットリカ)」で、そこから正式名称「Luce」へ移行。
フェラーリは、この名前に「新しいテクノロジーで未来を照らしながらも、ブランド本来のDNAを失わない」というメッセージを込めています。 そのため、電気自動車であっても「フェラーリらしさ」は何か、という問いに正面から向き合って開発されています。
Ferrari Luceは「新しい章」――Ferrari Luce, un nuovo capitolo
フェラーリはルーチェを「Ferrari Luce, un nuovo capitolo(フェラーリ・ルーチェ、新たな章)」と表現し、ブランド史の大きな転換点として位置づけています。
背景には、マラネッロ本社に新設された「eビルディング」での電動化技術の確立があります。フェラーリは2023年に、この最新設備で今後のBEV(バッテリー電気自動車)やハイブリッドモデルのための基盤技術を公開し、その結実のひとつがルーチェというモデルです。
フェラーリにとって、ルーチェは次のような意味を持つ重要な存在です。
- ブランド史上初の量産フルEVスポーツカー/GT。
- 電動化時代における「フェラーリらしさ」を再定義する基幹モデル。
- 今後の電動フェラーリ群のデザイン・技術思想を示す“ショーケース”。
CEOのベネデット・ヴィーニャ氏は、2030年の販売構成比として「EV 20%、ハイブリッド40%、内燃機関40%」という方針を掲げており、ルーチェはその第一歩を象徴するモデルと言えます。
ヴィーニャCEOのキーメッセージ:デザインがテクノロジーを支える
ルーチェの発表にあたり、ヴィーニャCEOは「Diversa da tutte perché il design sostiene la tecnologia(すべてと違うのは、デザインがテクノロジーを支えているからだ)」と語りました。この言葉は、ルーチェのコンセプトを非常に端的に表しています。
一般的にEVは、バッテリーやモーターなどの最新技術に注目が集まりがちですが、フェラーリはあくまで人が主役であることを重視しています。 そのため、ルーチェでは次のような考え方が徹底されています。
- テクノロジーを前面に押し出しすぎない、あくまでドライバー体験を高めるための「裏方」として配置。
- 操作系は「直感的」であることを最優先し、複雑さを感じさせないインターフェースを追求。
- 走りの感覚やサウンドなど、「五感で感じるフェラーリらしさ」を電動パワートレイン時代にどう表現するかに注力。
SNSや専門メディアでは、「Appleのデザインを感じる」「一周回って新しい」といった声も上がっており、シンプルでミニマルでありながら、温かみを感じさせるインテリアが注目されています。
Apple出身デザイナーと共創したインテリア
ルーチェのインテリアは、元Appleのデザイン責任者として知られるジョナサン・アイブ氏とマーク・ニューソン氏のデザインスタジオLoveFromが、フェラーリのチーフデザイナーであるフラビオ・マンゾーニ氏と共同で手がけています。
このコラボレーションにより、次のような特徴が生まれています。
- 1960年代のフェラーリを思わせるクラシックな要素と、現代的なミニマリズムを融合させた「懐かしくて新しい」雰囲気。
- メイン素材にはアルミニウム、レザー、ガラスなどを用い、上質感と触感の良さを重視。
- 情報表示は必要なものをシンプルかつクリアに提示し、「扱いやすさ」を最優先したHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)。
インテリアの公開は、フェラーリが段階的に進めるルーチェ発表計画の「第二段階」とされており、まず室内空間とインターフェースの世界観が先行して明かされました。
フェラーリらしいパフォーマンス──4モーターで1000ps超
電動化しても「走り」がフェラーリの中心であることに変わりはありません。ルーチェは4基の永久磁石同期モーターを搭載し、ブーストモード時には1000馬力超を発揮します。
- 0-100km/h加速:約2.5秒
- 最高速度:310km/h
- 最大出力:1000ps超
- WLTPベースの航続距離:約530km
- 最大急速充電出力:350kW対応
大容量バッテリーを床下に統合した結果、車両重量は2300kg超とされていますが、4モーターそれぞれを緻密に制御することで、フェラーリらしい俊敏なハンドリングを維持していると説明されています。
ホイールベースは2960mmで、短いオーバーハングと、フロントアクスルに近い先進的なドライビングポジションを採用。これにより、ドライバーは車と一体になった感覚を得やすく、EVでありながら伝統的なフェラーリの運転フィールに近づけています。
Ferrari Foreverの思想:バッテリーを「更新可能」に
ルーチェの特徴として特に注目されるのが、「Ferrari Forever」の思想を踏まえたバッテリー戦略です。フェラーリは古いモデルも長くサポートし続ける姿勢で知られており、この哲学をEVにも適用しようとしています。
ルーチェでは、バッテリーをアップデート可能(更新可能)な設計とし、将来の技術進化に対応できるよう配慮されていると説明されています。 これにより、次のようなメリットが期待できます。
- バッテリーの劣化に合わせた交換だけでなく、将来の高性能セルへの載せ替えの可能性。
- 最新の充電規格やエネルギー密度の向上に合わせて、車の価値を長期に維持しやすい。
- フェラーリ伝統の「クラシケ(認定プログラム)」や長期サポート方針との整合性。
フェラーリが掲げる「Ferrari Forever」という考え方は、「フェラーリは長く愛され、世代を超えて受け継がれていくべき存在」という理念です。ルーチェのバッテリー戦略は、EV時代にもこの価値観を守るための取り組みと言えるでしょう。
発売時期と価格帯
ルーチェの正式なワールドプレミアは、2026年5月にイタリアで行われると予告されていました。 各種報道によると、納車開始は2026年10月頃が予定されており、かなり高い価格帯のラグジュアリーEVとして位置づけられます。
- 初回納車開始時期:2026年10月予定
- 推定価格:50万ユーロ超(記事ベースの推定)
この価格帯からもわかるように、ルーチェは量販を目的としたEVではなく、「フェラーリらしい特別な体験」を重視したフラッグシップ的モデルとして計画されています。
フェラーリの電動化戦略の中での位置づけ
フェラーリはすでにV6やV8をベースにしたプラグインハイブリッドモデル(PHEV)を発売しており、ル・マンハイパーカーなどのモータースポーツ領域でも電動技術を活用しています。 その延長線上に位置するのが、このフルEVのルーチェです。
ヴィーニャCEOが掲げる2030年の販売構成比(EV 20%、ハイブリッド40%、内燃機関40%)という目標を実現するうえで、ルーチェは次のような役割を果たすと考えられます。
- フェラーリにとっての初の量産EVプラットフォームとして、今後の派生モデルの基盤になる。
- 高価格帯ながら、電動フェラーリのデザイン・サウンド・走りの方向性を明示する。
- 新たな顧客層や、電動化時代でもフェラーリを選びたい既存オーナーに向けた「回答」となる。
また、インテリアデザインやHMIにはLoveFromとの協業が反映されており、この領域の取り組みは今後のフェラーリ車全体にも波及していく可能性があります。
「フェラーリらしさ」をどう守るのか
多くのファンにとって、「フェラーリ=エンジン音」というイメージは強く、フルEV化に対する不安や懐疑的な声もありました。しかしフェラーリは、ルーチェを通じて「フェラーリらしさは排気音だけではない」というメッセージを打ち出しています。
ルーチェでは、次のような形で「らしさ」を表現しようとしています。
- レスポンスの良い加速と緻密なモーター制御によるドライバビリティ。
- ステアリングやペダルのフィール、シートのホールド感など、身体を通じて感じる一体感。
- インテリアの造形やマテリアルが生み出す特別な空間。
- Ferrari Foreverの思想に基づく、長期的な価値維持の仕組み。
こうした総合的な体験によって、「エンジン音がなくても、確かにフェラーリだ」と感じてもらうことが、ルーチェに込められた狙いだといえます。
これからのLuceに期待されるもの
現時点で、ルーチェのエクステリアデザインの詳細や、細かな仕様の全てが明らかになっているわけではありませんが、「Ferrari Luce, un nuovo capitolo」という言葉どおり、フェラーリが電動化時代にどのようなスポーツカー像を描こうとしているのかを理解するうえで、非常に重要なモデルになっています。
フェラーリは今後も、内燃機関モデル、ハイブリッド、そしてEVを並行して展開し、それぞれの得意分野を活かしながら「走る喜び」を追求していく方針です。その中でルーチェは、「光」という名前の通り、電動化の道を照らす存在として注目を集め続けるでしょう。



