「日本語指導が必要な子」が10年で倍増 公立校の4割に広がる課題と、生成AIも活用した新たな支援の動き

日本の小中高校で、日本語を母語としない、または家庭で日本語以外の言葉を使う子どもたちが急速に増えています。文部科学省の調査では、日本語指導が必要とされる児童生徒は過去最多の約8万4千人に達し、この10年でほぼ倍増しました。そうした子どもたちが在籍する公立学校も全体の4割に上るなど、日本語教育はもはや一部の地域だけの課題ではなく、全国的なテーマになっています。

一方で、子どもたちの母語は年々多様化し、学校現場だけでは対応しきれない状況も見えてきました。こうしたなか、国や自治体は、登録日本語教員などの外部人材を積極的に活用することや、最近急速に発展した生成AI技術も取り入れた支援のあり方を模索しています。本記事では、読売新聞オンラインなどで報じられている最新の動きをもとに、日本語指導が必要な子どもたちをめぐる現状と課題、その解決に向けた新たな取り組みについて、わかりやすくお伝えします。

日本語指導が必要な子どもたちはなぜ増えているのか

まず、「日本語指導が必要な児童生徒」とは、教科の学習や学校生活を送るうえで、日本語力に十分な配慮や特別な指導が必要と判断された子どもたちを指します。外国につながる子どもだけでなく、日本で生まれ育っていても、家庭では日本語以外の言語が主に使われているケースも含まれます。

この10年で人数が倍増した背景には、いくつかの要因があります。

  • 外国人労働者や留学生などの増加により、日本で暮らす外国ルーツの家族が全国的に広がっていること
  • 技能実習生や特定技能などの制度を通じて、地方都市や中小企業の多い地域にも外国人住民が定着しつつあること
  • 日本人と外国人の間に生まれた子どもや、海外生活を経て日本に戻ってきた子どもなど、多様な「外国につながる子ども」が増えていること

こうした変化により、これまで外国人児童生徒が少なかった地域の学校にも、日本語指導を必要とする子どもたちが在籍するようになりました。その結果、「特別な学校」の問題ではなく、全国の多くの学校が直面する大きなテーマになってきています。

過去最多8.4万人、公立校の4割に在籍という現実

最新の文部科学省の調査では、日本語指導が必要とされる児童生徒は約8万4千人と、過去最多を更新しました。10年前と比べておよそ2倍というペースで増えており、今後も増加傾向が続くとみられています。

特に注目すべきなのは、そうした子どもたちが在籍している学校の割合です。現在、全国の公立校の約4割に日本語指導が必要な児童生徒が通っているとされ、都市部だけでなく地方の学校にも広く分布していることがわかります。

一方で、各学校に十分な日本語指導の体制が整っているかというと、実情はなかなか厳しいものがあります。

  • 日本語を専門的に教えられる教員が少ない
  • 日本語指導を担当する教員が、通常の学級担任や教科指導と兼務しているケースが多い
  • 母語が多様化しており、通訳や資料を用意するだけでも負担が大きい

このように、「必要とする子どもは増えているが、それを支える体制が追いついていない」というギャップが、現場の大きな悩みになっています。

母語の多様化が生む新たな課題

かつては、日本で学ぶ外国ルーツの子どもといえば、中国語やポルトガル語、スペイン語など、比較的限られた言語が中心でした。しかし今では、出身国や地域がさらに多様になり、学校現場で出会う母語も、アジア・アフリカ・中東・ヨーロッパなど、実にさまざまになっています。

母語が多様化すると、単に「日本語ができない」という問題だけではなく、次のような課題が生まれやすくなります。

  • 通訳・翻訳の確保が難しい:メジャーな言語以外では、学校がすぐに通訳を手配できないケースが増える
  • 家庭との連絡が取りにくい:プリントやお便りを保護者の母語で用意するのが難しく、連絡不行き届きや誤解が生じやすい
  • 文化背景の違いへの理解:学習スタイルや生活習慣、宗教的な配慮など、多様な価値観を踏まえた対応が求められる

教師側も、すべての言語や文化に精通することは到底できません。そのため、一人ひとりの子どもや家庭に合った丁寧な支援を行おうとすると、どうしても現場の負担が大きくなってしまいます。

読売新聞オンラインが伝える「生成AI活用」の新しい可能性

こうした状況のなかで、最近注目されているのが生成AIを活用した支援の取り組みです。読売新聞オンラインでは、「日本語指導が必要な子が10年で倍増し、母語が多様化するなかで、生成AIを使った支援の可能性」が取り上げられています。

生成AIとは、大量のデータを学習し、人間の言葉を理解して文章を作ったり、翻訳を行ったりする技術のことです。ニュースで話題となっているのは、この技術を日本語学習や学校でのコミュニケーションに生かそうという動きです。

例えば、次のような使い方が考えられています。

  • 多言語翻訳の支援:学校からのお便りやお知らせを、保護者の母語に自動翻訳して届ける
  • 日本語学習の個別サポート:子どものレベルにあわせて、やさしい日本語への言い換えや、練習用の例文を自動生成する
  • 授業内容の補助説明:理科や社会などの教科内容を、簡潔で分かりやすい日本語に整理し直す

もちろん、AIはあくまで「道具」であり、完全に正確な翻訳や説明ができるとは限りません。しかし、母語が多様で通訳を確保しにくい現場にとって、AIは「話の取っかかり」や「下訳」を用意してくれる心強い補助役になります。そこに人間の教員が目を通し、必要な修正や補足を加えることで、これまでよりもスムーズなやり取りや指導が期待できます。

日本語教員など外部人材の積極活用を提言

AIの活用と同時に、重要な柱として議論されているのが、登録日本語教員など外部人材の活用です。政府の有識者会議では、外国人児童生徒への教育に関する報告書案がまとめられ、日本語教育の専門性をもつ人材を学校現場で積極的に活用することが提言されています。

報告書案が想定している外部人材には、次のような人たちが含まれます。

  • 登録日本語教員:専門的な研修や試験を経て登録された日本語教育の専門家
  • 地域の日本語ボランティア:自治体やNPOなどが行う日本語教室の指導者
  • 多文化共生のコーディネーター:学校と家庭、地域をつなぐ役割を担う支援員

これらの人材は、学校の教員とは異なる立場から、子どもたちの日本語学習を支えたり、保護者との橋渡し役を担ったりする存在です。報告書案では、こうした外部人材の知見を最大限に活かすために、以下のような点が重視されています。

  • 自治体が中心となって登録日本語教員などのリストを整備し、学校が必要なときにすぐ依頼できるようにする
  • 外部人材が学校内で活動しやすいよう、役割や連携方法を明確にする
  • AIを含むデジタルツールと組み合わせ、限られた人材でより多くの子どもを支援できる体制をつくる

つまり、「日本語教育の専門性をもつ人」と「子どもの日常をよく知る学校の教員」、「AIなどの新しい技術」が、それぞれの強みを活かしながら協力していく姿が描かれていると言えます。

学校現場で求められる工夫と配慮

国レベルの議論や提言が進む一方で、日々子どもたちと向き合う学校現場では、具体的にどのような工夫が求められるのでしょうか。ニュースや各地の取り組みからは、次のようなポイントが見えてきます。

  • 「やさしい日本語」での説明:難しい漢字や複雑な表現を避け、短くはっきりした言葉で伝える
  • 絵や写真、実物を活用する:言葉だけに頼らず、視覚的な情報を組み合わせて理解を助ける
  • 友達との関わりを大切にする:クラスメートが自然な日本語や学校文化を伝える大きな力になる
  • 家庭との対話を重ねる:保護者の不安や希望を丁寧に聞き取り、共通の目標を確認する

生成AIや外部人材の活用は、このような日常の工夫を支えるための「補助輪」のような役割を担います。たとえば、連絡帳の内容をAIで翻訳して保護者の母語でも伝えられるようにしたり、日本語教員がAIの力を借りて、一人ひとりに合った教材を効率よく作成したりといった使い方です。

子どもたちにとっての「学ぶ権利」を守るために

日本語指導が必要な子どもたちは、日本という社会の中で学ぶ権利を持つ、かけがえのない一人ひとりです。日本語が十分にわからないまま授業が進んでしまえば、学力の遅れだけでなく、自信や自己肯定感を失ってしまう危険もあります。

逆に、早い段階から適切な日本語支援と、温かい人間関係に支えられれば、子どもたちは驚くようなスピードで日本語を身につけ、自分の力を発揮していきます。母語や文化の違いは、クラス全体にとっても新しい視点や学びのきっかけとなり、多様性を尊重する社会につながっていきます。

読売新聞オンラインが伝えるように、「日本語指導が必要な子」が増えている現状は、確かに大きな課題です。しかし同時に、それは日本社会が国際化し、多様な背景を持つ人々と共に歩み始めている証でもあります。生成AIや登録日本語教員といった新しい支援の仕組みを上手に取り入れながら、子どもたちの可能性を伸ばし、一人も取り残さない教育を実現していくことが求められています。

今後も、国や自治体、学校、地域が協力し合いながら、日本語指導の充実と多文化共生の実現に向けた取り組みが、着実に進んでいくことが期待されています。

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