テクセンドフォトマスクが東証プライム市場に新規上場 ― IPO銘柄として注目集めるその全貌

はじめに

テクセンドフォトマスク株式会社(証券コード: 429A)は、2025年10月16日に東京証券取引所プライム市場へ新規上場しました。国内外の投資家や市場関係者から大きな注目を集め、上場初日は買い気配でスタートし、約475万株という大量の買い注文が入るなど、IPO(新規公開株)市場でも話題の銘柄となっています。
本記事では、テクセンドフォトマスクの事業内容や上場の背景、株価動向、今後の展望などについて、分かりやすく解説します。

企業概要と沿革

  • 会社名:テクセンドフォトマスク株式会社(Tekscend Photomask Corp.)
  • 事業内容:半導体製造に欠かせない「フォトマスク」の開発・製造・販売
  • 本社:東京都港区東新橋
  • 代表者:代表取締役社長執行役員CEO 二ノ宮照雄
  • 設立:2021年12月
  • 親会社:TOPPANホールディングス(旧:凸版印刷)、インテグラルグループ

テクセンドフォトマスクは、TOPPANホールディングスのフォトマスク事業部門を前身とし、2022年4月に独立系投資ファンドであるインテグラルグループをパートナーとして分離・独立しました。
フォトマスク分野で国内最大手(外販市場にてシェアNo.1)として、高い技術力と安定した供給能力を持っています。

フォトマスクとは?

フォトマスクは、半導体チップを製造する工程で回路パターンをシリコンウェハーに転写する際に使われる「原版」とも言える重要な部材です。傾向として、半導体自体が高性能・微細化されるほど、フォトマスクに求められる精度もより厳しく、高度な技術力が不可欠です。
テクセンドフォトマスクは、AI、5G、自動車用電子部品、データセンター向けなど、幅広い分野の需要増に支えられ、今後も安定した成長が見込まれる業種の一角です。

IPO(新規上場)概要

  • 上場日:2025年10月16日(木)
  • 市場:東証プライム
  • 業種:その他製品
  • 証券コード:429A
  • 主幹事証券:SMBC日興証券
  • 発行済株式数:99,291,220株
  • 売出比率:80%(親会社などによる大量売出し)
  • 時価総額(上場時・公開価格換算):約2,978億円
  • 公開価格(公募・売出価格):3,000円
  • 仮条件:2,900円~3,000円
  • 吸収金額:約1,566億円(新規発行・売出・オーバーアロットメント合計)

このIPOは、券面規模も非常に大きく、日本を代表する「ビッグ案件」として注目されました。売出し分の大半が親会社とファンドからのエグジット(出口)案件で、海外投資家モーメントも6割以上を占める構成となっています。

上場初日の株価動向――カイ気配スタート、その理由と評価

テクセンドフォトマスクの株価は、上場初日にカイ気配(買い優勢)ではじまりました。具体的には、前日夕方17時30分時点で475万株超の買い注文が集まったと報じられています。これは、短期筋や個人投資家を始め海外ファンドなど幅広い買い需要が積み上がった表れです。

  • 上場規模の大きさや、親会社・ファンドの売出し比率の高さ(80%)、いわゆる出口型案件という側面から、需給面で重さも指摘されていましたが、半導体関連銘柄全体の株式市場での人気や堅調な業績見通しなどが支えとなり、強い買い需要が発生
  • 複数メディアや株式新聞などでは「初値予想3,800円」といった強気の見解も見られる一方で、市場規模の大きさゆえに初値急騰は限定的と慎重な声もありました

業績・財務状況のポイント

  • 2025年3月期 売上高:約1,180億円(117,974百万円)
  • 営業利益:約308億円(30,771百万円)
  • 純利益:約99億円(9,945百万円)

業績は、グローバル半導体市況の拡大と需要増を背景に、着実に拡大しています。とくに高精細フォトマスクの国内外での需要増が今後も収益拡大を下支えするポイントとなるでしょう。

テクセンドフォトマスクのIPOが持つ意味

今回のIPOは、単なる会社の新規公開にとどまらず、世界的な半導体投資加速の潮流や、親会社とファンドによる資本戦略、国内証券市場の需給バランス改善策など、さまざまなトピックが複合的に絡み合っています。
特に、

  • 従来型の親子上場という構造
  • ファンドによるエグジット(出口)戦略
  • 日本市場における超大型IPOの需給面へのインパクト
  • 半導体サプライチェーンの国内産業政策の観点

など、投資家や業界関係者から多角的な視点で評価されています。

株価の今後――投資家はどう見るべきか

初値がついた後の株価推移は市場全体の地合いや半導体関連の需給、業績動向、親会社やファンドの保有株売却動向などによって大きく左右されます。
一方、テクセンドフォトマスクは高い技術力と国内シェアNo.1の地位を武器に、今後も安定成長が見込める企業です。
また、半導体産業の国内回帰・需要増が加速している現状や、政府主導の産業戦略なども中長期的な業績の追い風となりそうです。

ただし、上場規模の大きさや売出比率の高さ、グローバル景気の変動、競合他社との技術競争など考慮すべきリスクも存在します。

まとめ――今後の動向に注目

IPO市場を賑わせたテクセンドフォトマスク。今後の株価を見守る上では、半導体産業全体の成長もさることながら、同社独自の経営戦略やイノベーションにも注目が寄せられています。上場初日の興奮は投資家だけでなく、産業界、証券業界にも大きなインパクトを与えました。安定成長への道筋と、新たな挑戦を続けるテクセンドフォトマスクの今後から目が離せません。

参考元