コクヨ新本社「KOKUYO HQ」公開――約90年ぶりの大阪本社移転、その狙いと新しい働き方
文具やオフィス家具で知られるコクヨ株式会社が、約90年ぶりとなる大阪本社の移転を行い、新本社「KOKUYO HQ(コクヨ エイチキュー)」を公開しました。
新拠点は、大阪・梅田北側の大規模再開発エリア「グラングリーン大阪」内のパークタワー高層階に位置し、「人と企業をつなぐ公開実験場」としての役割も担います。
本記事では、報道各社が伝えている内容をもとに、新本社の特徴やコンセプト、移転の背景、そして関西の老舗企業が続々とうめきたエリアへと移転する流れについて、やさしく分かりやすくご紹介します。
約90年ぶりの大阪本社移転――創業地から「うめきた」へ
コクヨは、明治時代に大阪で創業して以来、長く大阪を拠点として成長してきた老舗企業です。今回の本社移転は、およそ90年ぶりの大きな節目となるものです。
新本社は、大阪市北区大深町の再開発区域「グラングリーン大阪 パークタワー」の14階を中心としたフロアに開設され、「KOKUYO HQ」と名付けられました。
うめきたエリア(大阪駅北側再開発地区)は、関西の新たなビジネス・イノベーション拠点として注目されており、近年、関西を代表する企業が本社や主要拠点を相次いで移転・集約しています。
コクヨもこの流れの中で、新しい働き方やオープンイノベーションを加速させるため、創業の地から「うめきた」へと舵を切りました。
新本社の名前「KOKUYO HQ」に込めた意味
新本社の名称「KOKUYO HQ」は、単に「ヘッドクオーター(本社)」という意味だけでなく、「Human(人)」「Quality(質)」「Quest(探求)」といった、人や価値の探求を連想させるイメージも込められています。
社員だけが働く場所ではなく、「人や企業が集まり、共に学び、試しながら価値をつくっていく場」として位置づけられているのが特徴です。
家族と過ごせるオフィス――「お好み焼き」で生まれる新たな交流
「家族と過ごせるオフィス」をめざした設計
新本社で特徴的なのが、「家族と過ごせるオフィス」というコンセプトです。
従来、オフィスは「社員が働くための場所」として設計されてきましたが、コクヨはそこから一歩踏み出し、社員の家族も訪れやすく、安心して過ごせる空間づくりに取り組んでいます。
具体的には、子どもが安全に遊べるスペースや、家族と一緒にくつろげるラウンジエリアなど、オフィスでありながら「リビング」のような雰囲気を持つ場が設けられています。
これにより、社員が仕事と生活(ワークとライフ)を無理に切り分けるのではなく、ゆるやかにつなぎながら働くことができるよう配慮されています。
「お好み焼き」でつながるコミュニケーション
報道では、新本社におけるユニークな取り組みとして、「お好み焼き」を通じた交流の場づくりも紹介されています。
大阪を代表するソウルフードであるお好み焼きを囲みながら、社員同士はもちろん、家族やパートナー企業とのコミュニケーションを深める企画が行われています。
オフィス内には、飲食やイベントが行えるスペースが用意され、食事をともにすることで、部署や立場の垣根を超えた会話が生まれやすくなっています。
仕事の打ち合わせだけでは見えてこない、人となりや価値観を知るきっかけとして、「食」が重要な役割を担っているのです。
「公開実験場」としてのKOKUYO HQ――オフィスを開く発想
「人と企業をつなぐ新本社」というコンセプト
コクヨは新本社「KOKUYO HQ」を、「人と企業をつなぐ新本社」と位置づけています。
これは、単なる「コクヨ社員のためのオフィス」にとどまらず、法人顧客やパートナー企業、さらには社会に対して開かれたスペースとして機能させるという考え方です。
発表によると、KOKUYO HQは「公開実験場」として運用され、オフィス空間の使い方や働き方の実験を行い、その結果を今後の商品開発やサービス、提案に生かしていく方針です。
コクヨ自身が「実験台」となりながら、そこで得た知見を顧客と共有し、新しいオフィスづくりや働き方のモデルを発信していくことが期待されています。
ライブオフィスとしてのグランドオープン
新本社は、開設後、段階的に運用を始め、ライブオフィスとしてグランドオープンする計画が示されています。
ライブオフィスとは、実際に社員が働いているリアルな環境を、顧客やパートナーが見学できるオフィスのことを指します。
来訪者は、固定席の少ないフリーアドレスのワークエリア、チームでの議論に適したコラボレーションスペース、オンライン会議に対応した個別ブースなど、さまざまな空間を実際に見て体験することができます。
「どのような環境だと、どんな働き方やコミュニケーションが生まれるのか」を、コクヨ自身が日々検証している姿を、そのまま見てもらうことがねらいです。
オフィスは「働く場所」から「関係性を育む場」へ
コロナ禍以降の働き方の変化とオフィスの役割
新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、テレワークやハイブリッドワークが急速に広まりました。
その中で、「オフィスに行く意味」や「オフィスの役割」を見直す企業が増えています。
- 自宅でも仕事はできるが、偶然の出会いや雑談が減った
- オンライン会議が中心で、チームの一体感を維持しにくい
- 新入社員や若手が、先輩の仕事ぶりを間近で見る機会が減った
こうした課題を受けて、コクヨはオフィスを「単に作業をする場所」ではなく、「人と人の関係性を育む場」「企業文化を感じ、共有する場」として再定義しています。
家族も含めた多様な人が集まりやすい空間、食やイベントを通じた交流、オープンな見学・実験の仕組みなどは、その考え方の表れと言えます。
家具メーカーとしての自社実践
コクヨは、オフィス家具や文具をつくるメーカーとして、多くの企業に働き方改革やオフィスづくりの提案を行ってきました。
その企業が、自らの本社を「公開実験場」として位置づけることには、大きな意味があります。
自分たちが提案するオフィスづくりを、自社で徹底的に試すことで、理想と現実のギャップを見極め、より実践的なノウハウを蓄積できます。
机や椅子の配置、会議室のあり方、オンラインと対面のハイブリッド会議の方法など、日々の業務を通して得られる細かな気づきが、そのまま商品やサービスの改善に生かされることになります。
なぜ今、「うめきた」なのか――関西老舗企業の移転ラッシュ
関西の新たなビジネス拠点「グラングリーン大阪」
コクヨの新本社が入る「グラングリーン大阪」は、大阪駅北側の大規模再開発プロジェクトの一部で、オフィス、商業施設、ホテル、住宅、緑地などが一体となった複合エリアです。
「うめきた」エリア全体として、国内外の企業や研究機関、スタートアップなどが集まる「イノベーション拠点」として整備が進められています。
アクセス面では、JR大阪駅や各私鉄・地下鉄の梅田駅に近接し、京都や神戸など関西各地への移動も容易です。
将来的には関西国際空港や新幹線との連携も視野に入れた交通網が整備されるなど、ビジネス拠点として高い利便性を持っています。
関西老舗企業が移転する理由
報道では、コクヨに限らず、関西の老舗企業が創業地や従来の本社地区から、うめきたエリアへと移転する動きが相次いでいることが紹介されています。
その背景には、いくつかの共通した狙いがあります。
- 人材確保・採用競争力の向上:若い世代にとって魅力的な立地であり、働きやすい環境を用意することで、優秀な人材を惹きつけやすくなる。
- イノベーションの加速:周辺に多様な企業や大学、研究機関、スタートアップが集まることで、新しい協業やビジネスが生まれやすくなる。
- 企業イメージの刷新:老舗でありながら、変化に挑戦する姿勢を内外に示し、ブランド価値を高める狙い。
- BCP・機能集約:耐震性やインフラ面の強化、グループ機能の集約による効率化など、リスク管理や経営の合理化。
コクヨの移転も、こうした流れと無関係ではありません。
創業地で培った歴史やブランドを大切にしつつ、新たなビジネス環境に身を置くことで、次の時代に向けた企業変革を進めようとしているといえます。
地域とともに歩むコクヨのこれから
大阪発のグローバル企業として
新本社「KOKUYO HQ」は、コクヨにとって国内だけでなく、グローバル展開を進める上での重要な拠点としての役割も担います。
アジアをはじめ海外でもオフィス家具や文具事業を展開する中で、世界中の人々の働き方・学び方の変化をとらえ、新たな価値を生み出していくことが求められています。
その意味で、「人と企業をつなぐ公開実験場」としてのKOKUYO HQは、情報発信と共創のハブとして機能していくことが期待されています。
大阪・うめきたから生まれるアイデアやプロジェクトが、やがて世界のオフィスや学びの場に影響を与える日も遠くないかもしれません。
暮らしと仕事をつなぐ取り組み
コクヨは従来から、「働く」「学ぶ」「暮らす」といった領域を支える商品・サービスを展開してきました。
今回の新本社では、家族が過ごせる空間づくりや、地域・企業との交流、実験的なオフィス運用などを通じて、「暮らし」と「仕事」をなめらかにつなぐ実践が行われています。
オフィスが、社員だけでなく家族や地域の人にとっても身近な存在になれば、働く人の安心感や愛着も高まります。
そうした小さな変化の積み重ねが、企業文化を豊かにし、長く愛される企業であり続ける力になるのかもしれません。
おわりに――「開かれた本社」が示す新しい企業像
コクヨの新本社「KOKUYO HQ」は、約90年ぶりの本社移転という歴史的な節目であると同時に、オフィスのあり方を問い直す挑戦でもあります。
家族と過ごせるオフィス、食を通じた交流、「公開実験場」としての開かれた運用、うめきたへの移転によるイノベーション拠点との連携など、その一つひとつが、これからの企業と社会の関係性を示すヒントになっています。
オフィスは、単に机と椅子が並んだ「働くための箱」ではなく、人と人、企業と社会をつなぎ、関係性を育てる場へ。
コクヨの新たな挑戦が、大阪・関西、そして日本全体の働き方やオフィスづくりにどのような変化をもたらしていくのか、今後も注目が集まりそうです。



