フランクフルト市場も注目!TikTok米国事業売却を巡る動きとオラクル企業連合の台頭
はじめに
米国時間2025年9月16日から17日にかけて、米国IT大手「オラクル」を含む企業連合が、中国発の動画共有アプリ「TikTok」のアメリカ事業の売却先最有力候補として報じられました。これに伴い、フランクフルトなど欧米市場も大きな関心を寄せ、売却交渉や各国の動向が注目されています。
なぜTikTokの米国事業売却が話題になっているのか
- 国家安全保障:膨大な米国ユーザーデータが中国企業ByteDanceによって管理されていることへの懸念から、米政府は事業売却を強く要求。
- トランプ大統領の影響力:「TikTok問題」はトランプ前大統領のキャンペーン材料としても利用され、米中経済摩擦の象徴的な事例となっています。
- グローバル経済への波及:売却先やその条件によっては、国際的なIT業界、株式市場にも大きな影響が及ぶと見られています。
売却交渉の経緯と現在の状況
2025年9月16日、米ウォールストリート・ジャーナルは「オラクルを中心とする米国大手グループがTikTokの米国事業売却の有力候補」と報道しました。売却交渉の主な枠組みは次の通りです。
- 米企業連合(オラクルなど)が約8割の株式を取得
- 中国 バイトダンス側の出資は2割程度に抑制
- 米国事業の新会社設立予定。 取締役会の過半数を米国人が占め、うち1名は米政府が指名。規制リスク回避策として位置付け
- 既存のTikTok利用者は新アプリに移行する可能性
- 売却期限は2025年12月16日まで延長され、大統領令も発令
売却の鍵「技術」と「アルゴリズム」
世界的な注目を集めるTikTokですが、その成長の原動力となったのは独自開発のアルゴリズム(動画の表示順や推奨コンテンツの決定技術)です。このコア技術は「売却対象外」とされており、今後はバイトダンスからの ライセンス供与を受けて米国新会社が独自に開発を進める予定です。
この「アルゴリズムの扱い」こそが、国家安全保障上の最重要論点です。米政府や議会による厳しい審査が続いており、条件変更の余地も残っています。
オラクルはすでにTikTokへのクラウドサービス提供企業でもあり、「売却後も米国ユーザーデータの管理を担う」と報じられています。一連の動きはオラクルのクラウド事業への期待を高め、株式市場ではオラクル株に買いが集まる場面もありました。
株式市場への影響とフランクフルトの反応
今回のニュースは米国株式市場だけでなく、フランクフルトなど欧州市場にもダイレクトに影響しました。特にオラクルは、売却報道を受けて株価が1.49%上昇、一時は5.9%高を記録するなど、市場参加者の期待感が現れています。
AIクラウドの受注残急増など追い風もあり、オラクルは2025年4月の年初来安値118.86ドルから7月末には260.87ドル、9月には上場来高値345.72ドルまで急伸。その後は利益確定による値動きも見られましたが、クラウドインフラの主導権を握る存在としてさらなる注目が集まっています。
政治的背景と米中関係への示唆
今回の売却交渉においては、国家安全保障と情報管理の厳格性が突きつけられました。同時に、トランプ前大統領や現政権が中国との主導権争いでこの案件を強調してきた背景もあります。「TikTok問題」を巡っては野党・有識者から「トランプ氏は中国に取り込まれつつある」との指摘もあり、米中の対立構図が浮き彫りとなっています。
一方、中国側も譲歩の姿勢を見せつつ、新会社へのアルゴリズム供与や出資維持を通じて、独自の影響力を確保しようとしているとみられます。
米国のTikTokユーザーやクリエイターへの影響
- アプリの引き継ぎ:既存ユーザーは新たな運営体制下に移行。また、米国内運営の新アプリへの移行を求められる可能性
- プライバシー管理の強化:米国内データセンターでの管理徹底が予定され、個人情報流出などへの不安軽減が期待されます
- クリエイター活動の安定化:著名インフルエンサーやクリエイターは、新体制下で従来通り活動が続けられる見通し
今後の見通しとフランクフルトを含む世界市場への影響
9月19日には米中首脳による最終合意が協議される見通しとの報道もあり、今後の成り行きによっては株式市場は大きく反応することが予想されます。フランクフルト市場でもオラクルのみならず、IT銘柄や中国関連株、米中双方の影響を受けやすい企業に注目が集まりそうです。
また国家間の規制や法律、市場のガバナンス強化が本格化すれば、グローバルにビジネスを展開する他のIT企業への波及効果も避けられません。TikTok事業売却が実現すれば、それが新たなモデルケースとなり、次世代のインターネット経済や情報産業の安全規範確立につながる可能性も見込まれます。
まとめ
フランクフルトを含めた国際金融市場が注視するTikTok米国事業の売却劇は、安全保障、技術主権、グローバル経済のバランスをめぐる「現代的な課題」を象徴しています。オラクル企業連合による新体制がどのような形で発足し、世界のユーザー・市場へどのように波及するのか、今後も目が離せません。