「痔かと思ったらクローン病だった」─若年層に広がる肛門の異変とは
最近、若い人たちの間で「肛門に異変を感じたら、実は痔ではなくクローン病だった」というケースが増えています。クローン病は大腸や小腸など消化管の炎症を引き起こす病気ですが、特に肛門周りに独特の症状が現れることが多く、見過ごされやすいのが特徴です。
クローン病とは?
クローン病は原因不明の慢性炎症性腸疾患の一種で、消化管のどの部分にも炎症が起こる可能性があります。腹痛、下痢、発熱、体重減少などの全身症状だけでなく、肛門の病変も頻繁に発生し、患者さんの生活の質を大きく損ないます。
クローン病による肛門病変の特徴
肛門病変は、クローン病の患者の約70~80%に見られる合併症です。特に若年層で、よくある「痔」とは違う原因や症状が多く、見極めが重要です。
- 痔瘻(じろう):膿の通り道(瘻孔)が肛門周囲に形成される状態ですが、クローン病による痔瘻は形が複雑であったり太かったりし、治りにくいのが特徴です。一般的な痔瘻がお尻の後ろ側にできやすいのに対し、クローン病の痔瘻は場所が一定しません。
- 裂肛(れっこう):いわゆる「きれ痔」とも呼ばれる皮膚の裂けですが、クローン病の場合は裂け目が広く、周囲がむくみ炎症を起こしていることが多いです。
- 浮腫性痔核:肛門の皮膚がむくんで腫れて大きくなり、潰瘍になることもあります。
若年層に広がる肛門の異変、その背景にあるクローン病診断の遅れ
肛門に痛みや出血があると、多くの人がまず「痔」と考えます。しかし、特に10代から20代の若い人が痔瘻や痛みを繰り返す場合、クローン病が原因の可能性が高まります。実際、肛門の症状で病院を受診し、その後クローン病と診断されるケースも珍しくありません。
クローン病が肛門に先に症状を出すことも多く、こうした点が診断を難しくしています。痔としての治療をしても症状が改善しない、再発を繰り返す場合は、クローン病の専門医による精密検査が必要です。
早期診断・早期治療の重要性
クローン病は「不治の病」と言われることもありますが、早期に発見し適切に治療を行うことで、症状のコントロールや悪化の防止が可能です。特に肛門周囲の病変は患者のQOL(生活の質)に大きな影響を与えるため、専門的なケアが欠かせません。
若年層で肛門に異変を感じたら、自己判断で済ませるのではなく、早めに専門医に相談し、クローン病の可能性も検討してもらうことが大切です。
まとめ
「痔」と思っていた肛門の痛みや血便が実はクローン病の症状であった─。このようなケースが若年層で増加しています。クローン病は消化管全体に炎症を起こしやすい一方、肛門にも特有の複雑な病変を作りやすいことが知られています。特に再発を繰り返す肛門の痛みや切れ痔、膿の出る痔瘻がある場合には、クローン病の検査を受けることを強く推奨します。早期発見と適切な治療が、患者さんの長期的な健康維持と生活の質向上に繋がります。