2026年WBC侍ジャパンのメンバー選考が本格化~元中日監督・与田剛氏が30人の構想を発表
2026年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けて、侍ジャパンのメンバー選考が本格的に動き出しました。2009年と2013年の2度のWBCで投手コーチを務め、2009年の優勝に大きく貢献した元中日監督の与田剛氏が、10月30日に自身が考える30人の候補メンバーを発表しました。この発表は、今後の侍ジャパン構想を考える上で、非常に重要な指標となっています。
投手陣の構成~大谷翔平の登録区分に注目
与田氏が選出した投手は、前回大会の15人から大谷翔平選手を投手枠に含めず、野手およびDH(指名打者)としての登録を考慮した14人となっています。大谷翔平選手は、ロサンゼルス・ドジャースで投手と野手の二刀流として活躍していますが、2026年のWBCでは打者としての活動に主眼を置くという判断がされた形です。
投手の選考では、佐々木朗希選手(ドジャース傘下)を筆頭に、メジャーリーグで活躍する日本人投手や、日本プロ野球で実績を挙げている有望な投手たちが候補に上がっています。与田氏は前回大会での経験を踏まえながら、世界最高レベルの投手陣を構想しており、若い才能と経験豊かなベテランのバランスを重視していることがうかがえます。
キャッチャー選考~リード能力を重視した3人の配置
捕手の選考では、与田氏は「リードを重視して選んだ3人のキャッチャー」と述べており、試合の流れを作り、投手陣を統率する能力に特に注目しています。国際大会であるWBCにおいて、キャッチャーの役割は単なる守備や打撃にとどまりません。言語が異なる相手チームに対して、試合の主導権を握り、効果的なピッチングを引き出すための戦術的な判断が極めて重要になるのです。
与田氏は過去のWBC経験を通じて、こうしたリード能力の重要性を十分に理解しており、その経験が今回の選考に大きく反映されています。キャッチャーは投手陣を支える要となるため、技術面だけでなく、精神的なリーダーシップも求められる位置づけになっています。
与田剛氏が語る指導者としての経験
与田剛氏は、2009年の第2回WBCと2013年の第3回WBCの2大会で日本代表の投手コーチを務めました。当時、原辰徍監督から2008年にコーチ就任の誘いを受けた際、「まさか自分の野球経歴の中で、こんなお話が来るとは思っていませんでした。とにかく死に物狂いでやろうと思いました」と語っています。
与田氏は現役時代、中日などで守護神を務め、1990年には31セーブを挙げて新人王と最多セーブに輝いた実績を持ちます。2000年に引退後は解説者として活躍していましたが、プロ野球の投手を指導した実績はほとんどありませんでした。しかし、WBCという人生で一度の機会に真摯に向き合い、多くの経験と教訓を得ることができたのです。
試合を通じて得た貴重な経験と学び
与田氏は、WBC参加中の経験について、次のように語っています。「ロッカールームで誰も、一言も話さない、妙な瞬間が多々ありました。試合前、試合後、負けた後はもちろん、勝った試合の後でも。『打って反省、打たれて感謝』という言葉もありますが、僕自身、勝ったけれど、もう少し準備させてから投手交代させるべきだったミスを、投手自身の実力で帳消しにしてもらったこともあります」と述べています。
こうした経験から得た気づきや反省は、与田氏がその後、東北楽天や中日で監督・コーチとして指導者活動を行う際の基盤となりました。「得る物がたくさんあって、それを生かさないといけないと思い、東北楽天、中日と指導者をやらせてもらいました。それでも反省ばかりで、なかなか上手くいかないんですけど」と苦笑いしながらも、積み上げてきた一つ一つの経験が宝物だと述べています。
現在の侍ジャパンの状況と2026年への展望
2023年に開催された第5回WBCでは、栗山英樹監督率いる侍ジャパンが優勝を成し遂げました。現在、侍ジャパンの監督は井端弘和氏が務めており、2026年のWBCまで指揮を継続することが決定しています。井端監督は、大谷翔平選手を軸とした新しい世代の侍ジャパンを構想しているとみられています。
与田氏は、現在の日本プロ野球について、「今、日本のプロ野球は投打ともに本当にヤングパワーがすごい。もちろん、ベテランの経験は必要なのでバランスですよね」と評価しており、若い才能の活躍に期待を寄せています。メジャーリーグで活躍する大谷翔平をはじめとした日本人選手の躍進も、2026年WBCへの注目度を高めています。
与田氏が選ぶ30人メンバーの意義
与田剛氏が今回発表した30人の構想は、単なる個人的な予想ではなく、WBC経験者としての深い見識に基づくものです。投手14人、捕手3人を含む30人の構成は、国際大会における戦術的な要請と、現在の日本野球の人的リソースを考慮した現実的な提案となっています。
特に、投手陣の選考においてメジャーリーグで活躍する選手とNPBの有望株のバランスを取ることや、キャッチャーのリード能力を重視する姿勢は、今後の侍ジャパン構想を考える上で参考になるでしょう。2026年WBCまでの期間は、まだ1年以上ありますが、このような各界の専門家による提案は、井端監督や強化委員会の選手選考に貴重な情報をもたらします。
2009年のWBC優勝から約17年。与田氏を含む当時の経験者たちの知見が、新たな世代の侍ジャパンにどのように活かされるのか、2026年の本大会に向けた準備が着々と進んでいます。



