赤澤大臣、日米関税合意をめぐり参院予算委質疑へ――国会審議の背景と最新動向

2025年9月12日、日本とアメリカの間で締結された関税合意をめぐり、参議院予算委員会での審議が与野党合意のもと開催されます。今回の審議には赤澤亮正経済再生担当大臣(以下、赤澤大臣)の出席が正式に求められました。この動きは、与党自民党と野党立憲民主党の両国会対策委員長が、参院予算委員会での質疑に赤澤大臣の説明責任を重視し合意したことによります。本記事では、赤澤大臣をめぐる日米関税合意の経緯と国会論戦の背景、そして今後の日本経済への影響について、わかりやすく丁寧に解説します。

日米関税合意とは――自動車産業と経済成長への期待

8月に発効を迎えた日米関税合意は、両国の主要産業に直接関わる内容であり、中でも自動車関税の引き下げが注目の的です。赤澤大臣は8月上旬に米国を訪問し、「トランプ政権が新たに定めた自動車関税率を現行の25%から15%に引き下げること」の早期実施を要請しました。

この合意の影響は、単なる関税率の変更にとどまらず、GDP成長や雇用情勢にも波及します。例えば、相互関税が10%から15%に上がり、自動車関税が25%から15%に下がる場合、日本経済の実質GDP成長率は0.5%程度押し下げられるとも試算されています。そのため、政府だけでなく、輸出企業、ひいては消費者にも影響が及ぶ重要な外交成果となっています。

法的拘束力の有無と「行政合意」の実態――赤澤大臣の説明から

日米関税合意に対する最大の争点の一つは、「この合意は法的拘束力を持つのか?」という点です。2025年8月4日に開かれた衆議院予算委員会では、赤澤大臣がこの疑問に答えています。

赤澤大臣は「日米の合意は法的拘束力のある国際約束ではございません」と明言しました。つまり、今回の合意は国際条約などのような政府間で法的義務を課すものではなく、「行政レベルの約束」にとどまります。それでも、「双方が約束を守る前提で自主的に実行する」ことに大きな意味があるとし、両国の信頼関係の上に成り立っていることを強調しました。

国会承認を必要とする正式な条約とは異なり、今回は閣僚クラスによる「了解事項」となったため、議会での監督や国民への説明がより重要視されることとなっています。

参議院予算委の審議日程と石破首相の動向

この日米合意をめぐる予算委員会の審議は、9月12日に参議院で行われることで与野党が合意しました。審議には赤澤大臣が出席しますが、首相を兼任する石破茂総理は今回は出席しない予定です。

野党の間では、合意内容の詳細や今後の見通しについて首相にも直接説明を求める声が強まっていますが、与党側はまず関税交渉の当事者である赤澤大臣を中心に据えることで合意しました。

合意内容の詳細と今後の論点

  • 自動車関税:現行25%から15%へ段階的に引き下げ。早期発動が赤澤大臣から米側に強く要請された。
  • 半導体・医薬品関税:現時点では15%で据え置きだが、将来的にさらに高い分野別関税の導入可能性が指摘されている。
  • 相互関税:双方が15%で一致。ただし、一部分野・例外を巡る最終調整が継続中。
  • 発動時期:自動車については「できるだけ早く」実現することをめざして両国で調整が続いている。
  • 「約束」の実効性:米国側高官が「日本が合意を遵守しない場合は関税を元に戻す」と発言しており、今後の進捗管理が重要に。

各党・各業界からの反応

この合意を受けて、与党側は「産業界への影響を最小限にしつつ、日米関係を強化する前向きな合意」と評価する姿勢です。一方、野党や自動車メーカー、半導体産業などからは「国内産業への打撃をどこまで最小限にできるか」「中長期的な産業競争力の維持が課題」との声が上がっています。

赤澤大臣の米国訪問と今後の外交交渉

赤澤大臣は8月5日から9日にかけて米国を訪問し、米政権側との協議を重ねてきました。特にトランプ政権下での新関税政策が発動されるタイミングで、いち早く日本側の立場と産業界の要請を提起した点が日本政府の評価ポイントです。

米政府も国内産業保護の観点から妥協の余地を見せつつ、日本からの投資拡大やIT関連分野など新たな経済分野での連携強化を模索しています。今後も両国政府は継続的に協議を重ね、細かい分野別関税やさらなる自由化など個別協定の締結を視野に入れています。

まとめ:参院予算委で何が問われるか――国会論戦のポイント

  • 日米合意の実効性:「行政合意」にとどまる今回の枠組みで、日本の経済主権や国内産業への配慮はどこまで守られているのか。
  • 米国側の制裁権発動のリスク:合意不履行時の「関税差し戻し」など、今後の米側対応への備え。
  • 対米交渉と国内政治:石破政権の対米政策の評価と、赤澤大臣の政治責任。
  • 産業界・消費者への影響:自動車産業など主要分野への影響と、庶民生活への直接的な影響。
  • 国会審議の在り方:なぜ今回は総理不在で、担当大臣主導の質疑となったのか。

本件では、“形式的な条約”ではなく“行政合意”だからこそ、政治家や省庁担当者の判断や信頼が問われる場面が多くなります。今後の国会審議では、赤澤大臣がどこまで具体的な説明や将来の見通しに踏み込むかが注目されます。また、米国側の動向や国際環境の変化によっては、合意内容の再調整や追加交渉も十分にありうる状況です。

今後も、政府・国会、そして私たち国民一人ひとりが、こうした国際交渉の行方と暮らしへの影響を注視していく必要があります。

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