ガソリン税の暫定税率「年内廃止」実現へ――与野党6党が協議、補助金増額も調整

長年続いた「ガソリン暫定税率」廃止がついに現実味

2025年10月末、ガソリン税の暫定税率廃止を目指す動きが政治の最重要争点のひとつとなっています。与党と野党あわせて6党が同じテーブルで「年内での暫定税率廃止」を念頭に調整・協議を進めており、10月31日までに合意を目指していることが報じられました。これにより、50年以上続いたわが国のガソリン税制が大きな転換点を迎えようとしています。

ガソリン暫定税率とは?制度の仕組みと負担

ガソリン税の暫定税率とは、1974年のオイルショック後、道路整備財源確保などを目的として本則(本来の税率)よりも一時的に引き上げられた、いわば「上乗せ分」の税金です。1リットルあたり25.1円が通常の税率に加算されています。暫定といいながらも、実際にはほぼ半世紀にわたり自動車ユーザーや家庭にとって大きな負担となっていました。

廃止論議の経緯と最新の政治状況

  • 2024年12月、与党3党(自民・公明・国民民主)が暫定税率廃止に合意し、その後も協議が継続
  • 2025年6月、野党7党が共同でガソリン暫定税率廃止法案を提出
  • 10月15日、与野党実務者協議で廃止の原案作成に一致、年内実現見込む
  • 10月下旬、6党全体で協議。「11月廃止案」に対し、与党側からは「準備期間などを勘案し12月廃止」を提案。31日までの合意を目標と設定

このように、与野党ともに「年内の廃止」を現実的な選択肢として協議を進めており、近日中に歴史的な決定がなされる可能性が極めて高まっています。

ガソリン補助金の増額調整――段階的な価格対策も

現状、政府はガソリン価格高騰への救済策として1リットルあたり約10円の補助金を支給していますが、暫定税率廃止による急激な価格変動や混乱を避けるため、今後11月13日以降、補助金を最大25.1円まで段階的に増額する調整も進んでいます。これにより「いきなり値下がり→再値上がり」という混乱を避け、消費者のメリットを確実なものにする狙いです。

  • 暫定税率廃止前後の段階的な補助金引き上げ
  • 廃止後は基本的に「補助金終了」も視野に、価格を安定化

消費者・家計へのメリット――どれくらい安くなる?

今回の暫定税率廃止が実現すると、ガソリン価格は1リットルあたり最大25.1円の値下げとなります。車の給油頻度や用途にもよりますが、年間を通すと一般的な家庭で7,000円~9,670円の家計負担軽減が見込まれています。

さらに、運送コストの減少を通じて、食料品や日用品など幅広い分野での価格安定化も期待されます。

  • 家計のガソリン出費減
  • 物流費の低減→物価上昇の抑制効果

自動車・運送業界、地方経済へのプラス影響

ガソリン暫定税率廃止によって、配送業・運送業の経費も大幅減少が見込まれます。これにより、電車やバス等公共交通、さらには地域経済にも好循環が広がる形となります。

  • 物流会社のガソリン代負担が減少
  • 中小企業のコスト圧縮で経営改善が期待
  • 輸送費の減少は、地方の観光・農業等にも波及

結果として、長く続いた「ガソリン高」の悩みが解消に向かう一歩となるのです。

課題――兆円単位の税収減、その財源は?

一方で、今回の政策には大きな難題も残ります。暫定税率の廃止により、
国税で年1兆円超、地方で約5千億円の税収が減少する見込みです。
これまで道路整備など公共インフラ維持に充てられてきた分の財源について、
国も地方も抜本的な見直しが急務となっています。

  • 財政収支への影響(税収減による赤字拡大リスク)
  • 道路整備・メンテナンス費用の確保
  • 恒久的な代替財源の検討が法案成立の鍵

国会・政府の議論と今後の焦点

与野党協議では、廃止時期だけでなく、こうした「財源問題」や、
廃止後の補助金扱い、地方自治体との調整まで多岐にわたり議論が進められています。
特に、与党内では準備期間を慎重視する声もあり、
「11月1日から」とする野党案と、「年末~年明け」にしたい与党案との間で
最終調整が続いています。

廃止実現が早ければ、年内の臨時国会中に法案が可決される可能性も。また、
現状の補助金も、今後「一時的な増額・段階廃止」のシナリオが有力と考えられています。

市民や事業者の声――期待と不安が交錯

多くの一般家庭や事業者からは「生活費負担が減る」「経営の助けになる」と歓迎の声が挙がる一方で、
「道路の質や地方のインフラ維持はどうなるのか」という不安も根強く残ります。

  • ガソリン価格高騰で悩んできた市民の期待
  • 過疎地域・インフラ維持への根強い不安
  • 運送業界や農業団体も「速やかな決定と明確な財源対策」を要望

今後の見通し――最終合意・法律成立のスケジュール

与野党協議が順調に進めば、10月31日までに基本合意→11月中の国会提出→年内成立というスケジュールも十分現実的です。
その後の補助金制度の移行措置や、2026年以降の税制全体の見直しも課題となります。一方で、
「兆円単位の財政見直し」という難題もあるため、法案の成立と並行し、国民的な議論が続くことになるでしょう。

まとめ――50年ぶりの大転換、国民生活と財政に持続的な議論を

ガソリン税暫定税率廃止は、生活者・事業者双方に大きな恩恵をもたらす一方、国・地方財政面の覚悟が問われる重大な決断です。
今後も政府・国会、地方自治体、さらに市民レベルでも「公共サービス維持と生活緩和」両立の最適解を探る必要があります。

国をあげての議論が、いよいよ最終局面へ。わたしたち一人ひとりも燃料節約やエネルギー効率など、生活に近いところから意識的な暮らしを進めていくことが、よりよい経済・社会を築くための一歩となるのかもしれません。

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