国会議事堂が完成した11月7日――その歴史と建築の舞台裏

はじめに

国会議事堂は1936年(昭和11年)11月7日に完成し、今日も日本の立法府の象徴として永田町にそびえ立っています。この日は、日本の政治や建築史にとって特別な節目となった日です。本記事では「きょうは何の日」で取り上げられるこの歴史的な出来事を起点に、議事堂が歩んできた長い道のり、その設計思想や建造の舞台裏、さらには議事堂内部で行われている“異様な撮影ルール”といった政治取材の裏側まで、わかりやすく解説します。

国会議事堂の完成まで――長き道のり

明治から昭和へ、33年にわたる建設プロジェクト

国会議事堂の完成は、決して一朝一夕に実現したものではありません。明治時代の最初の構想から始まり、大正時代に設計の公募と技術討議が重ねられ、昭和11年(1936年)11月7日にようやく竣工を迎えました。その間、33年にも及ぶ長期プロジェクトとなったのです

  • 明治19年(1886年):内閣に臨時建築局が設置され議事堂の調査が始まる
  • 大正8年(1919年):帝国議会議事堂(本議事堂)の建設が始まる
  • 昭和11年(1936年)11月7日:竣工式が行われ、完成が正式に発表

着工から17年近い時間を要し、建設中には大きな荒波もありました。関東大震災(1923年)や仮議事堂の焼失など、幾多の試練を乗り越え、ようやく堅牢な建物が完成しました

デザインと象徴性――「国の顔」を体現する建築

議事堂のデザインは左右対称の平面ピラミッド型の中央塔を特徴とし、当時の建築技術と「国の威信」を余すところなく反映しています。
中央塔の高さは65.45メートルで、当時は日本最高の建築物として、東京のスカイラインの象徴的な存在でした。この独特な形状は二院制(衆議院・参議院)を建築的に表現したものでもあります

  • 全体は新古典主義的スタイルを基調
  • 外壁は国産の花崗岩、一部には世界各国から寄贈された石材も用いられた
  • 中央玄関へ続く大階段など、随所に重厚な意匠がみられる

徹底した「国産材」へのこだわり――技術力の証明

建材はすべて国産で賄う方針が貫かれ、昭和という時代の自国資源活用意識が色濃く反映されています。また、大地震に備えた耐震性の強化も随所に施され、建築技術の粋を集めた国家的プロジェクトとなりました

「国会議事堂完成」の社会的意義と、移りゆく時代

完成式典――3000人が見守った日

1936年11月7日――ついに議事堂が完成し、国内外から約3000人が竣工式に参列しました。この日、日本の立法府の物理的・象徴的な基盤が確立されたのです。
記念式典には当時の広田弘毅内閣総理大臣をはじめ、衆議院・貴族院の議長ら要人が登壇。そのスピーチで新時代の到来が高らかに宣言されました

完成同年には「二・二六事件」が発生するなど日本は歴史の転換期を迎えていましたが、議事堂はその後の議会制度の発展と民主主義の歩みに不可欠な舞台となりました

戦後の国会議事堂――憲法制定後の象徴

第二次世界大戦が終わった1946年、新たな日本国憲法が制定され、国会議事堂は“国権の最高機関”としての役割を担うことになりました。かつての「帝国議会議事堂」は、今や“民主主義の殿堂”として生まれ変わって現在に至ります

  • 1955〜1964年、周辺区画整理や敷地拡張も行われた
  • 今なお日本の政治の中心地であり、一般見学も可能

取材現場の裏側――「走ってはいけない」国会議事堂の異様な撮影ルール

厳格な撮影規制、その理由と舞台裏

国会議事堂内では報道取材にさまざまな独自ルールが設けられています。代表的なのが「走ってはいけない」という撮影規制です。元テレビ局員などによると、議事堂内は静粛と秩序が極めて重視され、廊下でカメラマンや記者が駆け足で取材対象に追いつこうとする行為は厳禁とされています。

  • 報道各社のカメラマンは警備員や館内スタッフから常に監視されている
  • 取材対象者がどこを通るか事前に情報が共有されても、走って追いかけるのはマナー違反
  • 議員の表情や小さな動きにも細心の注意を払い、慎重に“絵”を撮る必要あり
  • 事故防止や来賓への配慮、議事進行の妨げ防止を目的にしたルールも多い

このような独特のルールは日本の議会文化を象徴しており、“一つの国の中心地”という緊張感と秩序維持の重要性が強調されています。

“政治取材の裏側”――記者たちの苦労と誇り

厳しいルールの中で取材を続ける記者たちは、日々政治の中枢の生の現場を追いかけています。
中には「話しかけたり音をたてたりしてはいけない」「所定の順路以外は通れない」といった、テレビでは分からない苦労も。しかし、こうした規律の中でしか撮影できない“瞬間”が、しばしば歴史的ニュース映像として残ります。

だからこそ国会議事堂の取材現場では、静けさの中に張り詰めた熱気が漂っているのです。

国会議事堂を通して感じる、日本の政治と建築の底力

見学者として知っておきたい豆知識

  • 一般にも公開されており、衆議院・参議院ともに見学ツアーの申し込みが可能
  • 内部には重要文化財級の装飾や国産大理石を使った贅沢な空間が多数
  • 議事堂内には時計の止まった部屋(議事整理室)や、「空の台座」など、都市伝説的な話題も

国会議事堂は単なる建物ではありません。日本史の転換点を幾度も目撃してきた“国家の舞台”であり、今もなお日本の「現在」を映し出し続けています。
完成から現在まで受け継がれてきた重厚な空間、そして議会民主主義の象徴。この日――11月7日には、そんな国会議事堂の歴史と現在に、あらためて思いを寄せてみてはいかがでしょうか。

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