NY市長選、クオモ氏が猛追で「gap」縮小──注目の世論調査と構図を徹底解説

2025年11月4日の投開票を目前に控え、ニューヨーク市長選がかつてないほど注目を集めています。今年の選挙では、急進左派「民主社会主義」を掲げるゾーラン・マムダニ氏と、前州知事で無所属のアンドリュー・クオモ氏の一騎打ちの構図が際立っています。この1週間、マムダニ氏がリードしていた「gap(支持率差)」が着実に縮まっており、選挙戦は最終盤で激しい攻防を迎えています。

話題の「gap」──最新世論調査が示す接戦の全貌

10月28日に公表された複数の世論調査によれば、今夏にはマムダニ氏が20ポイント以上のリードを保っていたものの、直近では差が10ポイント未満にまで縮小しており、大接戦となっています。

  • 最新調査(サフォーク大学)では、マムダニ氏 44%、クオモ氏 34%、共和党スリワ氏 11%という結果
  • 別の調査(Zenith Research/7月)では、マムダニ氏58% vs クオモ氏37% (直接対決時は52% vs 48%)と、時間経過で差が縮小
  • この「gap」縮小を背景に、投資家や政財界の思惑も錯綜しています

これまで大差と見なされた構図が緊張感をもって展開し、NY市民の投票行動だけでなく、全国的な政治バランスや政策議論にも波及しています。

候補者の特徴と争点──「労働者VS富裕層」の代理戦争

今回の選挙は、労働者階級と富裕層、そして進歩主義とエスタブリッシュメントの対立構図としても語られます。

  • ゾーラン・マムダニ(34歳)
    • ニューヨーク州下院議員(民主党)
    • 「ビリオネアが存在すべきでない」と繰り返し発言、 格差是正・社会福祉強化・民主社会主義を掲げる
    • 大都市初の同路線市長誕生へ期待
  • アンドリュー・クオモ(67歳)
    • 元NY州知事(無所属、元民主党)
    • 女性職員へのセクハラ問題で一時政界引退したが、政財界エリートや現市長から支持を集める
    • テクノロジーや暗号資産、AIを軸とした成長戦略を主張

両者の戦いは「単なる市長選」を超え、米国内外の状況から見ても歴史的な意味を帯びています。

富裕層と巨大マネーの介入──選挙資金が選ぶ未来

選挙のもう一つの大きな話題が「ビリオネア(超富裕層)と大口寄付」です。ビル・アックマン氏など大手ヘッジファンド勢や、全米ビリオネアが2200万ドル(約34億円)以上の巨額をクオモ陣営等に寄付。これは「富裕層に増税」と公約するマムダニ氏への警戒感の現れです

  • 超富裕層からの資金が前面に出ることで、「選挙の中立性」や「市民の声 vs マネー」の対立軸も可視化
  • 都市の未来だけでなく、全米の政策転換や格差是正の象徴となる一戦

米連邦政府・全米を巻き込む余波──トランプ大統領の動きも焦点

今回のNY市長選はニューヨークだけでなく、全米政治への”試金石”でもあります。現大統領ドナルド・トランプ氏は公然とマムダニ氏への強い警戒心を表明し、「180億ドルの連邦資金の凍結」という異例の大統領令を発動までしています

  • 「民主社会主義」市長誕生への牽制
  • 共和党と富裕層の連携構図が鮮明に
  • 現職市長エリック・アダムス氏もクオモ支持を明確化

トランプ大統領をはじめ、全米の主要権力層が「NY市政」を巡り神経を尖らせる特異な状況です。

クオモ氏の「NY復活」戦略──テクノロジーと成長への再挑戦

クオモ陣営が急追できている最大の理由が、“ニューヨークの新たな成長戦略”の提示です。クオモ氏は10月、新しい公約として「最高イノベーション責任者(CIO)」の創設を打ち出しました。これは、市政全体でAI・バイオ・暗号資産といった分野の統合的な推進と、世界最先端都市への構造転換を目指すものです

  • AI・ブロックチェーン・バイオの専門家による「イノベーション評議会」設置
  • 分散型金融(DeFi)、暗号資産の世界的拠点化を目指す
  • 民間投資の呼び込みで「市の再活性化」を主張

この大胆な案に「行政サービスの効率化」「ベンチャー振興」「雇用創出」期待も高まり、成長志向の有権者に一定の支持が集まりつつあるのです。

マムダニ氏の「格差是正」公約──市民視点の経済再建論

一方、マムダニ氏は徹底した「市民目線」を強調し、

  • 公営住宅政策の拡充
  • 医療・教育の無償化推進
  • 労働者賃金の抜本的引き上げ
  • 警察改革や公民権強化

など、進歩的かつ格差是正を象徴する政策を訴えています。この姿勢が今のNY若年層、移民系住民、労働者層に強く支持されています。

「gap」縮小の理由──なぜ接戦へ?

この「gap」縮小の背景について、複数の識者や分析が挙げられます。主な要因は以下の通りです。

  • 超富裕層による巨額選挙資金の流入──クオモ氏への資金集中が広告や組織動員を活発化
  • 現職市長アダムス氏などエスタブリッシュメントの全面支援
  • テクノロジー政策・経済成長戦略の効果的アピール──産業界・イノベータと結びつきやすい中間層の支持が進行
  • 一方で、マムダニ氏のラディカルな主張や一部反感も選挙戦終盤に影響
  • 全国的な趨勢やトランプ氏の動きも、選挙意識を変化させた

残る争点と今後の行方

今後の最大焦点は、「gap」のさらなる縮小と、どちらが最後に“決め手”を得るかです。

  • クオモ氏が掲げるデジタル都市構想や大企業誘致策が「高所得層」や「ビジネス層」に広がるか
  • マムダニ氏の進歩的改革路線が、これまで選挙に消極的だった層をどこまで動員できるか
  • 全米注目の中、投資家や大企業・連邦政府の圧力が「NY独自の姿勢」維持にどう影響するか

わずか1週間のうちに選挙戦の雰囲気が劇的に変化する可能性もあり、多くの現地メディアや国際的な論客が熱い議論を繰り広げています。

まとめ:「gap」縮小が象徴する、その先のニューヨーク

今回のNY市長選は、単に市のリーダーを選ぶだけでなく、アメリカ社会全体の潮流や価値観の変化を色濃く映し出しています。マムダニ氏とクオモ氏の「gap」は数値上のものに過ぎません。真に問われるのは、「誰のための政治なのか」「どんな都市を目指すのか」という核心です。

最終投票日を前に、最後の一週間でこの“gap”が消えるのか、それとも歴史に新たな「左派市長」の名が刻まれるのか——。世界最大級都市の選択に、今、全米が注目しています。

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