オーストラリアで反移民デモ拡大、政府はネオナチ関与を強く非難――住宅不足や物価高背景に

はじめに

2025年8月31日、オーストラリア各地で大規模な反移民デモが発生しました。シドニーやメルボルンをはじめとする主要都市で、政府の移民政策に反対する数千人規模の人々が街頭に集まりました。今回のデモは「March for Australia(オーストラリアのための行進)」と名付けられていますが、政府はこの動きについてネオナチ組織が背後で糸を引いている可能性を強く批判しました。

デモ発生の背景

  • 住宅不足の深刻化:過去数年の急速な人口増加と都市部への集中により、住宅供給の不足が続いています。家賃の高騰や住宅購入が困難になる現象が各地で発生しています。
  • 物価上昇:インフレやエネルギー価格の高騰が市民生活に大きな影響を与えています。一部市民は、移民受け入れ拡大が物価高騰や生活費の上昇に拍車をかけていると不満を訴えています。
  • 「移民大国」への反発:オーストラリアはかねてより多文化・多民族国家として移民を積極的に受け入れてきました。しかし近年は移民の急増を受け、経済や社会基盤への負荷を懸念する声が高まっていました。

デモの特徴と参加者の主張

今回の抗議活動は、短期間で各都市に広がり、合計で数千~1万人規模に膨れあがりました。参加者の多くは、政府の移民政策によって「自国民の雇用や福祉が脅かされている」と主張しています。

  • 「オーストラリア人を第一に」とのスローガンが繰り返し掲げられ、大衆の不安や不満を背景に反移民感情が顕在化しました。
  • 一部の集会では、ネオナチ思想を示唆する旗や記号が確認され、過激な発言も見られました。

政府と警察の対応

オーストラリア政府および州政府は、今回のデモについて「ヘイトの温床」になりかねないとして強く批判しました。また、「ネオナチによる組織的な煽動があった」と明言し、市民に対し冷静な対応を呼びかけました。政府はまた、警察に対し警備強化と公共の安全確保を指示しています。

  • 一部都市ではカウンター・デモ(反対派による抗議活動)も発生し、警察当局は一触即発の状況を防ぐため両陣営を厳重に分離しました。
  • シドニーやメルボルンでは小規模な逮捕や退去命令が出されたものの、大規模な暴力事件には発展していません。

ネオナチの関与と社会的な懸念

政府は、ネオナチや極右団体がデモの組織や拡散に関与していたことを強調しています。彼らがインターネットやSNS上で移民排斥意識を煽り、集合を扇動していたとされます。

  • このようなヘイト集会は前例が少なく、社会の多様性や共生の価値を脅かしかねないものとして、専門家や市民団体からも懸念の声が上がっています。
  • カウンター・デモの参加者は「多文化共生こそオーストラリアの強み」とし、分断を助長する排外主義への警戒を訴えました。

市民社会の反応とメディア報道

多くの全国メディアや評論家は、今回のデモを「社会的分断の象徴」として扱っています。近年、都市部を中心に格差・不平等感が強まるなかで、「海外からの移民が経済や雇用を奪っている」という誤解や感情が広がりやすい土壌があるとの分析が目立ちます。

  • 一方で、客観的な研究では「移民による経済成長や労働力確保の貢献」が指摘されており、政策のバランスや啓発活動の重要性を訴える声も増えています。
  • ネオナチや極右団体によるプロパガンダ拡散を警戒する専門家からは、社会が簡単にヘイトスピーチや極端な言説に流されないような仕組み作りと教育活動の強化を求める声が挙がっています 。

今後の展開と社会への課題

オーストラリアは今後も多民族・多文化社会の歩みを続けるとみられますが、「移民政策」を巡る議論は今後さらに激しくなる可能性があります。政府は、今回の事態を受け、対話による社会統合や、住宅・物価問題への現実的なソリューション探しを急いでいます。

  • 移民受入れ政策の再検討とともに、本質的な生活の困難さ――すなわち住宅不足や物価高、社会保障格差などへの包括的な対応策が求められています。
  • 同時に、ルーツや背景に関わらず全ての市民が安心して暮らせる「寛容な社会」の維持が問われているとも言えるでしょう。

まとめ

2025年8月31日の大規模反移民デモは、オーストラリア社会が抱える「多様性と分断」「経済的不安と社会的受容」の課題を浮き彫りにしました。ネオナチや極右団体の関与への警戒、そして問題の本質を見極める冷静な議論と政策形成が不可欠です。

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