65年の歴史に幕を下ろした東映最後の直営映画館「丸の内TOEI」こけら落としからの歩み
東京・銀座に位置する老舗映画館「丸の内TOEI」が、2025年7月27日をもって65年の歴史に終止符を打ちました。この映画館の閉館は、東映株式会社が直営してきた最後の劇場が姿を消すことを意味し、多くの映画ファンや関係者に惜しまれながら歴史の一ページを閉じました。
「丸の内TOEI」の誕生と歩み
「丸の内TOEI」は1960年9月20日に東映の本社ビル「東映会館」内で開業しました。当初は「丸の内東映」として、洋画を中心とした封切館「丸の内東映パラス」としてスタートし、東映作品の発信基地として重要な役割を果たしました。開館記念作品は沢島忠監督・二代目大川橋蔵主演の『海賊八幡船』でした。
2004年には「丸の内TOEI」として名称を統一、現在の2スクリーン体制となり、自社作品の上映はもちろん銀座をはじめとした映画業界全体の活性化にも大きく寄与してきました。日本に残る最後のロードサイドシアターとしても親しまれ、多くの映画ファンに愛され続けました。
閉館の背景と最後の舞台挨拶
丸の内TOEIの閉館は東映本社ビルの老朽化および再開発計画に伴うものです。2025年1月16日に閉館が発表されて以降、「さよなら 丸の内TOEI」と題した80日間にわたる特集上映が行われ、東映ゆかりの名作映画100本以上がスクリーンにかけられました。多数のスター俳優も出演した舞台挨拶やイベントも開催され、映画ファンと劇場スタッフが惜別の時を共にしました。
閉館当日の7月27日、女優の吉永小百合さんがサプライズ登壇し、感動的な舞台挨拶を行いました。吉永さんは「映画を映画館で見る楽しさを忘れたくない」と語り、「丸の内TOEIはなくなりますが、映画館で観る魅力はこれからも大切にしてほしい」と強い思いを述べました。これまでに銀幕で輝いたもう一人の大スター、故高倉健さんも最後の上映作品に登場し、劇場に訪れた人々の胸に深く刻まれました。
丸の内TOEI閉館プロジェクトの意義
閉館までの特集上映や関連イベントは、単なる閉幕ではなく、東映が日本の映画文化に果たした役割を再確認する機会でした。このプロジェクトは映画館文化の重要性を再認識させるものであり、多くの映画ファンから惜しみない支持を得ました。丸の内TOEIの公式サイトやSNSでは、閉館までの取り組みやファンのメッセージが公開され、全国からの感謝の声が寄せられました。
こうした取り組みは、東映にとっても新たな未来への第一歩であり、映画興行の新たな形を模索する上での節目となりました。
東京・銀座から映画館文化の歴史を振り返る
- 開館当時:洋画封切館として東映作品のほか多彩な映画を上映。
- 2004年以降:名称統一と2スクリーン化で現代的な上映環境に対応。
- 2015年〜2025年:東映唯一の直営館として、イベントや特集上映を多数開催。
- 2025年7月27日:65年の歴史に幕。吉永小百合さんの舞台挨拶が感動的なクライマックスに。
丸の内TOEIの閉館により、東映の直営映画館としての歴史は一旦終わりますが、その文化的な意義は大きく、これまで支えられてきた映画館の価値を伝える役割を果たしました。映画館で観る映画の良さを次世代へ繋ぐことが、今後の日本映画界の課題とも言えるでしょう。
映画館で映画を観る喜びを未来へ
今回の閉館で、「映画館で映画を観る」体験の尊さが改めて注目されました。画面の大きさ、音響、上映の臨場感は自宅鑑賞では得られない特別な価値を持っています。吉永小百合さんが語ったように、この映画館文化は失われることなく、別の形で継承されていくことが期待されます。
映画館の閉館は寂しいニュースですが、丸の内TOEIが築いた豊かな映画の歴史と、多くの映画ファンの心に刻まれた感動は、これからも映画業界全体の活力となるでしょう。