柳葉敏郎にみる“かわいい”中年男性俳優の魅力と、そのギャップ──新たな時代の男性像とは
はじめに:最近の話題「かわいい」中年男性俳優たち
2025年8月現在、ドラマや映画で活躍する中年男性俳優たちが“かわいい”という評価を受け、大きな話題となっています。柳葉敏郎さんや阿部サダヲさん、遠藤憲一さんといった実力派俳優たちが従来の「渋い」「怖い」「威厳がある」だけではなく、年齢を重ねたからこそ放つ柔らかさや親しみやすさ、“ギャップ”が注目されているのです。
柳葉敏郎のこれまでのイメージ
柳葉敏郎さんといえば、やはり『踊る大捜査線』シリーズでの室井慎次役が印象的です。寡黙で常に眉間にしわを寄せている厳格なイメージがありました。その威圧感ある存在感は、テレビドラマや映画ならではの“大人の魅力”を感じさせるものでした。
しかし、柳葉さんの室井慎次は人情に厚く、単なる厳格さや怖さだけでなく、人間味あふれる部分や温かみも印象的でした。2024年公開の『室井慎次 敗れざる者/生き続ける者』では、よりいっそう人としての柔らかさ、優しさにも光が当たっています。
いつから“かわいい”と呼ばれるようになったのか
“かわいい”という形容詞は一般的に若い女性や子供に対して使われがちですが、近年では中年男性俳優にも用いられるようになりました。特に柳葉敏郎さんの場合、その流れが顕著になり始めたのはここ数年です。
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』(2023〜2024年)で演じたスズ子(趣里さん)の父・梅吉は、おおらかでどこか少年っぽさが漂う役柄でした。昔の厳格なイメージから一転、“年齢を重ねて丸くなった今の柳葉敏郎だからこそ演じられる役”として、多くの視聴者に親しみを持たれているのです。
この現象に戸惑いを覚えるファンも少なくありません。「あの怖かった柳葉が、今はこんなに“かわいい”だなんて!」という驚きの声も見受けられます。
“ギャップ”が生み出す親しみやすさ
近年の中年男性俳優たちが“かわいい”と評される大きな要因は、やはり従来のイメージとのギャップにあります。柳葉さんの他にも、阿部サダヲさんや遠藤憲一さんがその典型でしょう。
- 阿部サダヲさんは、2011年放送の『マルモのおきて』での親しみやすい父親役が転機となり、それまでのコミカルかつ屈折したイメージから“癒し系”“かわいい”へのシフトが始まりました。
- 遠藤憲一さんは、かつてはVシネマの悪役としての強面イメージが定着していましたが、近年では『白い春』やNHK朝ドラ『てっぱん』、さらには『私のおじさん〜WATAOJI〜』でおじさん妖精というトリッキーな役柄を演じ、「かわいい」「親しみやすい」という新たな評価を獲得。
こうしたギャップを演じることで、視聴者は役者の“新しい一面”を発見し、より身近に感じるようになります。そこに年齢を重ねたからこそ出てくる優しさやあたたかみ、チャーミングさが加わることで、“かわいい”という賞賛が生まれているのです。
若者にも人気!SNSが生んだ新たなムーブメント
さらにここ数年、俳優自らのSNS活用も“かわいい”ブームを後押ししています。
- 遠藤憲一さんは料理写真をSNSに投稿し、その時の「エンケンポーズ」が若者の間で話題に。親しみやすさはネット世代にも届き、10代・20代からも人気を集めています。料理や素の笑顔を見せることで、より一層“かわいい”イメージが定着しています。
- 柳葉敏郎さんも、最近はバラエティ番組や情報番組に出演し、淡々とした語り口や穏やかな佇まいが「優しそう」「癒される」と話題になっています。
また、ファンとの距離の近さも見逃せません。例えば遠藤憲一さんは、バラエティ番組『あんたの夢をかなえたろかSP2024』で、どうしても会いたいという8歳の少女の夢をかなえるために一日デートを実現し、ネット上でも大きな反響がありました。
ドラマで活躍する“かわいい中年男性俳優”の現在
2025年夏ドラマでも、柳葉敏郎さんをはじめ、阿部サダヲさんや遠藤憲一さんは相変わらず存在感を放っています。
- 柳葉敏郎さんは新ドラマでも、かつての厳格な雰囲気と、年齢を重ねてからの柔和さをうまく使い分け、絶妙な存在感を示しています。役の幅も広がり、頼れる上司や理解のある父親役など、「一緒にいたら安心できそう」と感じさせるポジションで活躍しています。
また、現場スタッフや共演者への配慮、若い役者たちへの優しさが伝わるエピソードも多く、こうした人柄がスクリーン越しにも伝わるのでしょう。「大人の余裕」「丸みを帯びた優しさ」こそが現在の中年俳優の魅力なのかもしれません。
変化する男性像と社会的背景
これまでは「威厳のある大人」「強い父親」像が男性俳優には求められがちでした。しかし、多様性や優しさ、共感が重んじられる現代社会では、柔和さ、包容力、かわいらしさといった側面も新しい男性像として求められるようになりました。
柳葉敏郎さんの現在の演技には、まさにこうした時代の価値観が反映されています。年齢を重ねたこと自体が俳優としての“味”となり、人生経験がにじむ温かみやチャーミングさが、観ている人々の心を和ませてくれるのです。
おわりに:柳葉敏郎らが築く、現代の“癒やし系中年”のスター像
「かわいい」と評されることに最初は戸惑いもあるかもしれません。しかし、柳葉敏郎さんや彼に続く中年男性俳優たちが見せる“ギャップ”と“柔和さ”は、今こそ視聴者や社会に求められている新しいスター像です。
主役だけでなく、大切な脇役やお父さん世代の共感者として、軽やかに、そして温かく作品を支える──。そんな中年“かわいい”俳優たちの今後にも、ますます注目が集まっています。