バッド・バニー、グラミー賞最優秀アルバム賞受賞でICE問題に声を上げる
第68回グラミー賞で、プエルトリコ出身のアーティスト・バッド・バニーが最優秀アルバム賞を受賞しました。受賞作品は「デビ・ティラル・マス・フォトス」(Debí Tirar Más Fotos)で、音楽界の最高栄誉を手にしました。しかし、注目を集めたのは彼の受賞スピーチです。バッド・バニーはこの舞台を利用して、アメリカの移民問題に対して強い声明を発表しました。
スピーチで移民への差別に抗議
バッド・バニーは最優秀アルバム賞受賞のスピーチの冒頭で、「ICE out」と宣言しました。その後、彼は次のように述べています:「俺たちは野蛮じゃない、動物じゃない、エイリアンじゃない。俺たちは人間であり、アメリカ人だ」。
このメッセージは、アメリカの移民執行局(ICE)に対する強い抗議の言葉です。バッド・バニーのプエルトリコ出身というバックグラウンドを考えると、ラテンアメリカ系移民が直面する差別や不当な扱いへの深い憂慮が伝わってきます。グラミー賞という世界中が注視する舞台で、彼は自分たちの人権と尊厳を守るための声を上げたのです。
ヒップホップ文化の伝統を引き継ぐ
バッド・バニーのスピーチに対しては、SNS上で大きな反響が起きました。「これぞヒップホップの精神」「音楽と政治は切り離せない」といった支持のコメントが殺到しました。
興味深いことに、バッド・バニーの音楽は形式上はレゲトンやトラップに分類されていますが、その精神性とストリートからの支持基盤はヒップホップそのものであり、彼の発言は広義の「ヒップホップ文化」の政治的声明と解釈できます。これは、有名なラッパー・ケンドリック・ラマーが過去にグラミー賞のステージで人種差別や警察の暴力を告発してきた伝統と共通するものです。
バッド・バニーが示したように、ヒップホップとその周辺ジャンルは、単なるエンターテインメントではなく、社会的抵抗の場であり続けています。2026年のグラミー賞授賞式は、その伝統がいまも健在であることを世界に示したのです。
ケンドリック・ラマーも歴史的記録を達成
バッド・バニーのスピーチが話題となったこの授賞式では、別の大きなニュースもありました。ラップアーティストのケンドリック・ラマーが、4部門での受賞を果たし、グラミー賞の通算受賞数で歴史的な記録を達成したのです。
ケンドリック・ラマーは、最優秀ラップアルバム賞(『GNX』)、最優秀ラップソング賞(「tv off」feat. Lefty Gunplay)、最優秀メロディックラップ・パフォーマンス賞(「Luther」with SZA)、そして最優秀ラップ・パフォーマンス賞(「Chains & Whips」with Clipse)の4部門を制覇しました。これにより、彼の通算グラミー受賞数は26個に達し、それまで首位だったジェイ・Z(25個)とカニエ・ウェスト(24個)を抜いて単独首位に立ちました。
特に注目すべき点は、前年2025年にケンドリック・ラマーがドレイクへのディストラック「Not Like Us」で一夜5冠を達成していたことです。つまり、2年連続で計9つのグラミーを獲得したことになり、これは単なる「良い年が続いた」のではなく、彼のアーティストとしての圧倒的な力を示す証となっています。
グラミー賞は社会の声を反映する場
バッド・バニーのスピーチとケンドリック・ラマーの受賞の背景には、より大きな意味があります。それは、グラミー賞がいかに社会的な重要性を持つイベントであるかということです。
バッド・バニーが移民問題を、ケンドリック・ラマーが人種問題と社会正義を、それぞれのキャリアを通じて取り上げてきたように、音楽業界の最高峰の舞台は、単なる音楽的成果の祝いではなく、社会的メッセージの発信の場となっています。
2026年のグラミー賞授賞式は、アメリカが直面する様々な社会的課題に対して、アーティストたちが声を上げ、世界に向けて重要なメッセージを発信する場となりました。バッド・バニーの「俺たちは人間であり、アメリカ人だ」という言葉は、移民への差別に苦しむ多くの人々の心に響き、ヒップホップ文化が持つ社会的抵抗の精神が今も生きていることを証明しました。
音楽で社会を動かす力
バッド・バニーとケンドリック・ラマーの活躍は、音楽業界がいかに社会的な影響力を持っているかを改めて認識させます。彼らの受賞とスピーチは、単なる音楽的成功ではなく、社会正義と人権擁護の声として、多くの人々に希望と勇気を与えています。
グラミー賞という世界的な舞台を利用して、自分たちの信念を堂々と表現したバッド・バニー。そして、その圧倒的な音楽的才能で前例のない記録を打ち立てたケンドリック・ラマー。2026年のグラミー賞は、音楽がいかに社会を変える力を持っているかを世界に示した、歴史的な授賞式となりました。



