インバウンドで変わる日本の観光地図――検索ランキングと予算から見る最新トレンド

日本を訪れる外国人観光客、いわゆるインバウンドは、この数年で急速に回復・拡大しています。そのなかで、「どの観光地がいま注目されているのか」「日本側はどのように受け入れ体制を整えようとしているのか」は、多くの自治体や観光事業者にとって重要な関心事です。

今回は、ナビタイムジャパンのスポット検索ランキングや、観光庁の補正予算、そして全国でインバウンド人気No.1となったスポットなど、2025年12月前半に発表された最新ニュースをもとに、日本の観光とインバウンドの「いま」をやさしく解説します。

2025年、一番検索された観光地は? ユニバやディズニーを抑えた「東京ビッグサイト」

ナビタイムジャパンが発表した「2025ナビタイム スポット検索ランキング」では、同社の各種ナビゲーションサービスで、2025年に目的地として検索されたスポットを集計しています。

この調査によると、2025年に日本国内で最も検索されたスポットは、昨年に引き続き「東京ビッグサイト」でした。2位は「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」、3位は「東京ディズニーランド」と続き、トップ3の顔ぶれ自体は前年と変わっていません。

「観光地」と聞くとテーマパークや名所旧跡を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、東京ビッグサイトのような大規模イベント会場が首位を占めている点は特徴的です。展示会や学会、ライブなど、多様なイベントを目的に人が集まる「都市観光」の存在感が、年々高まっていることがうかがえます。

ランキング全体を見ると、東京ビッグサイトのほかにも、

  • ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
  • 東京ディズニーランド
  • 東京ディズニーリゾート関連施設
  • 東京ドームなどのイベント会場

といったテーマパークやスタジアム、都市型商業施設が多くランクインしています。これは、国内外の旅行者にとって「イベント+観光」「ショッピング+観光」といった複合的な楽しみ方が定着していることの一つの表れといえるでしょう。

大阪・関西万博がじわじわと存在感――新たにランクインしたスポット

2025年のランキングでは、「大阪・関西万博会場」が新たに総合ランキング7位に登場しました。また、「グランフロント大阪」も27位にランクインしており、大阪エリアへの関心の高まりが見て取れます。

大阪・関西万博は会期を控えつつも、すでに会場周辺へのアクセスや周辺観光への興味が高まっており、検索数の増加という形で先行して表面化しています。観光面では、万博そのものに加え、近隣の大阪市内観光、さらに京都・奈良への周遊なども期待されており、今後のインバウンド動向に大きな影響を与えると考えられます。

定番観光地の根強い人気――清水寺・出雲大社・旭山動物園など

都道府県別の人気観光スポットを見ると、首都圏では「東京ディズニーリゾート」「東京スカイツリー」などの定番スポットが引き続き多く検索されています。一方、地方部では、

  • 京都の「清水寺」
  • 長野の「善光寺」
  • 島根の「出雲大社」
  • 北海道の「旭山動物園」
  • 群馬の「草津温泉」

など、その地域を代表する歴史的名所や自然・温泉地が選ばれていることが紹介されています。

また、交通手段別のランキングでは、

  • 電車部門:テーマパークや商業施設が上位に並び、「東京ビッグサイト」が2年連続1位
  • バス部門:京都の「清水寺」が3年連続でトップ
  • 車部門:島根の「出雲大社」が前年に続き1位
  • バイク部門:「千里浜なぎさドライブウェイ」が初の首位

となっており、移動手段の違いによって、選ばれる観光地の傾向が変わる点も興味深いところです。

訪日外国人観光客に最も検索されたスポットは「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」

今回のランキングでは、訪日外国人観光客向けナビゲーションアプリ「Japan Travel by NAVITIME」で検索されたスポットも、別途集計されています。そのインバウンド向けランキングで1位となったのが、関西にあるテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」です。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、前年の3位から順位を上げてトップとなり、インバウンド人気が一層高まっていることがわかります。2位は「奈良公園」、3位は「伏見稲荷大社」、4位は「大阪城天守閣」、5位は「清水寺」が続き、上位5つを関西の観光スポットが占める結果となりました。

つまり、インバウンドの視点では、

  • 大阪(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、大阪城)
  • 京都(伏見稲荷大社、清水寺)
  • 奈良(奈良公園)

といった関西エリア全体が、非常に魅力的な周遊ルートとして機能していることがうかがえます。

エリア別で見えるインバウンド需要の違い

ナビタイムジャパンの資料では、インバウンド向けランキングをエリア別にも分析しています。たとえば、

  • アメリカ圏:1位「奈良公園」、2位「大阪城天守閣」、3位「浅草寺」、7位「厳島神社(宮島)」など、いわゆるゴールデンルートと呼ばれる定番観光地が上位に入っています。
  • ヨーロッパ圏・東アジア圏:新たに「勝尾寺」がランクインするなど、地域ごとの嗜好の違いも見られます。

このように、全体としては東京・京都・大阪などの定番スポットへの人気が続く一方で、国・地域によって「どの寺社や街並みに魅力を感じるか」「どの体験に価値を感じるか」は異なっており、きめ細かな情報発信多言語対応の重要性が増していることがわかります。

全国でインバウンド人気No.1のスポットは「SAMURAI NINJA MUSEUM」

一方で、インバウンド専業メディアの「訪日ラボ」などがまとめた全国インバウンド人気観光地ランキングでは、全国でインバウンド人気No.1のスポットとして「SAMURAI NINJA MUSEUM」が紹介されています。

このランキング(全国編)TOP10は、

  • 1位:SAMURAI NINJA MUSEUM
  • 2位:東京タワー
  • 3位:東京スカイツリー
  • 4位:清水寺
  • 5位:大阪城
  • 6位:浅草寺

といった顔ぶれになっており、東京や大阪のランドマーク的な建造物、そして京都の歴史的寺院が安定した人気を保つなか、「SAMURAI NINJA MUSEUM」のような日本文化を体験できる施設が1位に輝いている点は注目に値します。

刀や忍者といったコンテンツは、映画やアニメ、ゲームを通じて世界的にも認知度が高く、「日本らしさ」を象徴するイメージとして広く受け入れられています。そのため、単に展示を見るだけでなく、コスチューム体験やパフォーマンスなどを通して「参加型」で楽しめる施設が、インバウンド観光のなかで存在感を増していると考えられます。

観光庁補正予算225億円――オーバーツーリズム対策が本格化

観光客の増加は地域経済にとって大きな追い風となる一方で、一部の観光地ではオーバーツーリズム(観光公害)と呼ばれる問題も顕在化しています。こうしたなか、観光庁は補正予算として225億円規模を計上し、オーバーツーリズム対策などに取り組む方針を示しました(インバウンド情報まとめ「2025年12月前編」より)。

具体的な施策としては、

  • 混雑が集中するエリアや時間帯を分散させるための情報提供や周遊促進
  • トイレ・ゴミ箱・案内表示などのインフラ整備
  • 地域住民と観光客の共生を図るルールづくりやマナー啓発
  • 地方部への誘客を促すプロモーション支援

などが挙げられており、「量」から「質」へと転換を図る動きがより鮮明になっています。

特に、京都や富士山周辺、浅草など、世界的に知られたスポットでは、住民生活や自然環境への影響が課題となってきました。こうした場所では、単に「もっと来てください」と呼びかけるのではなく、受け入れ側の体制整備と、観光客側の意識変容を同時に進めていく必要があります。

インバウンド対策に役立つ「マーケティング資料まとめ」も公開

インバウンド需要の拡大に対応するため、多くの自治体や企業が「どの国から、どんな人が、何を求めて日本を訪れているのか」を把握しようとしています。こうしたニーズに応える形で、訪日ラボは「インバウンド対策に役立つマーケティング資料まとめ(12月前半公開分)」を公開しました。

ここでは、

  • 国・地域別の訪日客動向
  • 人気の観光地ランキング
  • SNSや口コミサイトでの評判分析
  • 多言語対応やキャッシュレス対応の事例

など、現場で役立つ最新データや調査結果がコンパクトに整理されています。こうした資料を活用することで、

  • 自分たちの地域が、海外からどう見られているのか
  • どのような情報を、どの言語で発信すべきか
  • どの決済手段やサービスを整備すると喜ばれるのか

といったポイントを具体的に検討しやすくなります。

ランキングと政策が示す、日本のインバウンドの「いま」と課題

ここまで見てきたように、

  • ナビタイムの検索ランキングでは、「東京ビッグサイト」やテーマパークなど都市型観光・イベント観光が引き続き強い
  • 訪日外国人向けランキングでは、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」が1位となり、関西エリアの人気が一段と高まっている
  • 別の調査では、「SAMURAI NINJA MUSEUM」が全国インバウンド人気No.1となり、日本文化体験型施設への関心が顕著
  • 観光庁は225億円の補正予算でオーバーツーリズム対策などを進め、持続可能な観光の実現を目指している

という構図が浮かび上がってきます。

今後、インバウンドを含む観光振興を考えるうえでは、

  • 人気スポットへの集中をどう緩和し、周辺・地方部に人の流れを広げるか
  • 外国人旅行者のニーズの多様化や地域差を踏まえた情報発信をどう行うか
  • 住民生活や環境と両立させた持続可能な観光をどう設計するか

といった視点がますます重要になっていきます。

ランキングや統計データは、単なる「人気投票」ではなく、こうした課題に向き合うための出発点です。今回紹介した最新のインバウンド動向を、自分の住む街や地域の観光のあり方を考えるヒントとして、ぜひ活かしてみてください。

参考元