中野区が舞台の最新文学事件簿――岩崎う大さん絶賛、羽田圭介『その針がさすのは』11月27日発売

東京都中野区を舞台に、現代日本の片隅に潜む「不思議」と「戦慄」を描き出す芥川賞作家・羽田圭介さんの最新作『その針がさすのは』が、2025年11月27日、新潮社より刊行されることが決定しました。この作品は、第2回東京中野文学賞大賞受賞作としても話題を集めており、話題の中心には中野区在住のお笑いコンビ「かもめんたる」の岩崎う大さんによる「戦慄」を込めた絶賛コメントがありました。

『その針がさすのは』のあらすじと舞台

『その針がさすのは』は、東京・中央線沿線の中野区を舞台に、不妊治療に取り組む若い夫婦の日常と、そこに突如として忍び寄る「歴史の断絶」と「接続」を鮮烈に描いた作品です。主人公が住む中野は、再開発が急速に進む現代都市。サンプラザの閉館、高層マンションの建設と、日々変わっていく街並みの陰に、かつてこの街が戦前の満州国と密やかに「電信ケーブル」でつながっていたという噂が浮上します。現実と非現実の狭間で揺れる日常、そして若い世代が抱える家族や未来への不安――羽田圭介さんならではの緻密な描写と、鋭い社会観察がこの物語を支えています。

岩崎う大さんによる「戦慄」のコメント

中野区在住の岩崎う大さんは『その針がさすのは』を「中野は不思議だ。機械時計も不思議だ。絶対なんかやってるって。じゃなきゃおかしい。この小説も。」と評しています。このコメントからは、ごく普通の街並みの中に潜む「異質さ」や「不可解さ」に敏感な芸人の心が感じられ、読者にも同じような感覚を呼び起こすヒントになっています。う大さんの存在は、地元住民ならではの共感や違和感を作品にプラスし、よりリアルな「中野の不思議」を読者に届ける役割を果たしているといえるでしょう。

羽田圭介の到達点と本作の意義

羽田圭介さんは2003年に高校在学中に文藝賞を受賞してデビューし、2015年の『スクラップ・アンド・ビルド』で芥川賞を受賞するなど、現代日本を代表する作家のひとりとして幅広い読者層を持っています。『メタモルフォシス』『成功者K』『Phantom』『滅私』『タブー・トラック』『バックミラー』など次々に話題作を発表し、社会の歪みや人間の孤独、現代家族のリアルを鋭く描いてきました。本作『その針がさすのは』では、再開発が進む中野区というごく身近な「今」を通して、歴史や社会、そして個人の記憶が交錯する「現代小説の新たな地平」を切り拓いています。

作品のテーマの一つは「不妊治療」という現代的な社会問題。そこに「満州と繋がっていたかもしれない中野」という都市伝説的な要素が絡み合い、現実と非現実、そして歴史と未来が入り混じる世界が立ち上がります。この物語の深さは、単なる都市伝説ものやホラー小説ではなく、現代に生きる者の心の奥底に横たわる「断絶感」と「接続への希求」を浮き彫りにしている点にあります。

読者の反応と話題性

『その針がさすのは』は、すでに文学ファンの間で大きな話題を呼んでいます。岩崎う大さんによるコメントだけでなく、作品の舞台である中野区の「リアルな変化」を感じ取った読者からの共感も多数寄せられています。特に、中央線沿線に住んだことがある世代にとっては、中野や阿佐ヶ谷、高円寺の違いや、街の微妙な変化が描かれていることにリアリティを感じる声が多いです。

また、この作品は電子書籍でも同日発売されるため、幅広い世代の読者が手軽に楽しめる点も魅力です。定価は1,925円(税込)、四六判ハードカバー160ページ、ISBNは978-4-10-336113-8です。書店やオンライン通販、電子書籍ストアでの予約受付もすでに始まっています。

中野区の現在と文学の力

中野区は近年、再開発が急速に進み、新旧が入り交じる街としても注目されています。かつての飲み屋街は今も昔ながらの姿を残しつつも、警察学校跡地などは若いファミリー向けの施設として生まれ変わっています。このような「変化と継続」が交差する場所だからこそ、都市伝説や歴史の「繋がり」を感じさせる物語が生まれやすく、羽田圭介さんの繊細な筆致がそのリアリティを際立たせています。

また、『その針がさすのは』は「東京中野文学賞」の大賞受賞作でもあります。今年で2回目となるこの賞は、中野区観光協会・中野文学賞実行委員会が主催し、地域と文学の結びつきを強める新しい文化的事業としても注目されています。地元の作家や芸能人が作品にコメントを寄せることで、より地域に根差した文学の広がりが期待できるでしょう。

まとめ――文学と地域、そして現代が交差する物語

羽田圭介『その針がさすのは』は、中野区という一つの街を舞台に、現代社会が抱える問題と歴史の断片、そしてそこに生きる人々の心の奥底にある「不思議」を描いた物語です。岩崎う大さんの率直な感想は、作品の持つリアルな不思議さと読者の共感を的確に表現しています。

これからの日本社会が直面する「断絶」と「接続」、家族のあり方や、都市の移り変わりの中で自分を見失わないためのヒントが、この一冊には詰まっています。2025年11月27日、ぜひ書店や電子書籍ストアで手に取って、あなた自身の「中野」を感じてみてください。

関連情報

  • タイトル:その針がさすのは
  • 著者:羽田圭介
  • 発売日:2025年11月27日
  • 出版社:新潮社
  • 定価:1,925円(税込)
  • ジャンル:文学・評論
  • ISBN:978-4-10-336113-8

参考元