元フジテレビアナウンサー石本沙織さんが語る「橋本病」とは ― すべての女性に知ってほしい自己免疫疾患の実像

はじめに

2025年9月、元フジテレビアナウンサーの石本沙織さんが、自身が患う「橋本病」について明るく、前向きに語りかけるニュースが世間の注目を集めました。石本さんは、橋本病であることを公表し、病気の知識や経験をシェアすることで、「多くの女性にこの病気について知ってほしい」という強い思いを伝えています。

本記事では、石本沙織さんの体験談を中心に、橋本病の基礎知識、治療方法や生活の工夫、女性が注意すべきポイントなどを分かりやすく解説します。

橋本病とは

橋本病は、甲状腺(のどの前側にある小さな臓器)に慢性的な炎症が起こる自己免疫疾患のひとつです。体を守るはずの免疫システムが、誤って自分自身の甲状腺細胞を攻撃してしまい、甲状腺ホルモンの分泌量が低下します。

  • 正式には「慢性甲状腺炎」とも呼ばれます。
  • 甲状腺ホルモンの不足(甲状腺機能低下症)につながりやすく、さまざまな体調不良の原因となります。
  • 日本の中高年女性に多くみられますが、男性も発症することがあります。

石本沙織さんが橋本病を告白した理由

石本さんが橋本病を公表した背景には、「症状はあるのに気づかず、つらさを我慢してしまう人が多い」ことへの危機感がありました。彼女自身も長女を出産してから1年もたたない頃、授乳中に偶然診断されたそうです。若い女性を含め、症状に気付かずに放置しているケースが少なくないという現実が存在します。

発症のきっかけと初期症状

石本さんは35歳のとき、フジテレビ社員の定期健康診断(人間ドック)で「喉ぼとけの下が腫れている」と指摘され、専門病院で精密検査を受けた結果、「橋本病による甲状腺機能低下症」と診断されました。

  • 発症の初期は自覚症状がほとんどない場合もあります。
  • 日常的なだるさや疲労感、または体重の増加、寒がり、肌の乾燥など、気づきにくい症状も多くみられます。

橋本病の治療について

橋本病の本質的な治療は、甲状腺ホルモンの不足を薬で補うことです。石本さんの場合も、2021年(令和3年)から甲状腺ホルモン剤「チラージン」の服用を開始し、症状が大きく改善されました。

  • 治療薬は毎日1回服用します。
  • 服用を始めると体が楽になり、生活の質が向上したと実感しています。
  • 血液検査でホルモンの値をモニタリングし、薬の量や必要性を医師と相談しながら調整します。
  • 石本さんは現在、状態が安定しているため、チラージンの服用は中止し、定期的な通院と脂質異常症の薬のみ続けています。

治療経過として、「薬を続けることへのプレッシャーを感じなくてよい」と薬との付き合い方を見直し、専門医に相談しながら自分のペースで治療を進められることの安心感を語っています。

生活の工夫と日常の心がけ

橋本病の管理では、食事や生活習慣にも注意が必要です。

  • ヨウ素の過剰摂取を避けるため、「昆布だし」ではなく「かつおだし」を使うよう医師から指導されました。
  • 塩昆布や昆布を多用する食文化のある地域出身の石本さんは「食生活の見直し」に苦労もしつつ、「無理をしない」「がんばりすぎない」ことで体への負担を減らすことの大切さに気づいたと話します。

「目の前の幸せを大切にする」「日々の小さなことに感謝する」といった前向きな生き方こそが、病気とうまく向き合う秘訣とも語っています。

女性と橋本病 ― なぜ知っておくことが大切なのか

橋本病は特に女性に多い疾患であり、妊娠・出産期にも影響を及ぼす場合があります。

  • ホルモンバランスが変化しやすい女性は、症状に気付きにくいこともしばしばです。
  • 妊娠中でも治療薬の服用に問題はないとされますが(個人差あり)、軽度であれば「薬無し」で経過観察となる場合もあります。
  • 出産を機に発症や発覚するケースも報告されています。

また、未診断の場合、無駄に「自分を責めてしまう」傾向があるほか、症状に気付いて病院を受診することが重要です。定期的な健康診断の受診や、わずかな不調にも耳を傾けることが、早期発見へとつながります。

検査とフォローアップ

橋本病の管理には、定期的な血液検査が欠かせません。石本さんも「3ヶ月に1度は血液検査を受け、ホルモン値や血中の脂質を見る」ことで、適切な薬の調整と健康管理を続けています。

  • 日々の体調変化を記録するなど、セルフモニタリングも重要です。
  • 病院での診断以外に自己判断で薬の増減をするのは避けましょう。

社会的な啓発の必要性

石本さんのように著名人が体験を公表し、発信することが「症状の見過ごしを減らす」きっかけになっています。彼女は「我慢しすぎず、困ったらお医者さんに相談を」と呼びかけています。

  • 「自分らしく」「無理のないペースで」病気と向き合うこと。
  • 不調を感じるときは自己判断で我慢せず、専門医の診断やサポートを受ける社会の雰囲気が大切です。

まとめ ― 病気と生きる、前向きな選択

石本沙織さんは、橋本病と上手に付き合いながら、日々を前向きに過ごしています。その姿は、同じ病気に悩む多くの女性、そしてこれから発症を知るかもしれない全ての人々へのエールとなっています。

「無理しない」「自分の幸せを大切にする」という彼女の言葉には、苦しい時期を乗り越えた実体験と、誰もが抱える不安を乗り越えるヒントが詰まっています。橋本病は早期発見と適切な治療があれば、健康的な生活を送ることができます。日々の小さな変化を大切にし、ご自身や大切な人の健康を守るためにも、「知ること」から始めてみてはいかがでしょうか。

本記事が、橋本病という病気を少しでも身近に感じてもらえるきっかけとなり、多くの女性が「自分らしい幸せ」を見つける一助となることを願っています。

参考元