トランプ氏、インドの「関税ゼロ」提案に辛辣な批判――米印関係の現在地

トランプ氏がSNSでインドの動きを批判

2025年9月1日、アメリカの前大統領ドナルド・トランプ氏が、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」にてインド政府がアメリカ製品への関税をゼロにする提案をしたことを明らかにしました。しかし、トランプ氏は「遅すぎる。何年も前にそうすべきだった」と厳しい口調で責任を問う一文を投稿し、強く批判しました。

トランプ氏はインド政府の提案に対し、アメリカとインドの友好の深化や貿易障壁解消に期待する一方、なぜ今になってこのような措置が取られたのか、その遅さを問題視しています。さらに、インドがアメリカ製品の関税をゼロにする動きは「数年前にするべきだった」と繰り返し述べました。

米印関係と背景にあるロシアとの取引

トランプ氏がこのような批判を展開する背景には、インドとロシアの関係が深まっていることへの懸念があります。インドは石油や軍事製品の大半をロシアから購入しており、アメリカからの購入はごくわずかであると指摘しています。ウクライナ戦争が継続する中、インドがロシア産原油の輸入を続けていることへ、アメリカ政府は強い不満を示しています。

この状況から、トランプ氏は2025年8月下旬にインドに対して追加関税を50%に引き上げる措置を発表し、米印関係は一層冷え込むこととなりました。

さらに、その数日前には中国・天津で開催された上海協力機構(SCO)サミットで、インドのナレンドラ・モディ首相、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の習近平国家主席が親密に会談した様子が世界中に報じられ、インドとロシア・中国の多層的な結びつきが注目されています。

インド政府の関税ゼロ提案、その意図は?

今回、インド政府がアメリカ製品の関税ゼロ提案を打ち出した背景については、様々な憶測が飛び交っています。主な理由として考えられるのは以下の通りです。

  • 米印関係の改善への意欲―米国との貿易摩擦を緩和し、相互協力を促進する意図が込められている可能性
  • ロシア産原油輸入への批判回避―米国からの経済的圧力を軽減し、国際世論へ対応するための外交的アプローチ
  • 国際サミットを意識したイメージ戦略―中国・ロシアと親密な関係を維持しつつも、アメリカとの距離を慎重に調整

ただし、トランプ氏の発言通り、アメリカ側は今回の提案を「遅きに失した」とみなしており、即座に現状が改善される見通しは立っていません。

インドのロシア産原油輸入に関する現状

インド政府は「ロシア産原油輸入で不当な利益を得ているわけではない」と明確に否定しています。また、インドの石油相はロイター通信の取材で「インドは市場価格で原油を調達しており、不当な利得はない」と強調しています。

しかし、アメリカでは依然としてインドがロシアへの経済的影響力拡大を容認しているという批判が根強く、この問題は今後も米印間の大きな火種となることが予想されます。

米印の貿易交渉はどうなるのか

今回の騒動は、世界市場や外交関係全体に大きな影響を与える可能性があります。各国の経済や防衛政策が複雑に絡み合う中、米印両政府は今後も交渉を継続するとみられますが、信頼関係の回復には時間がかかる可能性があります。

また、インドはアメリカへの歩み寄りだけでなく、中国・ロシアとの連携も強めており、世界のパワーバランスがさらに変化する局面に直面しています。

まとめ:今後の展望と日本への影響

  • 米印貿易摩擦の長期化により、グローバル経済に動揺が広がる可能性
  • アメリカを中心とする西側諸国と中国・ロシア・インドの結束強化による新たな国際秩序の模索
  • 日本としては、米印双方との友好関係維持と国際協調を重視した戦略的な対応がますます求められる

今後もトランプ氏とインド政府の動向が世界経済の先行きを左右する重要な要素であり、この交渉の行方から目が離せません。

参考:トランプ氏とインドの貿易をめぐる主要発言と日程

  • 2025年8月下旬:米国、インドへの追加関税50%導入
  • 2025年9月1日:インド、関税ゼロを提案――トランプ氏がSNSで批判投稿
  • 2025年9月1日:中国・天津で上海協力機構(SCO)サミット開催、モディ首相・プーチン大統領・習主席の会談

このような歴史的転換点で、日本としても自国経済や外交安全保障に与える影響を慎重に見極めていく必要があります。今後の各国首脳の発言や政策転換がもたらす波及効果についても、引き続き注視してまいります。

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