サンバイオ、脳再生薬「アクーゴ」と米国TBIフェーズ3の進展が示す新時代

はじめに

サンバイオ株式会社は、日本発のバイオベンチャーとして、長年にわたり中枢神経系疾患の治療に革新をもたらす医薬品の研究開発を続けてきました。2025年9月、サンバイオはその中核製品「アクーゴ(一般名:バンデフィテムセル)」の承認取得への進捗、そして「外傷性脳損傷(TBI: Traumatic Brain Injury)」に関連する米国でのフェーズ3治験に関するFDAとの合意など、医療現場や投資家だけでなく社会全体でも注目を集めています。

サンバイオが実現した“脳を再生する薬”の意義

「アクーゴ」は脳の再生を目指した世界初の細胞医薬品であり、2024年7月、日本では「外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善」を効能・効果として条件付き承認を取得しています。従来、脳損傷後の慢性的な神経機能障害は一度生じると治療が困難とされてきましたが、サンバイオの開発するバンデフィテムセルは、患者自身の骨髄由来幹細胞を加工・培養することで、損傷部位に移植し組織の再生を促すという、まさに“再生医療”を体現する薬剤です。

  • 患者が自立出歩きや手先の動作を一部でも回復するなど、生活の質(QOL)向上に大きな期待を集めている
  • これまで有効な治療法が乏しかった外傷性脳損傷(TBI)や慢性期脳梗塞に新たな治療選択肢を示す

承認状況と今後の展望

現在、「アクーゴ」は日本での市販承認取得後、一部出荷制限の解除のため追加データを準備し、2025年8月~2026年1月の承認取得を目指しています。市販用製品と治験製品の品質同等性検証を含む規格試験等で合格基準を満たし、規制当局への一部変更承認申請を進めている段階です。

  • 3回目の市販品製造が基準を満たし、最後の承認条件クリアに前進
  • 2025年下半期での承認・2026年前半の販売開始を目指している

アクーゴの承認取得は、外傷性脳損傷だけでなく、将来的な応用として慢性期脳梗塞でも追加適応拡大を目指し、既に国内ではPMDA(医薬品医療機器総合機構)と新たな治験協議を準備中です。

米国TBIフェーズ3:FDAとの合意に至るまで

2025年、サンバイオは長年の目標であった米国FDAとのフェーズ3試験デザインに正式合意を達成しました。過去に日本、米国、ウクライナで実施した第2相STEMTRA試験の結果や、日本での条件付き承認の実績などが米国での最終フェーズ治験協議に大きく寄与しました。

  • 日本での承認実績が米国治験設計に好影響を与え、エビデンスの相互活用によってグローバルでの最適化が進んでいる
  • 協議経過を踏まえ、今後は詳細を詰めつつ、2026年前半から米国TBIフェーズ3試験への準備開始が見込まれる
  • 治験実施には追加資金が必要であり、サンバイオは研究助成金や提携先の確保に取り組む方針を示している

なぜサンバイオの再生医療薬が“革新的”なのか

これまで外傷や脳梗塞等の中枢神経損傷では、「リハビリによる残存機能の維持・最大化」が主要な治療目標でした。しかしサンバイオの独創的な細胞移植治療は、失われた神経機能自体の回復=根本治療を実現する可能性を示しています。再生医療の観点では、人体の自己修復力を利用しつつ、ヒト骨髄由来幹細胞の分化能力と組織誘導作用を活用しているのが大きな特徴です。

  • 細胞医薬品は、従来の低分子薬や抗体薬とは全く異なるメカニズムで働く
  • 従来治療で“その先”を諦めざるを得なかった重い後遺症患者にも希望を与える

サンバイオの今後の展望と社会的意義

脳損傷由来の運動障害患者は現在、全世界で数百万人規模と推定され、高齢化社会の進展に伴い日本国内でも患者数の増加が予想されます。アクーゴの一般普及が進めば、患者だけではなく社会全体の介護負担減・医療費抑制・労働力維持にも寄与することができると期待されています。

さらに、日米両市場でのTBI治療薬開発が順調に進めば、そのデータは互いの国の承認審査を加速させ、より多くの患者に早期に画期的新薬が届くという好循環が生まれる可能性もあります。

投資家・医療現場の関心と課題

  • 臨床現場からは、治療適用範囲拡大や安全性プロファイル、価格政策、供給体制の構築など実用化に向けた詳細が注視されています
  • 投資家にとっては、フェーズ3成功とグローバル展開による業績インパクトが大きな関心事です
  • 財務面では主要銀行から30億円のコミットラインを確保し、資金繰りの安定性を強化しています

同時に、細胞医薬品特有の高コストと複雑な製造プロセスの最適化も重要な課題となります。

まとめ

2025年、サンバイオの開発する「脳を再生する薬」アクーゴは、日本・米国双方で大きく前進しました。日本発のバイオベンチャーが世界で新たな医療フロンティアを切り拓くその姿は、再生医療分野のみならず医療ビジネスや社会全体に広がるインパクトを持ち続けています。今後も試験進捗と上市展開、そして新たな疾患への適応拡大が期待されます。

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