三重県で過去10年最多発生――カメムシ被害の広がりと注意報発令

近年、三重県を中心にカメムシ類の大量発生が報告され、農作物への影響が深刻化しています。
2025年9月、県病害虫防除所は「ダイズ食害カメムシの過去10年で最多発生」「斑点米カメムシ類分布域拡大」「果樹カメムシ急増」という三つの重要な注意報を発令し、農家や消費者への注意喚起を強めています。
実際にダイズ、水稲(イネ)、果樹など多種類の農作物で被害が拡大している状況に、地域全体が警戒を強めています。

三重県でダイズへのカメムシ被害が史上最悪に

三重県病害虫防除所によると、2025年9月22日に発表された令和7年度病害虫発生予察注意報第5号では、ダイズを食害するミナミアオカメムシが県内全域で急増していると報告されました。
平年比でその個体数は急激に増加しており、適期防除の必要性が強調されています。
カメムシの被害は莢(さや)の伸長期および子実肥大期にピークとなるため、この両時期に防除作業を徹底することが推奨されています。
ダイズの品質低下を引き起こすだけでなく、全体収量にも大きく影響するため、県内の生産者にとってきわめて重大な警戒事項です。

  • 【注意】ミナミアオカメムシがダイズで過去最多発生。
  • 莢伸長期・子実肥大期に2回の防除を推奨。
  • 発生数が過去10年で最も高い水準。

水稲における斑点米カメムシ類の分布域拡大

三重県の水稲作付地では、2025年7月11日に令和7年度病害虫発生予察注意報第2号が発表され、斑点米カメムシ類(イネカメムシ、クモヘリカメムシ等)が全域で多発する恐れがあると警告されています。
県内の農業研究所で実施された誘殺数調査によると、平年比で数倍規模の増加が確認されており、「畦畔すくい取り調査」でも発生ほ場率が例年を大きく上回っていることが判明しています。
また、気象台の予報によると、今年の夏は高温かつ晴天が多く、カメムシ類の増殖に適した環境となってしまいました。

斑点米カメムシ類が拡大する理由と生態

斑点米カメムシ類は、主にイネ科雑草から水田に移動する特性を持っており、その発生要因としては
高温・乾燥などの気候変化、畦畔(けいはん)管理の不足、薬剤抵抗性の発達等が考えられています。
吸汁被害によって斑点米(黒色斑点が残る米)の発生や収量低下を招くため、被害が拡大すると品質や価格面でも大きな打撃を受けます。

  • 畦畔からの移動に注意し、出穂10日前までに除草作業を徹底。
  • 薬剤散布は出穂直後、穂揃期、その10日後と段階的に実施。
  • 薬剤抵抗性抑制のため、系統の異なる薬剤をローテーションで使用。
  • 広域での一斉防除が有効。

果樹カメムシ急増、主要果樹で深刻な被害に

2025年9月、三重県病害虫防除所は令和7年度病害虫発生予察注意報第4号を発表し、果樹に発生するカメムシ類(チャバネアオカメムシ・ツヤアオカメムシ)が大幅に増加していると報告しています。
主な被害作物はカキ、かんきつ類(ミカンやオレンジ)、ナシ等。
特に、松阪市や御浜町での誘殺数は例年の10倍以上で、過去10年で最も高い水準に達していることがわかっています。
今年9月14日~15日のわずか2日間で1,170頭ものチャバネアオカメムシが捕獲され、大雨や強風の後などに急激な飛来増加が報告されています。

  • カキ・かんきつ・ナシなど主要果樹で被害が拡大。
  • 過去最多の誘殺数(6,353頭・松阪市/平年432頭、956頭・ツヤアオカメムシ/平年130頭)。
  • 夜間照明や悪天候の後、園地で飛来数急増の傾向。
  • 高温傾向が続き、発生リスクが高い状態が続いている。

農研機構・県防除所などの防除指導と対策

農研機構や三重県病害虫防除所は、分布拡大や多発状況を受けて追加防除の検討IPM(総合的病害虫管理)など持続可能な防除法について取り組みを強化しています。
特に薬剤抵抗性のカメムシが増えつつあるため、同一系統薬剤の連用を避けてローテーション散布を推奨しています。
また、周囲よりも被害が集中しがちな早生品種への重点的な防除が必要とされています。

  • 園地ごとの飛来状況をこまめに観察し、発生を確認したらすぐに防除。
  • 大雨・強風後の急増にも対応できる備えが重要。
  • 薬剤選択と散布タイミングの最適化で被害抑制。

農家・消費者への影響と今後の課題

カメムシ被害が急増することで、農家の生産コストは増加し、収量や品質の低下が懸念されます。
また、消費者にとっても、米や大豆、果物の値上げや品質劣化の形で間接的な影響が及びます。
地域全体での一斉防除や、気候変動に対応した新たな作物管理技術の導入が今後大きな課題となるでしょう。
高温・少雨傾向など環境側面も絡むため、持続可能な農業と防除技術の普及が必要不可欠です。

  • 生産物の品質・収量低下による経済的負担増加。
  • 長期的には気候変動や生態系変化も発生要因となる。
  • 県・農研機構・生産者が連携した情報共有と対策が極めて重要。

まとめ:三重県全域で拡大するカメムシ被害、正しい情報と迅速な対応が鍵

今年、三重県ではダイズ、米、果樹に対してカメムシによる被害が過去10年で最も深刻な状況に陥っています
症状や分布状況は日々変化し、気象変化によってさらにリスク増加も懸念されます。
病害虫防除所や農研機構の注意喚起に耳を傾け、正しい防除方法・薬剤活用のもとで地域ぐるみの取り組みを続けることが、農業生産の安定化と消費者への安心につながるでしょう。

参考:三重県病害虫防除所 発表によるカメムシ被害データ(2025年夏~秋)

  • ダイズ:ミナミアオカメムシ 個体数 急増(過去10年最多)
  • 水稲:斑点米カメムシ類 畦畔すくい取り調査で発生ほ場率・誘殺数とも平年比数倍増
  • 果樹:チャバネアオカメムシ・ツヤアオカメムシ 松阪市 6,353頭・956頭、御浜町 1,441頭・220頭と最大規模

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