OpenAIが「GPT-5.2」を正式発表 GoogleとのAI競争は新たな局面へ
OpenAIは現地時間12月11日、同社の最新フラグシップAIモデル「GPT-5.2」を発表し、ChatGPTや各種サービスに順次展開を開始しました。 また、このGPT-5.2は、Googleの「Gemini 3」など競合モデルとの技術ギャップを巡る激しい競争の中で登場したことから、業界では大きな注目を集めています。
GPT-5.2とは何か:GPT-5シリーズ最新のフラグシップモデル
GPT-5.2は、OpenAIが展開する「GPT-5」シリーズの最新アップデートであり、同社が「フラグシップモデル」と位置付ける中核モデルです。
- シリーズ:GPT-5シリーズのアップデート版
- 位置付け:最新フラグシップ(最上位クラス)の大規模言語モデル
- 用途:日常利用から専門的な知的労働、長時間稼働するAIエージェントまで幅広く対応
OpenAIは公式発表で、GPT-5.2について「仕事と学習の両方にとって、より賢く、より役立ち、会話もこれまで通り楽しいモデル」であると説明しており、前世代のGPT-5.1から継続的な改善を図っているとしています。
3つのモデル構成:「Instant」「Thinking」「Pro」
GPT-5.2シリーズは、利用目的に応じて3つのバリエーションが用意されています。
- GPT-5.2 Instant
日常的な質問や検索、ハウツー、技術文書の参照、翻訳などに向いた高速モデルとして位置付けられています。
応答速度を重視しつつ、従来よりもわかりやすい説明や学習支援ができるよう最適化されているのが特徴です。 - GPT-5.2 Thinking
コード生成、長文の要約、ファイル解析、計画立案や意思決定支援といった、比較的重いタスク向けのモデルです。
長いコンテキストを理解しながら、段階的に推論して答えを導く能力が強化されており、ソフトウェア開発やビジネス文書の扱いなど、プロフェッショナルな用途にも適しています。 - GPT-5.2 Pro
高難度の専門的な質問に対応する最上位モデルで、GPT-5シリーズとしては「GPT-5 Pro」以来となるProモデルの復活となりました。
プログラミング、科学・数学分野の研究、ツール操作などで誤りが少なく、丁寧で信頼性の高い回答を行うことを目標に設計されています。
これら3モデルは、ChatGPTアプリやAPIから用途に応じて選択できる形で提供され、ユーザーは「速度」「推論精度」「専門性」のバランスを取りながら使い分けることが可能になります。
具体的な性能向上:推論力・長文理解・画像理解が大幅強化
GPT-5.2は、前世代のGPT-5.1と比較して、いくつかの重要な点で性能が強化されたと報じられています。
- 汎用的な知能の向上
一般的な知識問題や複雑な問いに対し、より一貫性と正確性の高い回答が可能になったとされています。 - 長文コンテキストの理解力
長い文章や複数のファイルにまたがる情報をまとめて扱い、要約や比較、分析を行う能力が高まっています。
研究論文や契約書、技術仕様書などをまとめて読み込んで整理するような場面で、従来よりも扱いやすくなっている点は、ビジネスや研究現場で特に注目されています。 - エージェント的なツール呼び出し能力
外部ツールの呼び出しやワークフローの自動化といった「エージェント」的な利用シナリオに最適化されており、長時間動作させてタスクをこなす用途に向けた改善が行われています。 - 画像理解とビジュアル推論の精度向上
グラフやチャート、ユーザーインターフェースなど、画像に含まれる情報を理解する能力も向上しており、チャート推論とソフトウェアインターフェース理解におけるエラー率がほぼ半減したと報告されています。
GPT-5.2 Thinkingでは、画像内の要素の位置関係をより深く把握できるようになっており、図表を含む技術文書の解説などに効果が期待されます。 - 数学・プログラミング分野での向上
専門家レベルの数学問題を扱うベンチマーク「FrontierMath(Tier 1–3)」では、GPT‑5.2 Thinkingが40.3%のスコアを記録し、GPT‑5.1 Thinkingの31.0%を大きく上回っています。
ソフトウェア開発のベンチマーク「SWE-Bench Pro(public)」でも、GPT‑5.2 Thinkingは55.6%の達成率と、従来モデルから約5ポイントの向上が確認されています。
さらに、OpenAIはケーススタディとして、統計的学習理論における未解決問題に対し、GPT‑5.2 Proが有効な証明案を提示し、それを研究者が検証した事例も紹介しています。 こうした例は、GPT-5.2が単なる「文章生成ツール」を超え、研究支援のレベルにまで踏み込んでいることを示すものとして注目されています。
提供開始時期と利用できるサービス:ChatGPT・API・Copilot
GPT-5.2は、発表と同時に各種サービス向けに順次ロールアウトが始まっています。
- ChatGPTでの提供
GPT-5.2シリーズ(Instant/Thinking/Pro)は、ChatGPTの有料プラン(Plus、Pro、Go、Business、Enterprise)向けに12月11日から順次提供が開始されています。
有料プランのユーザーは、GPT-5.2に加えて、前世代のGPT‑5.1もレガシーモデルとして今後3カ月間利用できる予定で、両者を比較しながら利用することが可能です。 - APIでの提供
開発者向けには、以下の名称でAPIが提供されています。
・gpt-5.2-chat-latest(GPT-5.2 Instant)
・gpt-5.2(GPT-5.2 Thinking)
・gpt-5.2-pro(GPT-5.2 Pro)
ThinkingおよびProモデルでは、推論の強さを指定するパラメータに最上位の「xhigh」が追加され、高度な推論が求められる場面でより踏み込んだ回答を得られるようになっています。 - GitHub Copilotでのパブリックプレビュー
GPT-5.2は、GitHubのAIペアプログラミングツール「GitHub Copilot」にも採用され、パブリックプレビューとして利用可能になっています。
これにより、開発者はコード補完だけでなく、バグ修正やリファクタリング、テストコード生成など、より高度な支援をGPT-5.2ベースで受けられるようになります。SWE-Bench Proでのスコア向上は、こうした開発支援タスクにおける実力向上を裏付ける指標といえます。 - Microsoft 365 Copilot / Copilot Studio
OpenAIに出資するMicrosoftも同日、GPT-5.2を「Microsoft 365 Copilot」および「Microsoft Copilot Studio」に導入すると発表しました。
CopilotのモデルセレクターからGPT-5.2を選択可能とし、Microsoft 365 Copilotライセンス保有ユーザーには順次展開が開始されています。
Copilot Studioでは早期リリース環境で利用可能となり、既存のGPT‑5.1ベースのエージェントは自動的にGPT‑5.2へ移行される予定です。 - 他サービスへの展開
報道では、AI検索サービス「Perplexity」においても、GPT-5.2がProおよびMaxプラン加入者向けに利用可能になったとされています。
今後、他社・他サービスへの採用も進むことで、GPT-5.2をバックエンドに持つアプリケーションが増えていくとみられます。
旧モデルとの関係:GPT-5.1は「レガシー」として当面併存
OpenAIは、GPT-5.2のリリースに伴い、前世代モデルであるGPT-5.1をどのように扱うかについても方針を明らかにしています。
- ChatGPT内での扱い
ChatGPTでは、有料ユーザー向けにGPT‑5.1を3カ月間レガシーモデルとして併存させ、その後提供を終了する計画です。
これにより、ユーザーはGPT-5.1と5.2を一定期間並行して使い、応答傾向や相性を確かめながら移行することができます。 - APIでの扱い
一方、APIにおいては、GPT‑5.1やGPT‑5、GPT‑4.1などの旧モデルを、当面は廃止せず提供を続ける方針が示されています。
廃止の際には十分な予告期間を設けて非推奨化を進めるとされており、企業システムや自社サービスなどで旧モデルを利用している開発者にとっては、移行の猶予が確保されています。
なお、GPT-5.1自体も、InstantとThinkingといったモードを持ち、より会話的な応答やトーン・スタイルのパーソナライズ機能などで高く評価されてきました。 GPT-5.2は、そうしたGPT-5.1の方向性を受け継ぎつつ、速度・安定性・推論力・カスタマイズ性をさらに引き上げた「安定強化版」として位置付けられています。
Googleとの競争:「Gemini 3」後の“コードレッド”とGPT-5.2
GPT-5.2の発表背景として、多くの記事が言及しているのが、Googleの最新モデル「Gemini 3」の存在です。
- Gemini急伸を受けた「コードレッド」
GoogleのGeminiシリーズが急速に性能とシェアを伸ばしていることを受け、OpenAIが社内的に「コードレッド」(危機的状況)と表現される対応モードに入ったと報じられています。
こうした状況の中で投入されたGPT-5.2は、Gemini 3とのギャップを埋めるだけでなく、再びリードを取り戻す狙いを持つモデルと見られています。 - 「技術ギャップ」にどう応えるか
Google側がマルチモーダル対応や長文推論、開発支援などの分野で存在感を強める中、OpenAIはGPT-5.2において、汎用的な知能、長文コンテキスト理解、エージェント的なツール呼び出し能力、画像理解性能の強化を前面に打ち出しています。
また、Microsoft 365 CopilotやGitHub Copilotといった、大規模な既存プロダクトへの素早い統合は、「モデルの性能」だけでなく、「実際の利用シーンでの価値」を重視するOpenAI・Microsoft連合の戦略の一端といえます。
こうした流れを受け、海外メディアや業界関係者の間では、「GoogleがAI技術のギャップを一気に縮める中で、OpenAIはGPT-5.2によってどこまで巻き返せるのか」という視点での分析や論評が増えています。GPT-5.2の実際の利用体験やベンチマーク結果が出揃うにつれ、この「ギャップ」の評価もさらに具体的になっていくと考えられます。
GitHub Copilotパブリックプレビューの意味:開発現場への直結
ニュースの中でも特に注目されているのが、GPT-5.2がGitHub Copilotのパブリックプレビューとして提供されている点です。
- 開発体験そのものの変化
従来のCopilotは、コード補完やサンプル生成に強みを持つ一方で、複雑なバグ修正や設計レベルの相談などでは、追加の工夫や人手による確認が欠かせませんでした。
GPT-5.2が持つ推論力や長文理解力がCopilotに統合されることで、リポジトリ全体の構造を踏まえた修正提案や、設計方針、テスト戦略まで含めた助言など、より上流工程に踏み込んだサポートが期待されています。 - ベンチマークが示す改善
実際、オープンソースリポジトリのバグ修正タスクを評価する「SWE-Bench Pro(public)」で、GPT‑5.2 Thinkingは55.6%の達成率を記録し、従来モデルを約5ポイント上回っています。
これは単純なコード自動生成だけでなく、「既存コードの理解」「バグ原因の特定」「適切な修正」の一連の流れをAIがより高い水準でこなせるようになっていることを示しています。
こうした性能向上が現場のエンジニアにどの程度受け入れられ、日々の開発効率や品質にどう影響するかは、今後の重要な検証テーマになります。
GPT-5.2がもたらす今後の展開
GPT-5.2は、単なる世代交代モデルというよりも、競争環境の変化に応じてOpenAIが打ち出した「総合強化版」としての意味合いが強いアップデートです。
- 日常の質問から専門的な研究、ビジネスまでをカバーする汎用性
- 長文・マルチモーダル・エージェントといった新しい利用形態への本格対応
- GitHub CopilotやMicrosoft 365 Copilotなど、大量のユーザーを抱える既存サービスへの迅速な統合
- Google Gemini 3との熾烈な競争の中での、「逆転」または「巻き返し」を狙う位置付け
一方で、OpenAIは既知の課題として、「過剰な拒否(本来答えられる質問への不必要な拒否)」やレイテンシ(応答速度)の問題についても、引き続き改善を続けていくとしています。 モデルが高性能化するほど、安全性や信頼性とのバランスも難しくなるため、こうした課題への対応が今後の大きなテーマとなりそうです。
今後、ユーザーや開発者からのフィードバックが蓄積されるにつれて、GPT-5.2の強みと弱みがより明確になり、それを踏まえたさらなるアップデートが行われていくことが予想されます。GPT-5.2の登場は、AIを巡る技術競争の新たな節目であると同時に、私たちの日常的な仕事や学習のスタイルが、また一歩変わっていくきっかけになると言えそうです。




