“`html
日暮里・舎人ライナー 全国トップの混雑率、その緩和へ動き出す東京都
■ はじめに
日暮里・舎人ライナーは、東京都北東部の交通空白地域を解消する目的で2008年に開業し、荒川区の日暮里駅から足立区舎人地区を結ぶ新交通システムとして、多くの地域住民の通勤や通学を支えています。しかし開業以降、その利便性の高さから利用者が急激に増加。2021年度から2024年度まで4年連続で全国一の混雑率を記録するなど、「全国でもっとも混雑する路線」として社会的な注目を集めています。
■ 混雑率171%…4年連続で全国トップへ
都営交通の日暮里・舎人ライナーの混雑率は2024年度で171%にのぼり、他都市の主要路線を抑えて全国トップとなっています。朝の通勤ラッシュ時には、車内は身動きが取れないほどの混雑となり、利用者からは「苦痛」「乗降に時間がかかる」「安全面が心配」といった悲鳴が日々寄せられています。
- 開業直後の1日当たり輸送人員は約49,000人。
- 2023年度には約90,000人となり、開業前の想定値(103,000人)に迫る勢いで増加しています。
- 混雑度ランキングで4年連続1位を獲得し、「日本一混む路線」と評されています。
■ 人気と利便性が生んだ”想定外”の混雑
日暮里・舎人ライナーは元々、都心部から距離がある「陸の孤島」とも呼ばれた足立区舎人地区の生活利便性を向上させるため建設されたものです。開業以前、舎人地区から日暮里まではバスで約1時間を要していたものが、ライナーの登場によって20分程度と大幅な時間短縮が実現。また尾久橋通りの混雑緩和や周辺地域のまちづくりにも大きく寄与しています。
こうした利便向上が利用者数の激増を招き、混雑対策が社会課題となっています。
■ なぜ混雑緩和が進まない?構造的課題
日暮里・舎人ライナーの混雑対策を巡っては、さまざまな議論と提案がなされてきました。車両の増結(5両化)や急行運転の導入といった抜本的な対策が理想とされていますが、現実には大きなハードルが存在します。
- 路線施設が5両化前提で建設されていないため、営業継続しながら車両を長編成化するのは困難。
- 軌道形状の制約により、急行運転の導入も実質的に不可能とされています。
- AGT(自動案内軌条式旅客輸送システム)という特殊なシステムが増発や輸送力アップに柔軟に対応しづらい構造的特性を持ちます。
これらの要因から、抜本的な混雑解消策の打ち出しには限界があると東京都交通局も認めています。
■ バス連携、ソフト対策で突破口を探る
東京都は「満員電車ゼロ」を掲げ、ハード対策が難しい日暮里・舎人ライナーの混雑解消へ、都営バスの増便と連携強化を打ち出しました。
- ライナーと並行する都バス路線の本数を増やし、一部利用者をバスへ誘導することで混雑を分散。
- 2025年度は、実効性を探るための実証実験に着手。
- 新しい働き方やテレワーク促進、オフピーク通勤など「ソフト面」の工夫も継続。
加えて、沿線の駐輪場整備や地元自治体と連携したイベント開催など、利便性向上やまちづくりも合わせて進められています。
■ 住民・自治体の切実な声と行政の動き
足立区や荒川区の住民からは「通勤・通学に必須だが混雑がつらい」「時間帯によっては身動きが取れない」など、改善を求める声が後を絶ちません。2024年末には足立区長や区議会関係者らが交通局長へ要望書を提出し、状況打開を求める動きも活発化しています。
行政もこうした声を真摯に受け止め、課題や実情の把握とともに、「声をカタチにする」ため現場調査やアンケートなどを重ね、バス増便や実証実験に向けた具体的な準備が進められています。
■ 他路線との比較 – JR・民鉄の混雑度ランキング
日暮里・舎人ライナーが全国No.1の混雑率を記録する一方、他の東京圏通勤路線も深刻な混雑問題を抱えています。たとえば、JR埼京線は「激混み電車」として名高く、2024年度のJR混雑率ランキングでトップとなりました(文春オンライン)。混雑状況は下記の通りです。
- JR埼京線:朝ラッシュ時に200%超の混雑率を記録。池袋~新宿~渋谷~大崎と都心の主要ターミナルを結び、郊外からの流入や沿線開発で利用者が増加。「抜本的な改善は難しい」と指摘されています。
- 一方で、民鉄やモノレールの中でもっとも混雑率が高いとされた路線は、東京や大阪の大手ではなく「意外な路線」によるものだった(詳細割愛:出典元に基づき、民鉄ランキングとして紹介記事が掲載)。
都市圏の人口集中、輸送力の限界、新しい働き方普及など、多くの路線が共通の課題を抱える中で、「乗客の利便」と「混雑緩和」の両立は全国共通の社会問題であることが浮き彫りになります。
■ 今後の展望と持続可能な交通への課題
日暮里・舎人ライナーの混雑問題は一朝一夕に解決できるものではありませんが、東京都は「ハード」と「ソフト」両輪の総合的な対策を粘り強く進めていく方針です。
- 沿線まちづくりや生活利便施設の誘導、混雑時間帯へのピークシフトなど、地域社会・住民と共に協調する姿勢を強調。
- AGT車両の技術革新や信号システム改良、新たな輸送システムの研究も今後の検討課題とされています。
利用者のストレスを軽減し、誰もが安心して使える持続可能な都市交通をめざして、東京都は行政・住民・民間企業が一体となった取り組みを加速させています。都民の暮らしを支える交通インフラの未来に、今あらためて社会の目が向けられています。
■ おわりに
都市部の人口密度が極端に高まる中、日暮里・舎人ライナーをはじめとする首都圏の通勤路線は今、「安全性」「快適性」「持続可能性」という難問に直面しています。誰もが安心して移動できる都市交通の実現へ、今日も現場と行政の挑戦が続いています。
“`