三菱マテリアル、中期経営戦略発表も株価大幅反落—市場の期待と現実のギャップ
三菱マテリアルは11月26日、2026年度から2028年度までの新たな中期経営戦略を発表しました。資源循環ビジネスの強化やリサイクル事業の拡大といった野心的な施策を打ち出した同社ですが、翌27日の株式市場では期待とは裏腹に株価が大幅に反落する結果となっています。市場関係者からは「戦略内容が物足りない」という見方も聞かれており、投資家の期待値と企業の発表内容にズレが生じている状況が浮き彫りになっています。
新中期経営戦略の主な内容
三菱マテリアルが発表した2026~2028年度の中期経営戦略は、「循環をデザインする」というビジョンのもと、資源循環事業に重点を置いています。特にE-スクラップ(廃電子基板類)の処理量を2035年度までに倍増させる計画や、タングステンのリサイクル率を2030年度に100%に達成させる目標が掲げられました。
この戦略期間中には、約5000億円のキャッシュアウトを計画し、製錬やタングステンなどのマテリアル領域への重点投資を実行する方針です。海外での二次原料製錬所の新設も視野に入れており、国際的なリサイクル事業の展開を加速させる考えを示しています。
また、同社は2030年度時点でROE(株主資本利益率)8%以上を目指しており、現在の見通しである3%から大幅な改善を狙っています。ROIC(投下資本利益率)についても7%以上という目標が設定されており、経営効率の向上に強い決意を示しています。
市場反応と株価反落の背景
発表翌日の株式市場では、三菱マテリアル株が大幅な反落を記録しました。これは通常、好材料が発表されたにもかかわらず株価が下落するという、いわば「売り」の圧力が強まった状況を示唆しています。
市場関係者からは「中期経営戦略の内容が物足りない」という声が上がっています。具体的には、投資家が期待していた以上の成長戦略や、より積極的な事業展開の発表がなかったことが失望につながった可能性があります。特に、資源循環事業の拡大という方針は業界トレンドとしては順当な内容であり、市場の予想内に収まっていた可能性が考えられます。
また、約5000億円の投資計画についても、規模が相場観より小さかったり、配分先が市場の予想と異なっていたりした可能性も株価反落の一因と考えられます。投資家は、より大胆な経営方針の転換や業績改善への明確なシナリオを求めていた側面があるようです。
資源循環事業が注目される理由
近年、非鉄金属業界ではリサイクル・資源循環事業の重要性が急速に高まっています。これは、鉱物資源の枯渇懸念やサプライチェーンの脆弱性、さらには環境規制の強化といった要因が背景にあります。
E-スクラップの処理量倍増やタングステンのリサイクル率100%達成という目標は、長期的な企業価値向上に向けた前向きな施策です。タングステンは、半導体製造に欠かせない重要な材料であり、完全なリサイクル化は供給安定性の強化につながります。
同社の過去の中期経営戦略である「中経2030」では、グループ全体で持続可能な社会の実現を掲げ、カーボンニュートラルや再生可能エネルギー事業の強化といった方針が示されていました。新戦略はこれらの方針をさらに深掘りし、具体的な事業展開へと進化させるものと位置づけられます。
投資家の期待とのズレ
株価反落の背景には、投資家が抱いていた期待値と実際の発表内容のズレが大きく影響しているようです。特に、業界内での競争が激化する中で、三菱マテリアルがどの程度の競争力強化策を打ち出すのかに注目が集まっていたと考えられます。
本日の市場では、山口フィナンシャルグループやスカパーJサテライテ、ジャパンエンタープライズなど、複数の注目個別銘柄が取り上げられています。このように市場全体で複数の銘柄が注視されている状況下では、一社の発表が予想内に収まった場合、その銘柄の相対的な注目度が低下する傾向も見られます。
今後の課題と展望
三菱マテリアルにとっての今後の課題は、発表した中期経営戦略がいかに実現されるかという点に尽きます。特に、海外での二次原料製錬所建設やE-スクラップ処理能力の拡張といった投資計画が、予定通り進捗し、実際の業績向上につながるかどうかが重要となります。
ROE8%以上、ROIC7%以上という数値目標の達成も、市場が同社の実力を判断する上で重要な指標になるでしょう。現在の3%のROEから8%への引き上げは、約2.7倍の改善を意味しており、かなり野心的な目標設定と言えます。
今後、同社がこれらの施策を着実に実行し、具体的な進捗を市場に示すことで、投資家からの信頼を回復し、株価の回復につなげることが求められます。資源循環という21世紀の重要なテーマに取り組む姿勢は高く評価できるものの、その実現可能性と実績の積み重ねが、企業価値向上の鍵となるのです。
市場全体の動き
本日の注目個別銘柄としては、山口FGやスカパーJなども挙げられており、市場全体では複数の銘柄が投資家の注視を集めています。このような状況の中で、企業が戦略を発表する際には、市場の高い期待値に応えるだけでなく、それを上回るサプライズ要素が必要とされることも多いのが現実です。
三菱マテリアルの今後の株価動向については、経営戦略の実行状況、業績の推移、そして市場全体の投資家心理の変化などが複合的に影響することになるでしょう。




