「つながらない」「遅すぎる」と言われるNTTドコモ 通信品質悪化の背景と、巻き返しへの道筋
ここ数年、SNSや口コミサイトを中心に「ahamoが遅すぎる」「ドコモだけ繋がりにくい」といった声が数多く見られるようになりました。以前は「つながりやすさ」が強みと言われてきたNTTドコモですが、その評価に変化が生じているのは事実です。
この記事では、NTTドコモの通信品質をめぐる現状と、「ahamoが遅い」と言われる背景、さらにドコモ自身がどのように改善に取り組もうとしているのかを、わかりやすく整理してお伝えします。
「ahamoが遅い」「ドコモがつながらない」という不満の広がり
まず押さえておきたいのは、「ahamoだけが特別に遅い」という構造的な仕組みがあるわけではない、という点です。ahamoはNTTドコモが自社で提供する料金プランのひとつであり、ドコモ本体と同じ基地局・同じネットワーク設備を利用しています。そのため、技術的には「ドコモのメインプランより劣る電波を使っている」ということはありません。
実際、決算説明会の場で「ahamoの通信速度だけが遅いのではないか」という質問が出た際、NTTドコモの前田社長は「そんなことはない」「どちらも一緒」と、ブランド間の通信品質の差を明確に否定しています。
それでもなお、「ahamoが遅い」という印象が広がってしまった理由として、いくつかの要因が指摘されています。
- ドコモ回線全体として、ここ数年で通信品質の評価が落ちた
- ahamoユーザーの母数が大きく、悪い体験も目立ちやすい
- 料金が安いプランに対して「品質も落ちるのでは」という心理的な思い込み
- 使っている端末の対応周波数や設定の違いにより、速度差が出やすい
特に、決算資料などによると、ahamoの契約数は800万超と非常に多く、SNS上でもユーザーの声が集まりやすい状況にあります。その中で、不満の声が拡散されると、「ahamo=遅い」というイメージが独り歩きしやすくなります。
本当に「ahamoだけ」遅いのか?構造的な問題はあるのか
専門的にみると、「ahamoだけが遅くなるように制御されている」という証拠はなく、回線の構造的な弱さも指摘されていません。ahamoは、ドコモの他のプランと同じ4G・5Gネットワークを利用しており、電波が届いているエリアなら同じように通信できます。
実測値の比較では、ドコモのメインプランと比べて10〜20Mbps程度遅くなるケースがあるという報告もありますが、この差はWeb閲覧やSNS、動画視聴などの日常利用では体感しにくいレベルだとされています。一方で、そもそもドコモ回線全体の速度が落ちているという指摘もあり、「ahamoだけが極端に遅い」というよりは、「ドコモ全体の変化」がユーザーの体感に影響していると考えられます。
多くの専門記事や検証では、「ドコモが意図的にahamoだけを遅くしているとは考えにくい」としつつも、「昔より体感が悪くなっている」「他社と比べると見劣りする場面がある」という点については否定していません。
「遅い」「つながらない」と感じる具体的な場面とその原因
では、ユーザーが「ahamoが遅い」「ドコモがつながらない」と感じるのは、どのような場面が多いのでしょうか。主に挙げられているのは次のようなケースです。
- 都心の繁華街やイベント会場など、人が密集している場所
- 通勤・通学時間帯の駅構内や電車内
- 屋内や地下、ビルの高層階など、電波が届きにくい環境
- 5Gの電波を「つかんではいるが、実は速度が出ていない」状態
特に都市部やイベント会場などでは、同じ基地局に多くのユーザーが同時にアクセスすることでデータ通信が渋滞し、「パケ詰まり」と呼ばれる現象が発生しやすくなります。これは、設備容量に対して想定以上の利用者が集中し、一斉にデータ通信を行うことで起こる「通信の渋滞」です。
さらに、ドコモは屋内や地下に強いプラチナバンド(800MHz帯)を積極的に活用してきましたが、都市部の人口密集地では、特定の周波数帯にアクセスが集中してしまい、結果としてプラチナバンドの容量超過=渋滞が起きているとも指摘されています。
加えて、5Gを「つかんでいるのに遅い」状態、いわゆる「微弱な5Gを掴んでしまってパケ止まりになる」ケースも問題として挙げられています。この場合、スマホの画面上では5G表示になっているものの、実際の通信速度は4Gより遅くなることもあり、「5Gエリアなのにつながらない」という不満につながります。
端末の対応周波数・設定の違いが、体感速度に影響
通信品質の議論では、「どの周波数帯の5Gをつかめるか」も重要なポイントです。NTTドコモは、世界的に見ると採用が少ない5Gのn79帯に大きく依存したネットワークを構築してきたという指摘があります。
ドコモが販売するスマホは、このn79にきちんと対応していますが、ahamoユーザーの中には、SIMフリー端末や他社で購入したAndroid端末を持ち込んで利用している人も多く、その一部はn79非対応の機種であるとされています。この場合、同じ場所にいても、ドコモのメインプランでドコモ端末を使っている人と比べて、つながりにくさや速度低下を感じやすい状況になり得ます。
また、5G対応機種であっても、設定によっては「4G優先」「5G利用制限」などになっている場合があり、速度が出にくくなることがあります。そのため、ASCII.jpなどでは、「ahamoは遅い」という噂に関心を持つユーザーに対して、まずは自端末の5G接続設定を確認してほしいと呼びかけています。
実際、一般向けの解説サイトでは、通信が遅いと感じた場合の対処として、次のような基本的なチェックを勧めています。
- 機内モードのオン・オフを切り替える
- スマホを再起動する
- ネットワーク設定をリセットする
- 一時的に「4G固定」にしてみる
- APN設定を確認し、正しいプロファイルを選びなおす
これらによって改善するケースも多く、「回線そのものの品質」というよりは、利用する場所や時間帯、端末の設定に原因があることがほとんどだと説明されています。
NTTドコモ自身も通信品質の悪化を認識、改善策を表明
一方で、NTTドコモ自身も「通信品質が低下している」というユーザーの声を無視しているわけではありません。2025年度の決算説明会や、ネットワーク担当者へのインタビューでは、通信品質の改善を最重要課題のひとつとして位置づけていることが繰り返し語られています。
ドコモが掲げている主な改善の方向性は、次の3つにまとめることができます。
- 通信できるキャパシティ(容量)を増やすこと
- 届きやすい周波数帯(700MHzなど)の活用を強化すること
- 繋がりにくい場所をAIなどで素早く特定し、重点的に改善すること
具体的には、5G基地局の整備を加速し、2025年度下期には上期の約3倍のペースで基地局を増設、主要都市では下り100Mbps以上の速度を記録したと報告しています。また、2026年度までに、「他社と遜色ない、場合によっては上回る通信品質」を実現するという目標も示されました。
周波数の面では、これまでのSub6(3.7GHz帯など)中心の基地局構築に加え、700MHz帯を含めた周波数の強化を進める方針が示されています。700MHz帯は建物内や地下などにも届きやすく、エリアのつながりやすさに大きく貢献するため、ユーザーの体感改善につながることが期待されます。
さらに、ドコモは「通信改善 取組み宣言」として、2026年3月末までに全国の5G基地局数を1.2倍、主要鉄道動線や主要都市中心部の5G基地局数を1.3倍に増強する目標を掲げ、達成状況も公表しています。基地局の数という意味では、「2026年度中に他社のレベルに追いつく」との見通しも示されています。
“つながらないドコモ”返上へ 5G SA無料化の狙い
最近注目されている取り組みのひとつが、5G SA(スタンドアローン)の無料化です。5G SAとは、4Gの設備に依存せず、5Gだけでネットワークを構成する方式で、より低遅延・大容量の通信が可能になるとされています。
従来は一部で追加料金が必要だったり、利用できるユーザーが限られていたりしましたが、これを無料化することで、より多くのユーザーが純粋な5Gのメリットを享受できるようにするのが狙いです。これにより、「5G表示なのに速くない」「5Gをつかんでいるのに切断されやすい」といった不満を改善し、“つながらないドコモ”というイメージを払拭したい考えだとされています。
もちろん、5G SAの本格活用には、対応端末の普及や基地局整備など、技術・設備の両面で時間がかかります。それでも、料金面のハードルを下げたうえで、ネットワーク側の改善も同時に進めることで、中長期的な通信品質の底上げを図ろうとしていることは読み取れます。
ユーザー視点でできる工夫と、今後への期待
現時点では、「どんな場所でも常に快適」という理想的な状態には、ドコモも他社もまだ到達していません。そのなかで、ユーザー側でできる工夫としては、次のようなものがあります。
- 端末がドコモの主要5G周波数(とくにn79)に対応しているかを確認する
- 通信が安定しないときは、一度4G(LTE)に固定して様子を見る
- 機内モードのオン・オフや再起動など、基本的なリセットを試す
- APN設定やキャリア設定アップデートが正しく行われているか確認する
一方で、根本的な解決にはやはり、ドコモ側のネットワーク増強や周波数活用の見直しが欠かせません。ドコモは2026年度中に他社と同等以上の品質を目指すと明言しており、5G基地局の増設や700MHz帯の強化、5G SAの無料化など、複数の施策を組み合わせて改善を進めています。
かつて「つながりやすさ」で高い評価を得ていたNTTドコモが、再びその信頼を取り戻せるのかどうか。ユーザーの厳しい目線が続く中で、今後の通信品質の変化に注目が集まっています。


