ヒョンデが「CEO Investor Day」で描いた2030年への新ビジョン
2025年9月23日、韓国の大手自動車メーカーであるヒョンデ(現代自動車)は、ニューヨークで開催された「CEO Investor Day」にて、2030年に向けた大胆な新成長戦略と製品ロードマップを発表しました。このイベントは、同社が中長期ビジョンや投資計画、新たな電動化技術や製造体制の強化を改めて内外に示す場となりました。
77兆3,000億ウォン規模の巨大投資計画を発表
ヒョンデは2030年までに77兆3,000億ウォン(約8兆円)の投資を実施することを決め、グローバルでの生産能力や販売力の飛躍的強化を図ると明らかにしました。この中には、製造の柔軟性向上や技術革新、次世代電動車両の開発、主要市場での現地生産体制拡充などが含まれています。
- 2030年までのグローバル販売目標:555万台
- 電動車両の販売目標:330万台
- 生産能力:120万台の拡大
- 営業利益率目標:6~7%
グローバル成長戦略の柱
ヒョンデCEOのホセ・ムニョス氏は、同社が今後、グローバルモビリティリーダーとして大きな変革期を迎えると強調しました。発表で明らかになった主な成長戦略は以下の通りです。
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製品ラインアップ強化:
あらゆるセグメントでの多様な電動車ラインアップの拡充と、「ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)」など最先端技術の導入。 -
生産・サプライチェーンのローカライゼーション:
主要市場での現地生産能力を拡大し、グローバルな生産効率を高める戦略。 -
革新的技術への投資:
次世代バッテリーや新素材、コネクテッドカー技術への研究開発投資の強化。
地域別戦略と低価格EVへの注力
特に注目すべきは、欧州・インド・中国といった主要な新興市場での低価格EV(電気自動車)の投入を強化する方針です。これにより、より幅広い消費者層にアプローチし、電動化社会の裾野を広げていくことを目指しています。
- 欧州: 環境規制の強化を背景に、競争力ある価格帯のEVを導入し市場シェア拡大を目指す。
- インド: 急成長するEV需要に対応すべく現地開発・現地生産比率を高め、より手軽なモデルを投入予定。
- 中国: 電動化の最先端市場であり、現地顧客の嗜好に合わせた戦略モデルを拡充。
また、北米市場では、現地投資や生産体制の拡大も継続されます。持続的な成長を狙い、現地需要に応じた多様な電動車種や新しいサービス開発にも力を入れるとされています。
「ソフトウェア定義車両」や次世代バッテリー技術で先導
ヒョンデは今後の基盤となるテクノロジー分野にも積極投資を進めています。特に、車両本体の「ハード」と「ソフト」を一体化しユーザー体験を革新する“ソフトウェア定義車両(SDV)”や、自社開発による次世代バッテリー技術の早期実用化が注目されています。
- AI制御による安全支援や自律走行機能の強化
- OTA(Over-the-Air)による車載ソフトのアップデート体制
- 新しいコネクテッドサービスの開発
サステナビリティとグローバル責任経営
ヒョンデは、サステナビリティ(持続可能性)と社会的責任へも一層配慮した経営を目指すことを表明しています。カーボンニュートラルへの貢献はもちろん、サプライチェーンの透明性やサーキュラーエコノミー(循環型経済)推進にも取り組んでいくとしています。
- 再生可能エネルギー利用比率の引き上げ
- リサイクル素材を活用した車両開発
- 現地雇用促進やコミュニティ支援プログラムの推進
ヒョンデのこれから ― 革新と変化に挑む新時代の幕開け
急速な変化を続ける自動車業界の中で、ヒョンデは今、新たな革新の波を自ら創り出そうとしています。各市場での競争力強化やイノベーション加速、サステナビリティ推進によって、2030年には世界屈指のモビリティリーダーに成長することが期待されています。
ホセ・ムニョスCEOはイベントの中で「業界がかつてない変革期にある中、ヒョンデは魅力的な製品・技術リーダーシップ・優れた販売ネットワーク、そしてグローバルな規模によって勝者となる」と自信を示しました。
今後もヒョンデの挑戦と進化から目が離せません。