日野自動車、2025年度中間決算で営業利益大幅増と通期業績の上方修正を発表

はじめに

日野自動車株式会社は、2025年11月4日に2025年度第2四半期(4~9月期)の連結決算および通期業績予想の上方修正を発表しました。
この発表は、自動車業界や株式市場に大きなインパクトを与え、投資家や関係者の注目を集めています。
本記事では、日野自動車の決算内容をわかりやすく解説し、業績改善の要因や今後の展望について詳しくご紹介します。

中間決算の概要

  • 売上高:7,428億5,900万円(前年同期比12.4%減)
  • 営業利益:380億7,300万円(同58.0%増)
  • 最終利益:22億5,200万円(前年同期は219億5,980万円の赤字)
  • トラック・バス総売上台数:50万3,000台(前年同期比24.3%減)

2025年4〜9月期の連結営業利益が58.0%増という大幅な伸びを記録しました。
一方で、売上高自体は前年同期比12.4%減の7,428億5,900万円となり、販売台数減少による減収が続いています。
ただし、諸経費の大幅削減や国内トータルサポート収益の増加が業績回復を支え、大幅な増益となりました。

通期業績予想の上方修正

項目 従来予想 修正後 前期実績
売上高 1兆5,000億円 1兆5,000億円
(据え置き)
1兆6,972億円
営業利益 400億円 650億円 ▲81億円(赤字)
最終利益 200億円 400億円 ▲2,177億円(赤字)

売上高の予想自体に変更はありませんが、営業利益・最終利益ともに大幅な上方修正が発表されました。
特に営業利益は従来予想400億円のところ一気に650億円へ、最終利益も200億円から400億円へとそれぞれ引き上げられており、投資家からも高い評価を受けています。

増益の背景

  • 諸経費の大幅削減:
    効率経営の推進や固定費の見直しが功を奏し、利益率改善に寄与しました。
  • 円安の追い風:
    為替相場が円安で推移したことにより、海外事業からの収入が増加し、全体の利益を押し上げました。
  • 国内トータルサポート収益の増加:
    国内のアフターマーケットサービスやサポート体制の充実が安定収益源となっています。
  • 販売台数減も経営努力でカバー:
    トラック・バスの販売台数は前年同期比16万2,000台減(24.3%減)と大きく減少するも、収益構造の見直しにより収益性は大きく向上しました。

配当政策に関する動向

未定としていた中間配当は、前年同期と同様に無配と決定されました。
期末配当については引き続き未定となっていますが、回復基調にある利益水準などを鑑みて、今後の動向にも注目が集まっています。

株式市場の反応

連結業績予想の上方修正発表を受け、日野自動車の株価は上げ幅を拡大しました。
午後3時ごろの上方修正発表後に投資家心理が好転し、信用買いや追加投資の動きが強まったことが背景にあります。

日野自動車を取り巻く事業環境と課題

  • 世界的な販売台数減:
    依然として国内外で小型・大型トラック、バスなどの需要低迷影響が継続しており、本業の販売面では厳しい環境が続いています。
  • 経営効率化の継続的努力:
    過去のエンジン不正問題や各種リコール対応による経営負担が重くのしかかっていましたが、経営改革やコスト体質改善が奏功しつつあります。
  • 新領域・アフターサービスの強化:
    収益の柱としてアフターマーケット事業や車両メンテナンス、テレマティクス事業の拡大など、車両販売以外の事業へのシフトも進めています。
  • グローバル展開のリスク管理:
    為替影響・地政学リスク・部材コスト変動への対策が引き続き必要です。

今後の展望と日野自動車の目指す姿

全体として2025年度前半は利益体質へと大きく改善し、構造改革が着実に進んでいることが明らかとなりました。
今後も生産拠点・サプライチェーンの最適化研究開発投資の更なる効率化が課題ですが、
車両の電動化・自動運転技術など新領域への投資も強化し、中長期的な成長を目指しています。

また、カーボンニュートラル社会への流れを汲み、クリーンディーゼルやハイブリッドシステムなど環境対応商品を順次展開する計画も進行中です。
「品質と信頼のHINO」ブランドを改めて国内外で浸透させ、顧客満足度の向上、社会的信頼の再構築に注力していく構えです。

まとめ

  • 日野自動車は減収にも関わらず約58%の営業増益を実現し、通期予想も大幅上方修正を発表
  • コスト削減・収益構造改革と円安追い風が利益増を牽引。
  • 販売台数減少という厳しい事業環境下でも、経営のたくましさと回復力が鮮明に。
  • いまだ課題は残るものの、今後の事業展開・配当動向にも関心が高まっている。

今後も自動車業界の変革期をリードする日野自動車の動向から目が離せません。

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