「夢ミャク金時」誕生―万博での未来型農業プロジェクト

2025年10月18日、大阪・関西万博会場内「静けさの森」にある「らぽっぽファーム」で、サツマイモの初収穫祭が行われました。このサツマイモは、福島県・楢葉町産の苗を会場で約半年間育てたもので、収穫作業は、地元楢葉町の関係者や来場者、子どもたちが一緒に挑戦しました。栽培には、移動させやすいカラフルな可動式コンテナが活用され、場所や天候に左右されにくい「未来型農業」として大きな注目を集めました。

万博会場での農業実験、その意義

このプロジェクトは、大阪の白ハト食品工業株式会社が運営する「らぽっぽファーム」が主体となり、会場内で福島県楢葉町産のサツマイモの苗を栽培。あえて万博という多くの人の集まる空間で、地場産業の技術やアイデアを組み合わせた「新しい農業のかたち」を実践することが目的でした。

万博で育てられたサツマイモの特徴は、コンパクトな栽培環境でありながらも、収穫量は約100kgと大成功。永尾社長は「こんなに大きくなるなんて。正直一か八か…はじめは心配しました。でも、きっとうまくいく、そんな予感はしてましたよ!」と笑顔で話しました。また、実際に芋掘りを体験した子どもからは「大きすぎて掘るのが大変だったけど、楽しかった」との感想もあり、農業体験の場としての役割も果たしています。

「夢ミャク金時」の誕生

収穫したサツマイモは、白ハト食品工業の永尾社長が「夢ミャク金時」と名付けたいとコメント。「夢洲(万博会場の島の名前)」と、同社の大人気商品「ミャクミャク」を合わせたものですが、福島県楢葉町の松本幸英町長が「名前には楢葉も入れてほしい」とアピールする一幕も。今後、名称や商品化などの詳細については協議が続く見込みです。

また、この日にはリンゴの収穫も行われ、当初は大阪での栽培に不安もあったものの、会場の風通しの良さなど環境が合ったようで、大きな実が結ばれたとの報告もありました。サツマイモの種芋やリンゴの木は、閉幕後も場所を移して継続的に育てていく予定です。

地域プロジェクトとしての展開―商品開発とマルトでの販売

万博の「食のレガシー」をつなげるべく、「夢ミャク金時」のサツマイモは今後、商品化が検討されています。白ハト食品工業が運営する各店舗での取り扱いだけでなく、福島県浜通り地域の6高校が「楢葉サツマイモ」を使った新商品の開発にも着手しています。

この高校生たちによる商品開発は、地元のマルト店舗(パン・スイーツのチェーンストア)で実際に販売される予定。マルトは、地域に根ざした商品開発や地元食材の活用に積極的で、今回のサツマイモを使った商品も大きな期待が寄せられています。

農業と商品開発の新しい連携

このプロジェクトは、単なる農業体験や食育にとどまらず、「農業」「教育」「地域産業」「小売」が一体となって進める「新しい地域連携モデル」の一例です。万博会場での栽培・収穫→地域の若者(高校生)による商品開発→地元スーパー(マルト)での販売、という一連の流れは、今後の農業振興や地域活性化のモデルケースになる可能性を秘めています。

特に福島県浜通り地域では、震災復興や農業再生の取り組みが続く中で、こうした新しい挑戦は大きな意味を持ちます。「サツマイモ」という身近な作物を通じて、地域内外の人々が協力し合い、新しい価値を生み出していく――そんな情景が、万博から福島、さらには全国へと広がろうとしています。

今後の展望―持続的なレガシーを目指して

万博閉幕を目前に控えた10月中旬、収穫祭を終えた「夢ミャク金時」のサツマイモは、今後も新しい場所で育てられていきます。また、福島県楢葉町や浜通り地域では、新商品の発売に向けた準備が進んでいます。マルトをはじめとする小売店での販売開始は、地域の新しい名物誕生につながるでしょう。

さらに、このプロジェクトの成功は、都会での農業や、地域活性化を目指す全国の自治体・企業・教育機関にも刺激を与えるものと期待されます。「どんな場所でも農業はできる」「地元の若者が商品開発に参加できる」「地域の小売店が販路拡大に協力する」――これらの実践は、持続可能な農業と地域経済の未来を考える上で、とても重要なヒントとなるはずです。

まとめ

  • 大阪・関西万博会場で福島県楢葉町産のサツマイモが収穫され、参加者から大きな反響。
  • 「夢洲」と「ミャクミャク」を合わせて名付けた「夢ミャク金時」は、今後の商品化が注目される。
  • 地元6高校が「楢葉サツマイモ」を使った商品開発に取り組み、マルトでの販売を目指す。
  • 農業・教育・小売が連携した新しい地域活性化モデルとして、今後の広がりが期待される。
  • 万博の「食のレガシー」として、持続可能な農業と地域経済の発展への一歩となる。

万博という「夢の祭典」をきっかけに始まった農業が、地域の未来を照らす「光」となる――。福島と大阪、そして全国の人々がつながるこのプロジェクトは、これからもたくさんの可能性を広げていくことでしょう。

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