明暗分かれた「無印良品」と「ニトリ」 良品計画の好調とその背景

無印良品を展開する良品計画と、家具・インテリア大手のニトリホールディングス(ニトリHD)。かつては「低価格・シンプル志向」で並び称されてきた2社ですが、直近の業績や株式市場での評価を見ると、明暗がはっきり分かれつつあります。
本記事では、報じられている事実をもとに、良品計画の好調ぶりとニトリHDが苦戦している現状、その差がどこで生まれたのかを、できるだけわかりやすく整理します。

好調が続く良品計画:売上・株式市場ともに評価高まる

まず、良品計画の業績から見ていきます。報道によると、無印良品を展開する良品計画は、コロナ禍の影響を受けた2020年8月期を除き、増収が続いているとされています。
特に直近では、以下のようなポイントが挙げられます。

  • 2025年8月期の売上高は7800億円を突破
  • 今期(2026年8月期)は8870億円を見込む計画
  • 中華圏を中心とした海外事業が好調

コロナ禍で一時的な落ち込みはあったものの、それ以降は売上が右肩上がりで、国内外の事業がバランスよく成長していることがうかがえます。

さらに、株式市場での評価も変化が見られます。2025年6月には、良品計画の時価総額がニトリHDを上回り、現在は2兆円前後で推移していると報じられています。
長らく「勝ち組」とみなされてきたニトリHDを、資本市場の評価で追い越したという事実は、良品計画の成長力と将来性への期待が高まっていることを示しています。

一方のニトリHD:売上・利益ともに伸び悩み

対照的に、近年のニトリHDは苦戦が指摘されています。報道によれば、2026年3月期のニトリHDの売上高は9122億円で、前年比1.8%減となりました。
利益面でも、2022年2月期以降、十分な回復が見られない状況が続いているとされています。

ニトリはこれまで、「お、ねだん以上。」のフレーズで知られるように、低価格で品質の良い家具・インテリアを提供する企業として成長してきました。しかし、原材料費や物流費の高騰、消費者の生活スタイルの変化、競合の増加などにより、従来のビジネスモデルのままでは利益を維持しにくくなっている現実があります。

ブランド戦略の違い:無印良品ブランドへの集中と知財の活用

良品計画とニトリHDの差を考えるうえで、ブランド戦略や知的財産(知財)への向き合い方も重要な視点です。
ある分析によると、良品計画の商標の約65.6%が「無印良品/MUJI」ブランドそのものへの登録であるのに対し、ニトリは約8.8%にとどまるとされています。

この数字から読み取れるのは、良品計画が「無印良品」というブランドの価値を一貫して高めようとしているということです。商標を積極的に出願・保護することで、名称やロゴ、関連するブランド要素をしっかり守り、世界各地での展開にも耐えうるブランド基盤を築いていると考えられます。

一方のニトリは、「ニトリ」ブランド自体は広く知られているものの、商標登録の構成比を見る限り、ブランドそのものよりも個別商品や別区分での登録が相対的に多い傾向があるとされています。もちろん、これは一概に良し悪しを決める要素ではありませんが、「どこに知財資源を集中させてきたか」という戦略の違いが表れていると言えるでしょう。

商品戦略・価格帯の違い:デスク比較に見る「付加価値」の差

両社の違いをより具体的にイメージするために、デスク(机)商品の比較も参考になります。ある比較記事では、無印良品の「木製デスク」とニトリの学習机シリーズ「メルシー」を取り上げ、価格や仕様の違いを整理しています。

  • 無印良品の木製デスク+キャビネット(ワゴン)+上置き棚の3点セット:税込64,900円から
  • ニトリのスタンダードデスク・メルシー01:税込69,990円

単純な価格だけを比べると、無印良品のセットの方が約7%安いという計算になります。ただし、ニトリのメルシーにはデスクライトが付属しており、一概にどちらが割安かは、含まれる機能や必要とする付加価値によって変わります。

この比較から見えてくるのは、無印良品が「シンプルで長く使える基本性能」に軸足を置きつつ、価格を抑えたラインナップを用意しているのに対し、ニトリは「多機能・付属品込み」の価値提案をしている場面が多い、という構図です。

また、無印良品のデスクは、他の収納家具や生活雑貨とデザインを統一しやすいという強みがあります。家全体を同じテイストでそろえたいユーザーにとっては、ブランド全体の世界観に沿って選べることが大きな魅力になっています。

海外展開と市場の捉え方:中華圏での好調が支える良品計画

良品計画の好調さを語るうえで欠かせないのが、海外、とくに中華圏での事業の伸びです。報道では「中華圏を中心とする海外事業も好調」とされており、国内だけに頼らない収益構造を築きつつあることがうかがえます。

中華圏では、無印良品のシンプルで生活に溶け込むデザインや、日本発ブランドとしての信頼感が評価され、生活雑貨から衣料品、食品に至るまで幅広いカテゴリで支持を集めています。
このように、「生活全体の提案」を海外でも展開できている点が、良品計画の強みといえます。

ニトリももちろん海外進出を進めていますが、家具・インテリアを中心としたビジネスモデルは、店舗の大型化や物流の確保など初期投資が重くなりがちです。また、各国ごとに住宅事情や好まれるデザインが異なるため、標準化とローカライズのバランスが難しい側面もあります。

なぜ「明暗」が分かれたのか:いくつかの要因

ここまで見てきた事実から、「無印良品」と「ニトリ」の明暗が分かれた背景には、いくつかの要因が絡み合っていることがわかります。主なポイントを整理すると、次のようになります。

  • ① ブランド戦略の違い
    良品計画は「無印良品/MUJI」という一つのブランドへの集中投資を進め、商標など知財面でもそれを裏付けてきました。ブランドの世界観を保ちながら商品カテゴリを広げることで、生活全体をカバーするブランドとして定着しています。
  • ② 事業ポートフォリオの違い
    無印良品は、家具やインテリアにとどまらず、衣料品・食品・日用品など多岐にわたる商品を扱っており、消費者の生活のさまざまな場面に接点を持っています。中華圏を中心とした海外での売上も伸びており、リスク分散になっています。
  • ③ コスト構造・環境変化への耐性
    原材料費や物流費の上昇は、家具を中心とする企業に重くのしかかります。ニトリHDは従来の強みである「大量仕入れ・大量販売による低価格路線」が、環境変化の中でやや機能しにくくなっている可能性があります。一方、良品計画は、カテゴリの分散や価格帯の幅を持つことで、変動に対応しやすい面があります。
  • ④ 市場ニーズとのフィット感
    近年、消費者の間では、「ものを増やしすぎない」「長く使えるシンプルなものを選ぶ」といった価値観が広がっています。無印良品のシンプルでミニマルなデザインは、こうしたトレンドと相性が良く、ブランドイメージと市場ニーズが重なりやすい状況にあります。

今後に向けて:良品計画とニトリ、それぞれの課題と期待

良品計画は、現時点では業績も株価も好調ですが、今後も順調にいく保証があるわけではありません。特に、海外比率が高まるにつれて、為替変動や各国の景気動向、規制の違いなどの影響を受けやすくなります。また、「無印良品」ブランドの世界観を維持しながら品揃えを広げ続ける難しさもあります。

一方のニトリHDは、足元の業績では苦戦が続いていますが、依然として国内トップクラスの売上規模と知名度を持つ企業です。今後、コスト構造の見直しや、商品ラインナップの再構築、デジタルや海外展開の強化などを通じて、どのように再成長への道筋を描いていくのかが注目されます。

良品計画とニトリHDは、同じ「生活者向け」の領域で競合しつつも、得意分野やブランドの性格は異なります。どちらか一方が絶対的な勝者になるというよりも、それぞれの強みを活かしながら共存していく可能性も十分にあります。

現時点で明暗が分かれている背景には、ブランドへの投資姿勢、商品・事業の広がり方、海外展開の進め方など、さまざまな要素が積み重なっています。
これらの違いを理解することで、私たち生活者も、自分の価値観や暮らし方に合った商品やブランドを選びやすくなるのではないでしょうか。

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