猛暑が建設現場を直撃:大林組を含む業界全体で進む「熱中症対策」と「作業時間の見直し」
近年の猛暑は、私たちの生活だけでなく、社会インフラを支える建設現場にも大きな影響を与えています。大林組をはじめとする大手ゼネコンや多くの建設会社は、厳しい暑さのなかでも安全に工事を進めるため、さまざまな対策を急ピッチで進めています。この記事では、
「猛暑による作業効率の低下」、「労働局による熱中症対策の呼びかけ」、そして「猛暑期間中の作業時間帯を見直す取り組み」
という3つのニュースを軸に、建設現場で今何が起きているのかをわかりやすく解説します。
猛暑で建設現場の6割超が「作業効率低下」という現実
まず、建設業界全体の実情です。業界団体である日本建設業連合会(日建連)の調査では、
猛暑の影響で建設現場の6割以上で作業効率が低下している
という結果が示されています。単に「暑くてつらい」というレベルではなく、現場の工程や工期、安全性にまで影響が及ぶ深刻な問題になっています。
特に影響が大きい「鉄筋・型枠・のり面」の作業
日建連の調査によると、特に
鉄筋工事・型枠工事・のり面(法面)での作業
で猛暑の影響が顕著に表れています。それぞれの作業の特徴と、なぜ暑さに弱いのかを見てみましょう。
- 鉄筋工事:鉄筋は太陽光を浴びると高温になり、素手では触れないほど熱くなります。炎天下の鉄筋上での結束作業は、熱気と照り返しで体力を激しく消耗します。
- 型枠工事:コンクリート打設前の型枠組み立ては、高所作業や重い資材の運搬が多く、暑さと身体への負荷が重なります。足場の上は風通しが悪い場所もあり、熱がこもりやすい環境です。
- のり面(法面)作業:道路やダムなどの斜面で行う作業は、日陰がほとんどなく、地面からの照り返しも強くなります。傾斜地での作業はバランスにも気を使うため、暑さで集中力が落ちると転落などのリスクも増します。
こうした現場では、「いつも通りのスピード」で作業を進めようとすると、熱中症の危険が一気に高まります。そのため、多くの現場では
作業ペースを意図的に落とす、こまめな休憩を増やす といった対応を取っており、それが結果として「作業効率の低下」という数字に表れているのです。
労働局が建設現場に「熱中症対策の徹底」を要請
このような状況を受けて、各地の労働局は建設会社や現場を対象に
熱中症対策の徹底
を強く呼びかけています。建設業は死亡災害・重篤な労働災害が発生しやすい業種のため、行政としても早い段階から注意喚起や指導を行っています。
労働局が示している対策のポイントは、大きく分けて次のような内容です。
- 作業環境の整備:休憩用のテントやミスト扇風機、スポットクーラーの設置、日よけシートの活用など。
- 水分・塩分補給の徹底:スポーツドリンクや塩飴の配布、いつでも飲めるように現場に飲料を常備する。
- 作業時間の工夫:日中の暑さがピークになる時間帯(正午前後〜午後)を避けた作業計画。
- 健康状態のチェック:毎朝の体調確認、熱中症の初期症状(めまい・頭痛・吐き気など)の周知。
- 服装・保護具の工夫:空調服の導入、通気性の高い作業着、ヘルメット内の冷感インナーなど。
労働局は、こうした対策を「できればやる」ではなく、
事業者の責務として計画的に実施すること
を求めています。違反や重大な事故につながる恐れがある場合は、立ち入り調査や指導が行われるケースもあります。
企業側の取り組みQ&A:現場でよくある疑問と対応例
行政からの呼びかけを受けて、企業側も「自社では何をどこまでやるべきか」を整理する必要があります。そこで、建設会社の現場担当者や安全管理担当者からよく聞かれる声をもとに、代表的なQ&A形式で企業の対策例をまとめます。
Q. 休憩時間を増やすと工期に影響しないか?
A. 休憩時間の増加による一時的な作業時間の減少は避けられませんが、
無理な作業で熱中症事故が発生すると、かえって長期的な工期遅延や信用失墜につながります。そのため、最近は
「安全第一で計画を引く」
ことが優先されています。
大林組のような大手ゼネコンを含め、多くの企業が
猛暑期間専用の工程表
を用意し、最初から余裕を見込んだ計画で発注者と調整する動きが広がっています。
Q. 熱中症対策にかかるコストは増えていないか?
A. ミスト設備や空調服、スポットクーラーなどの導入により、
一時的にはコストが増える面もあります。しかし、労働災害の防止や、作業員の離職・人手不足の抑制を考えると、必要な投資と捉える企業が増えています。
水分・塩分補給に必要な飲料や塩飴の配布は、比較的低コストで実施できるため、
「最低限これだけは必ずやる」
というラインとして多くの現場で取り入れられています。
Q. 協力会社・下請けの作業員にも同じように対策を行うべき?
A. 建設現場では、元請けだけでなく、協力会社や下請けの作業員も同じ現場で働いています。熱中症は誰にでも起こりうるため、
現場全体で同じレベルの対策を行うことが大切
です。
安全衛生協議会などの場で、元請け企業が方針を示し、協力会社と
「現場共通ルール」
として熱中症対策を取り決めるケースが一般的になっています。
猛暑期間中の「作業時間帯の変更」が本格始動
ニュース内容の3つ目のポイントが、
「猛暑期間における作業時間帯を変更する取り組み」
です。これは、単に休憩を増やすだけでなく、
一日のなかで作業する時間帯そのものをずらす
というものです。
具体的には、次のような時間帯へのシフトが進んでいます。
- 早朝に作業を集中させる:日の出後すぐの比較的涼しい時間帯に、重労働や屋外作業を集中的に行う。
- 日中のピーク時間を避ける:正午〜午後3時前後など、気温が最も高くなる時間帯は極力作業を減らし、休憩・室内作業・打合せなどに充てる。
- 夕方以降の活用:日没に向かって気温が下がる時間帯に、屋外作業を再開する。
このような
「時間帯シフト」
は、海外の高温地域の建設現場では以前から見られた方法ですが、日本でも近年の猛暑を受けて本格的に広がりつつあります。
作業時間帯の見直しで期待される効果
作業時間帯の変更には、次のような効果が期待されています。
- 熱中症リスクの低減:気温が比較的低い時間帯に作業を行うことで、身体への負担を軽減できます。
- 集中力の維持:暑さによる疲労が少ないため、作業員の集中力を保ちやすくなり、品質や安全性の向上にもつながります。
- 人材確保へのプラス効果:働く環境を改善する取り組みは、若手人材の確保や定着にも寄与すると期待されています。
大林組を含め、多くの大手建設会社がこうした取り組みを進めることで、業界全体として
「暑さに強い現場運営」
への移行が進んでいくと見られています。
現場で進む具体的な工夫:大林組など大手の取り組み例
大手ゼネコン各社は、これまでの経験やデータを活かしながら、さまざまな工夫を現場で展開しています。大林組をはじめとする企業が取り組んでいる代表的な例を紹介します(ここでは、業界全体で一般的に見られる施策に絞って説明します)。
-
暑さ指数(WBGT)に基づく作業管理
気温だけでなく湿度や輻射熱を含めた「暑さ指数(WBGT)」を測定し、その数値に応じて作業時間や休憩頻度を変える方法です。指数が一定値を超えた場合には、屋外作業を中断するなどのルールを設けている現場もあります。 -
空調服・冷感インナーの支給
ファン付き作業服(空調服)や、冷感素材のインナーを支給することで、作業員が少しでも快適に働けるよう支援する取り組みです。特に鉄筋・型枠などの重労働を担う職種で効果が期待されています。 -
熱中症教育の徹底
朝礼での注意喚起や、熱中症対策のポスター掲示、動画教材による教育などを通じて、「自分の身は自分で守る」意識を高める工夫も進んでいます。初期症状に気づいたら、無理をせずすぐに相談・申告をする文化づくりも重要なポイントです。 -
現場の見える化
現場内に温度や暑さ指数を表示するモニターを設置し、誰でも現在の状況を一目で確認できるようにするなど、「今、どれだけ危険な環境か」を共有する試みも行われています。
発注者・地域との連携も重要に
作業時間帯の変更や騒音対策など、猛暑対策を進めるうえでは、
発注者や地域住民との調整
も欠かせません。例えば、早朝や夕方以降の作業を増やす場合には、近隣への騒音や交通への影響を考慮する必要があります。
大林組を含む大手建設会社は、事前に
住民説明会
や
チラシ配布
などを行い、工事の必要性や安全対策、作業時間の工夫について丁寧に説明することで、理解を得ながら工事を進める取り組みを続けています。
まとめ:猛暑と共存する「新しい建設現場」の姿
猛暑が続くなかで、建設現場は今、大きな転換点を迎えています。
- 日建連の調査では、6割以上の現場で作業効率が低下している。
- 特に、鉄筋・型枠・のり面など、屋外での重労働に影響が大きい。
- 労働局は、熱中症対策の徹底を事業者に強く要請している。
- 企業は、水分・塩分補給、休憩の強化、服装・設備の改善など多角的な対策を実施している。
- 猛暑期間中の作業時間帯の変更により、暑さのピークを避ける工夫が広がっている。
大林組をはじめとする建設企業は、これらの課題に正面から向き合い、
安全と工事の両立
を図ろうとしています。猛暑は避けられない現実ですが、そのなかでも働く人の命と健康を守りながら、社会インフラを支えていくための工夫は、今後ますます重要になっていきます。
私たちが暮らす街や建物、道路や橋の向こう側には、こうした現場での地道な取り組みがあります。猛暑のニュースを目にしたときには、建設現場で働く人たちの安全対策にも、少し思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。



