人手不足時代に存在感を増す「リクルート」――元リク出身者の活躍と派遣大手比較から見えるもの
日本の労働市場では、少子高齢化による生産年齢人口の減少を背景に、深刻な人手不足が続いています。リクルートは求人広告や人材紹介・派遣、HRテクノロジーなどを通じて、その課題に向き合ってきた企業であり、同社の出身者(いわゆる「元リク」)も多様な分野で活躍しています。また、人材サービス業界では、リクルートホールディングス(以下、リクルートHD)とパーソルホールディングス(以下、パーソルHD)といった大手企業が人材派遣・紹介を通じて重要な役割を担っています。
本記事では、元リク人材の強みと活躍、そしてパーソルHDとリクルートHDという派遣大手の比較を軸に、人手不足時代の日本社会における「リクルート」の存在感をわかりやすく解説します。
日本社会を覆う「人手不足」という構造問題
日本では、少子高齢化により生産年齢人口が急速に減少しており、その結果として多くの産業で人手不足が深刻化しています。販売・サービス分野などでは、パート労働の担い手だった層も高齢化し、「人材の枯渇感」が強まっていると指摘されています。この状況は中小企業にも大きな影響を与え、リクルートが実施した調査では、中途採用を行う中小企業の約3割が「募集しても応募がない」と回答し、さらに別の約3割が「応募はあるが自社の求める水準に満たない」としており、採用難が広がっていることがわかります。
このような環境下で、企業は自社採用だけでなく、外部人材や人材派遣・紹介の活用にも目を向け始めています。リクルートの調査でも、「人手不足が続く日本の労働市場では、外部人材の効果的な活用を含めた戦略への転換が求められている」とされています。人材サービス企業、とりわけ派遣や紹介を手がける大手各社は、こうしたニーズの受け皿となる存在です。
「元リク人材」が注目される理由
リクルートは、長年にわたり日本の採用市場や働き方に大きな影響を与えてきた企業です。その社風や育成スタイルから、同社を巣立った「元リク」人材は、さまざまな業界でリーダーとして活躍していることで知られています。ニュースでも、「元リク人材(元リクルート人材[卒業生])の活躍とその強み」が取り上げられ、彼らの特徴が改めて注目されています。
一般に、元リク出身者の強みとして語られるポイントには、次のようなものがあります。
- 徹底した顧客志向:求人広告・人材紹介・情報サービスなど、企業と個人の両方を顧客とする事業を通じて、「顧客の課題から考える」視点が徹底的に鍛えられている。
- データと現場感覚を組み合わせる力:人材市場や消費行動をデータで捉えながら、営業現場での対話も重視する文化があり、数字と肌感覚を行き来しながら意思決定するスキルが磨かれる。
- 新規事業や改善への前向きさ:求人広告という出発点から、住まい・結婚・旅行・飲食など多様な領域へ事業を広げてきた歴史の中で、「自ら課題を見つけてビジネスにする」姿勢が共有されている。
- 人と組織を動かすコミュニケーション力:企業の採用や人事の担当者と密に連携する経験から、組織の意思決定プロセスを理解し、関係者を巻き込む力が養われる。
こうしたスキルやマインドセットを持つ元リク出身者は、スタートアップの経営や、大企業の新規事業、地方創生プロジェクト、コンサルティングなど、多様な場で存在感を示しています。日本全体が人手不足と構造変化に直面する今、「人と仕事のマッチング」を深く理解している人材は、より一層価値を増していると言えるでしょう。
リクルートHDの事業構造と強み
リクルートHDは、求人広告からスタートし、現在では人材紹介・派遣・HRテクノロジーに加え、住宅、旅行、結婚、教育など生活全般に関わる情報サービスを展開する総合的な情報サービス企業です。とくに近年、IndeedやGlassdoorといったグローバル求人検索サービスを傘下に収め、世界規模での求人・転職市場に強みを持っています。
同社の決算資料によると、人材派遣事業セグメントの売上収益は直近でも安定的に推移しており、第2四半期時点で約4,213億円、前年同期比でプラス0.8%となっています。これは、日本国内でも人材派遣のニーズが底堅いことを示しており、人手不足が続くなかで、企業が派遣を含めた多様な雇用形態を活用している状況がうかがえます。
また、リクルート自身も、自社の調査やレポートを通じて、中小企業の採用課題や、副業人材・外部人材の活用状況などを継続的に発信しています。これは、単に人材サービスを提供するだけでなく、「日本の働き方をどう変えていくか」という視点で市場全体をリードしようとする姿勢の表れと言えるでしょう。
パーソルHDとはどのような企業か
一方で、パーソルHDも、日本を代表する総合人材サービス企業です。同社は旧テンプホールディングスを母体とし、人材派遣・人材紹介・アウトソーシングを中心に事業を展開しています。特徴的なのは、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)やITソリューションも組み合わせ、「働き方の多様化支援」を掲げている点です。
グループスローガンは「はたらいて、笑おう。」であり、働く人のキャリアや生活をトータルに支えるスタンスを打ち出しています。派遣や紹介のみならず、業務そのものを受託するBPOや、システムを通じた効率化支援など、企業の「はたらく仕組み」を一括して支援するアプローチが特徴です。
パーソルHD×リクルートHD――大手人材サービス企業を比較する
人手不足が続く中、ニュースでも「パーソルHD×リクルートHD 人手不足は深刻…人材派遣の大手を比較」というテーマで、両社の社員待遇や特徴が比較されています。ここでは、公表されている情報から、いくつかのポイントを整理してみます。
- 事業の幅
パーソルHDは人材派遣・紹介・アウトソーシングに加え、BPOやITソリューションを組み合わせて、企業の業務そのものを支える体制が特徴です。
リクルートHDは、人材領域だけでなく、住宅・旅行・結婚など「ライフイベント」に関わる情報サービスを広く手がけ、HRテクノロジーのグローバル展開でも存在感を示しています。 - グローバル展開
リクルートHDはIndeedやGlassdoorを擁し、世界の求人検索市場で大きなシェアを持つ点が大きな特徴です。
パーソルHDもアジアを中心に海外展開を進めていますが、ニュースでの比較では、グローバル求人検索サービスという意味ではリクルートの方が優位性を持つとされています。 - 社員の平均年収
有価証券報告書のデータをもとにした比較によると、社員の平均年収はパーソルHDが約819万3,000円、リクルートHDが約1,145万3,000円と報じられています。
この数字からは、両社とも日本企業としては高い水準にありますが、リクルートHDの平均年収がより高いことがわかります。 - 役員報酬水準
同じ比較では、1人あたりの平均役員報酬は、パーソルHDが約3,190万円、リクルートHDが約1億9,390万円と紹介されています。
役員報酬は企業規模やグローバル展開度合い、業績などさまざまな要因が関わりますが、ここでもリクルートHDのスケールの大きさがうかがえます。
ニュース記事は、「仕事があるだけありがたい」といった少しユーモラスなトーンを交えつつ、「人手不足が続くなかで、人材サービス企業の社員待遇はどうなっているのか」という点に読者の関心が集まっていると紹介しています。働く側としても、「人材サービス企業で働く」という選択肢を検討する際、こうした情報は参考になるでしょう。
人材派遣業界にとっての「チャンス」と「課題」
人手不足の進行は、企業にとって大きな課題である一方で、人材派遣業界にとってはチャンスでもあります。労働人口が減少するなかで、販売・サービス分野を中心に人手が足りず、「派遣を活用しないと業務が回らない」といった状況も生じています。
一方で、人材派遣企業も「登録者数の減少」や「採用コスト増による利益圧迫」といった課題に直面しています。そのため、単に派遣スタッフを集めるだけでなく、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのテクノロジーを活用し、未経験者でも早期に戦力化できる仕組みを整えていくことが重要だと指摘されています。業務の一部を自動化し、難しい作業を機械に任せることで、時給を上げつつ、より多くの人を現場に送り出せるようにするという考え方です。
このように、人材派遣業界は「人手不足時代の解決策の一つ」として期待される一方で、自らも構造変化への対応が求められています。リクルートHDやパーソルHDのような大手企業は、デジタル技術やデータを活用したマッチング精度の向上、多様な働き方への対応などを通じて、業界全体を牽引する役割を担っているといえます。
リクルートが示す「外部人材活用」の可能性
リクルートは、自社の調査を通じて、中小企業の採用課題や副業人材の活用状況なども分析しています。中小企業の事業責任者を対象にしたアンケートでは、「応募がない」「応募者の資質が自社水準に満たない」といった悩みが多く挙がる一方、採用に成功している企業は、求める人材像の明確化や、シニア層採用の拡大など採用条件の柔軟化、外部人材の活用などに積極的であるとされています。
また、首都圏企業と地方企業を対象にした副業人材の受け入れ状況の調査では、いずれも人材不足が背景にあり、特に地方企業が新卒や若手層の採用に苦戦する中で、「首都圏からの副業人材」が人材不足解消の一つの手段になりうると指摘されています。リクルートはこうした調査結果を通じて、「採用・雇用戦略だけでなく、外部人材の効率的な活用を含めた総合的な人材戦略が重要である」と提案しています。
このように、リクルートは自社サービスを提供するだけでなく、データとリサーチを武器に、企業が直面する人材課題に対して具体的な方向性を示す役割も果たしています。その延長線上に、元リク出身者が各地・各業界で実践者として活動している構図があります。
人手不足時代に「リクルート」から学べること
人手不足がますます深刻化するなかで、リクルートおよび「元リク」人材の動きから、私たちが学べるポイントはいくつかあります。
- データに基づく市場理解
労働市場や採用トレンドをデータで把握し、自社の置かれた状況を客観的にとらえることが、効果的な人材戦略の第一歩になります。 - 外部人材・多様な働き方の活用
正社員採用だけでなく、派遣、紹介予定派遣、副業人材、フリーランスなど、多様な形で人材を受け入れる柔軟さが、人手不足時代には重要です。 - テクノロジーとの組み合わせ
RPAやITソリューションなどを活用することで、省人化と付加価値向上を同時に追求できる可能性があります。人手不足だからこそ、「人にしかできない仕事」に人材を集中させる発想が求められます。 - 人材育成と企業文化
元リク出身者が評価される背景には、「顧客志向」「自律性」「新しいことへの挑戦」といった価値観を共有する企業文化があります。人材を「採用するだけ」ではなく、「育てて活躍の場を広げる」視点が欠かせません。
パーソルHDとリクルートHDの比較は、一見すると給与水準や待遇の話題として注目を集めますが、その背後には、「人手不足社会において、人材サービス企業がどのような役割を果たすのか」というより大きなテーマがあります。求人広告から始まり、グローバルなHRテクノロジー企業へと成長したリクルートと、派遣・アウトソーシング・ITソリューションを組み合わせて「働き方の多様化支援」を掲げるパーソル。両社の動きや、そこで育った人材の活躍は、日本の「働く」を考えるうえで、多くの示唆を与えてくれます。




