AIとドローンで革新をもたらす中部電力パワーグリッドの送電設備点検サービス
中部電力パワーグリッド株式会社(以下「中部電力PG」)は、2025年9月1日、株式会社センシンロボティクス(以下「センシンロボティクス」)と共同で、「送電設備点検コンサルティングサービス」の提供開始を正式に発表しました。電力の安全かつ安定した供給を支える送電網の維持管理は、従来より膨大な労力と高度な専門技術が求められてきました。近年は老朽化設備の増加や人材不足も顕在化し、業界全体に新たな課題を突き付けています。そのような中、AIやドローンなどのテクノロジーがどのように活用され、現場がどのように変わろうとしているのか、最新の取り組みをわかりやすく解説します。
共同開発による新サービス誕生の背景
日本全国の送電網は日々膨大な量の電力を安全かつ効率的に届けるため、点検・保守が欠かせません。しかし、高所・遠隔地に設置された鉄塔や電線を従来型の目視点検や作業員による登塔で行うことには多くのリスクや負担が伴っていました。また、膨大な施設規模全体を恒常的に管理するための人手確保にも限界があります。
中部電力PGとセンシンロボティクスは、既に2021年から共同でドローンとAIを用いた自動点検技術の開発・現場導入を重ねてきました。得られた画像データや測定値の判定にも高精度なAIを導入し、従来は個別作業員の経験値や判断に左右されていた異常検知・報告業務の自動化と標準化を進めています。2023年にはリアルタイムで異常を検出するAIも完成し、2024年にはその適用対象を拡大するなど、点検業務の質と効率を大きく向上させてきました。
「送電設備点検コンサルティングサービス」とは
今回発表された新サービスは、これまで中電PGが運用してきた業務アプリケーション「POWER GRID Check」を基盤とし、送電設備点検の専門家集団と先端テクノロジーの融合をワンストップで提供します。
- 点検計画の策定:対象設備に応じた最適な点検計画をプロが設計。
- ドローン自動巡回によるデータ取得:操縦スキルが不要な自動飛行で、鉄塔等の送電設備全体を安全かつ迅速・高品質に撮影・監視。
- AIによる異常箇所の検出:取得データを即座にAI解析し、腐食・損傷・不具合等を人為ミスなく正確抽出。
- 劣化状況の診断:長年の運用ノウハウを持つ中電PGの技術者がAI判定結果も踏まえて総合診断。
- 補修・保全計画のコンサルティング:施設ごとにカスタマイズした詳細な報告書と、最適な補修や次回点検の提案まで提供。
このサービスにより、設備保有者は点検~診断~対策立案までを一括して依頼可能となり、作業効率化、人的リスク低減、コスト削減、安全性・品質の向上、多拠点の横断管理といった多くのメリットが得られます。
先端技術の具体的な活用法
- ドローン: 遠隔地や進入困難な場所でも正確な自動撮影を実現し、作業員の危険を大幅に減らす。日陰や風等の環境要因にもAIアシストで対応。Skydio社製の最新遠隔操作ドック(Dock for X10)も導入し、高精度データ取得を可能にしています。
- AI解析: 撮影・記録された映像や画像データを高速自動分析。腐食、破損、部品の緩みなど多様な劣化・異常を、一定の検出精度で即座に可視化。これにより、経験差による判定のばらつきをなくし、再現性の高い管理が実現します。
- POWER GRID Check: ドローン運用だけでなく、予定ルート設定、撮影画像の自動仕分け・記録、AIによる異常検出結果の管理までシームレスに連携した、電力インフラ特化型の業務アプリケーションです。2021年現場導入以来、現場作業の省力化と品質向上を続けています。
中部電力PGとセンシンロボティクスの役割分担
- 中部電力パワーグリッド株式会社: 「安定供給のプロ」として、長年蓄積した送電設備点検・管理ノウハウと人材を提供。取得データの専門的解析、補修計画の立案、またお客様施設の全般的マネジメントを担います。
- センシンロボティクス株式会社: 「テクノロジーのプロ」として、ロボティクスやAI用プラットフォームの開発・提供・最適化を担当。現場ニーズに即したアプリケーション実装力が強みです。
両社は、実地での要望・改善フィードバックを柔軟に反映しながら、「人と技術の協働モデル」を加速度的に発展させています。
送電設備点検の現状と課題
国内の送電設備は、今まさに更新期を迎えており、全国多数の施設では老朽化と自然災害等の影響リスク管理が急務です。点検作業員の高齢化や人材採用難、気象や地形による作業上の安全リスク、さらには経年劣化による見落としなど、数多くの問題が山積しています。
中部電力PGの調査では、ドローン自動化・AI導入により従来比で点検作業の省力化・効率化が最大70%向上した現場もあるとのことです。さらに、「経験差の排除」「膨大なデータの一元管理・活用」「報告や計画立案の自動化」といった技術革新の本質は、現場従事者の負荷軽減や属人化脱却を可能にし、今後の業界全体のデジタルトランスフォーメーションに大きな可能性をもたらしています。
利用者のメリットと今後の展望
- 点検ミス・見逃しリスクの大幅な減少
- 作業員の墜落等の労災防止
- 台風や豪雨など災害時の迅速復旧体制強化
- 最新鋭のAI・ロボティクス技術を自社で運用せず最適解を得られるコンサルティングサービス
- 中部電力PGによる全体マネジメントによる運用負担の軽減
今後は、送電設備だけでなく変電設備への自動点検技術の拡張や、さまざまな現場要件に応じたカスタマイズも予定されています。既にSkydio社の最新ドローン導入など新たな機能開発・実装も進んでおり、「POWER GRID Check」もより多機能・スマートなプラットフォームへと進化していく方針が示されています。
点検現場のデジタル化と自動化は、安全・効率・品質の大幅な底上げだけでなく、インフラ保全の持続可能性、ひいては地域社会の安心・安全な暮らしづくりに直結しています。これからも、中部電力PGとセンシンロボティクスが共創する最前線の取り組みに注目です。
会社紹介と問い合わせ先
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中部電力パワーグリッド株式会社
本社:愛知県名古屋市
代表取締役 社長執行役員:清水隆一 -
株式会社センシンロボティクス
本社:東京都品川区大井一丁目28番1号 住友不動産大井町駅前ビル4階
代表取締役社長 CEO:北村卓也
詳細なサービス内容、見積・導入相談などは、両社の公式サイトおよびプレスリリースページをご参照ください。