2025年8月、金価格が史上初の1万8千円突破—世界と日本を包む歴史的高騰の背景

金価格ついに「1万8千円台」へ—日本国内の価格動向

2025年8月末、日本の金価格はついに1グラムあたり1万8,000円という史上初の水準に到達しました。国内最大手の金取扱業者である田中貴金属によれば、2025年9月1日午前9時30分発表の店頭小売価格は18,001円(税込)となり、前日から192円もの値上がりを記録しました。これは文字通り、長年の市場関係者や個人投資家が注目する「大台」を初めて超えた瞬間です。

この数週間の値動きを振り返ると、2025年8月25日の金価格は17,454円であり、8月中旬からじわじわと価格が上昇し続けてきました。8月29日には月の最⾼値を17,617円まで伸ばし、9月の冒頭でついに1万8千円台へ突入したのです。

  • 2025年8月25日:17,454円/g
  • 2025年8月29日:17,617円/g(8月の最高値)
  • 2025年9月1日:18,001円/g(史上初の大台突破)

要因1:米国FRBの金融政策と信認の揺らぎ

金価格上昇の最も大きな要因は、米連邦準備制度理事会(FRB)に対する市場の信認の揺らぎです。2025年8月、米国では景気減速を示唆する経済指標(例:7月のISM非製造業総合指数の下落)や、早期追加利下げの観測が強まりました。FRBの金融政策に対する不安が拡がると、世界中の投資マネーが「安全資産」とされる金に流入しやすくなります。

金融政策への信頼が揺らぎ、不確実性が高まったことで資産の保全先として金に注目が集まったことが、価格高騰に大きく影響しているといえます。「金は信用の裏打ちされた通貨と異なり、信用リスクから逃れるための逃避先」として、今再びその存在感を際立たせています。

要因2:世界の金価格も記録的高値—「連動の法則」

日本だけでなく、世界の金価格も2025年8月に過去最高を更新しました。8月31日時点の国際金価格は、1オンスあたり3,449.37ドルという驚異的な数字を記録。前月比で2.42%上昇し、この4ヶ月で最も高い水準になりました。

国内価格と国際価格は為替(円安・円高)などの影響を受けながら連動します。2025年8月は円安ドル高の傾向に加えて、国際的なインフレや地政学リスク(紛争や経済摩擦等)の高まりも金需要を後押ししました。

要因3:国内外の個人投資家・機関投資家による金需要の増加

金価格の急伸に伴い、日本国内の個人投資家の間でも金投資への関心が高まりました。また、海外の年金基金や大学基金などの巨大な投資主体が、金を資産ポートフォリオに組み込む割合を高めたことも、全世界的な価格上昇をさらに後押ししました。

国内市場の構造的変化—「金離れ」から「金志向」への転換

これまで日本市場では「金離れ」とも言われていた時期がありましたが、2020年代半ばから状況は一変。コロナ禍やインフレ、為替変動リスクといった不安材料の増加とともに、「時間や通貨価値の変動に左右されない資産」としての金の再評価が進みました。本来の宝飾や工業用途だけでなく、家庭の資産防衛策としても金を現物で購入する人が急増しています。

金価格高騰がもたらす社会と経済への影響

  • 物価への波及効果:金は宝飾品や電子部品など様々な用途で使われており、コスト増による価格転嫁が見込まれます。
  • 個人の資産運用戦略の変化:これまで株式や不動産中心だった個人の資産運用でも、金への分散投資志向が高まっています。
  • 金融セクターの安全志向:今後も世界経済の不透明感や地政学リスクが続く限り、金融業界全体が「安全資産」重視へ傾く傾向は強まるでしょう。

特に今回の1万8千円突破は、国内の金取引事業者はもちろん、リサイクル業、宝石加工業など関連業界にも大きなインパクトを与えています。これまで「現物」で金を保有してこなかった層の中にも、初めて金を買う人が増えるなど、新たな動きも見受けられます。

今後の見通し—乱高下リスクと新たな値動き

今後も金価格は、国際的な金融政策、為替、地政学や経済情勢など多数の要素に左右されます。9月以降、FRBの政策決定や主要国経済の指標次第では、価格の更なる乱高下も考えられます。また、短期的な高騰で利益確定の売りが増えると一時的に調整局面が訪れる可能性もあります。

しかし、長期的な視点で見ると「金を持つことで得られる心理的な安心感」や「不安定な時代の資産保全先としての評価の高まり」は、引き続き根強いものとなるでしょう。日本国内でも金を巡る関心が今後さらに高まり、中長期的な資産形成の一環として活用されていくと考えられます。

まとめ—歴史的な高値背景に「安心」と「不安」

2025年8月から9月にかけて、金価格は史上初となる1グラム1万8千円超えを達成しました。この背景にはFRBの金融政策への不透明感、世界的なインフレ・景気減速懸念など複雑な要素が絡み合っています。消費者や投資家のみならず、社会経済全体に広がるこの歴史的な現象を、今後も注視していく必要がありそうです。

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