アルバリンクが東証グロース市場に上場 河田代表「営業事務のデジタル化に積極投資」

不動産分野で「空き家問題」の解決に取り組む株式会社AlbaLink(アルバリンク)が、東京証券取引所グロース市場に新規上場しました。証券コードは5537、業種は不動産業です。公開価格は1株1,300円で設定され、市場の関心を集めるデビューとなりました。

アルバリンク上場の概要

アルバリンクは、東京証券取引所グロース市場への上場承認を受けたのち、本日、同市場で株式の売買が開始されました。 もともと同社は、2023年にTOKYO PRO Marketへ上場しており、今回はプロ投資家向け市場から一般投資家も参加できるグロース市場への「鞍替え上場」となります。

上場にあたり決定した公開価格は1,300円で、想定価格レンジ1,200~1,300円の上限での決定でした。 公開価格ベースでの時価総額は約106.4億円、初値ベースでは約151.4億円と試算されています。

ブックビルディング(抽選申込)期間は11月28日から12月3日、公開価格の決定は12月4日、購入申込期間は12月5日から12月10日と、一般的なIPOスケジュールに沿って進められました。

初値は1,850円、終値は1,755円で取引終了

上場初日、アルバリンクの株価は公開価格1,300円と同水準の買い気配でスタート。その後、需給が締まりながら気配値を切り上げる展開となりました。

午前10時12分には、ついに初値1,850円をつけ、公開価格を550円(+42.3%)上回る水準でのスタートとなりました。 初値形成後は一時1,880円の高値をつけたものの、その後は1,700円台でもみ合う展開となり、上場初日の終値は1,755円でした。

つまり、アルバリンク株は、初値こそ公開価格を大きく上回る好スタートを切ったものの、終値は初値をやや下回る形で初日の取引を終えたことになります。 それでも、公開価格と比較すれば大きなプラス圏を維持しており、投資家から一定の評価を得たスタートと言えるでしょう。

アルバリンクとはどんな会社か

アルバリンクは、2011年に設立された不動産会社で、「空き家をゼロに」というミッションを掲げています。 主な事業は、流動性が低下している不動産、いわゆる「訳あり物件」の買取再販事業や、これに関連するコンサルティング事業です。

具体的には、長年放置されている空き家、相続や権利関係が複雑な不動産、事故物件など、一般的な不動産会社が扱いにくい物件を積極的に買い取り、再生・再販するビジネスモデルをとっています。 こうした「問題を抱えた物件」は、所有者にとっては管理や税負担の重荷となりやすく、地域にとっても景観や安全面の課題となることがあります。

アルバリンクは、そうした物件に専門的なノウハウで向き合い、再活用することで、社会課題の解決と収益性の両立を目指してきました。 競合が比較的少ない領域に特化している点も、同社の強みとして評価されています。

堅調な業績と今期の見通し

上場にあたり公開されているデータによると、アルバリンクの業績は近年堅調に拡大しています。 2025年12月期の会社予想では、売上高82.32億円(前年同期比+51.3%)営業利益12.58億円(前年同期比+127.6%)と、大幅な増収増益が見込まれています。

また、営業利益率は15.3%と予想されており、前期の10.2%からの改善が見込まれています。 収益性と成長性の両面で、投資家から評価されやすい数字となっています。

一方で、同社のビジネスは、在庫として抱える不動産の量が増えやすい側面があり、訳あり物件ゆえの在庫リスクや、無配(配当を行っていない)点などは、リスク要因としても指摘されています。 こうした特徴をどうコントロールしていくかも、今後の経営のポイントとなりそうです。

IPOで得た資金の使途と「営業事務のデジタル化」

IPOで調達した資金について、アルバリンクは主に人件費への充当を予定していると説明しています。 事業拡大に合わせた人材の強化や、組織体制の充実を図る狙いがあります。

その中でも注目されるのが、営業事務のデジタル化への積極投資という方針です。河田憲二代表取締役は、上場にあたって、今後の成長戦略の一環として、営業現場と事務作業の効率化・高度化を進めていく考えを示しています。

不動産の買取再販事業では、物件情報の管理、権利関係の確認、契約書の作成、各種手続きの進行管理など、多くの事務作業が発生します。これらは従来、人手に頼る部分が大きく、担当者の経験やスキルに依存しやすい分野でもありました。

アルバリンクが掲げる営業事務のデジタル化とは、こうした業務プロセスをシステム化し、データベースやクラウドサービスを活用することで、業務の標準化・可視化・効率化を進める取り組みと考えられます。結果として、営業担当者がより付加価値の高い業務に集中できるようになり、顧客対応の質向上や、取り扱える物件数の増加にもつながっていくことが期待されます。

なぜ今「営業事務のデジタル化」なのか

不動産業界では、これまで紙ベースの契約書やFAX、電話中心のやり取りなど、アナログな業務慣行が長く続いてきました。しかし、近年は電子契約やオンライン内見、Web会議による打ち合わせなど、デジタルツールを活用したワークフローへの移行が急速に進んでいます。

アルバリンクが扱う「訳あり物件」や「空き家」は、一般的な売買に比べて、確認事項や調整事項が多くなりがちです。相続人が多いケースや、登記情報の整備が必要な物件など、時間と手間のかかる案件も少なくありません。

こうした領域で事業を拡大していくためには、現場を支える営業事務の効率化が欠かせません。河田代表が「営業事務のデジタル化」に積極投資する方針を示した背景には、ビジネスモデルの特性と、今後さらに取扱件数を伸ばしていくための土台づくりという狙いがあると考えられます。

社会課題解決型ビジネスとしての評価

アルバリンクの特徴は、単なる不動産売買にとどまらず、空き家・訳あり物件といった社会課題をビジネスの中心に据えていることです。 放置空き家の増加は、防災・防犯・景観などの面で全国的な課題となっており、自治体でも対策が急がれています。

同社は、こうした課題を抱える物件を買い取り、再生して市場に戻すことで、所有者にとっての負担軽減と、地域にとっての問題解消の両方に貢献するモデルを築いてきました。 その意味で、アルバリンクは「社会課題解決型のビジネス」として、投資家からも注目される存在となっています。

IPO情報サイトなどでも、同社のビジネスについては、「訳あり物件に特化し、競合が少ない領域で優位性がある」「社会課題の解決をビジネス化している」といった点が評価されています。 一方で、物件在庫のリスクや、無配であること、売出株数の多さなど、冷静に見ておくべきポイントも指摘されています。

一般投資家からの視点と今後の注目点

初値が公開価格を大きく上回り、その後やや調整する形で取引を終えたアルバリンクの上場初日。 株価の動きだけでなく、同社の事業内容や成長ストーリー、そして営業事務のデジタル化をはじめとする今後の投資戦略にも注目が集まっています。

一般投資家の立場から見たとき、アルバリンクは以下のようなポイントがチェック項目になりそうです。

  • 空き家・訳あり物件という社会課題にどう向き合い続けるか
  • 在庫リスクを抑えつつ、どこまで事業規模を拡大できるか
  • 営業事務のデジタル化による効率化・収益性向上がどの程度進むか
  • 成長が続く中で、将来的な配当方針や株主還元策をどう位置づけるか

グロース市場上場企業として、アルバリンクには成長性が特に期待されています。一方で、事業は不動産という実物資産を扱う分野であり、マクロ環境や金利動向、地域ごとの需要など、外部要因の影響も受けやすい側面があります。

今後は、四半期ごとの決算開示や、新たな取り組みの発表などを通じて、同社が上場企業としてどのように情報発信を行い、市場との対話を深めていくかも焦点となるでしょう。

河田代表のメッセージと今後への期待

上場に際し、河田憲二代表は、空き家問題の解決に向けた事業拡大とあわせて、社内体制の強化営業事務のデジタル化など、足元の基盤づくりにも力を入れていく姿勢を示しています。

上場はゴールではなく、事業をさらに前へ進めるためのスタートラインです。今回調達した資金と市場からの期待を背景に、アルバリンクがどこまで事業を伸ばし、日本各地の空き家・訳あり物件の解決に貢献していくのか、今後の動向に注目が集まっています。

参考元